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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
101/133

97話 港にて

 必要なものも買いそろえたし、掘り出し物をいくつか手に入れた。

 贈り物も。


「世話になった」


 ジミー「またおいでくだされ」

 マギー「ありがとうございましたですー」


 レン「弟と妹のこと、本当にありがとうにゃー」

 道具屋を出て、大屋根の下でマギーとジミー、レンと別れた。

 尻尾と手を振っていた。


 ソニー「またね皆、お爺ちゃんもー」

 ベル「ばいばーい」


 ビクター「さよならー」

 彼ら兄妹も買い出しを終えていた。


 ケンウッド「私達は上階の事務所に戻りますね、しかし大変な経験をさせてもらいましたルーナさん、ありがとうございました」

 ダロム「ご武運を、ルーナ様」


「ああ、ケンウッド、ダロム、ありがとう」


 ガストン「ええ、じゃあまた何かあったら次もよろしく頼みます」

 兄妹「あっ、ケンウッドさん、依頼の報酬ありがとうございました」


 ベル「上なのー? 家?」

 アリエスタ「ついてくなっての、家じゃない、事務所だって!」

 商人とメイス使いのダロムとも別れる。


 アリエスタ「はぁ、いちいち律義なもんだね皆」

 ビクター「ええ……」

 ソニー「先輩? お世話になったんだからちゃんと挨拶しないと!」

「めんどくせっ」

「もーっ! 本当にしょうがない人っ、ルーナさんもなんか言ってくださいよっ」

 む。


「……アリエスタはよくやっていると思うぞ……戦いと、子守りは」

 ソニー「ええー? もうちょっと厳しくしてくださーい!」

「おいこらっ、最後の子守りってなんだ!」

 ベル「あははは!」


 ガストン「がっはっはっ、さぁ、その戦いとやらをしにお前さんの依頼を片付けに行こうぜ」



 昼過ぎ、武器屋と道具屋を訪れた後、先日酸スライム討伐を手伝ってくれたアリエスタの条件である、彼の依頼の手伝いをしに、外へ出掛けることになった。


 ガストン「そうだ、昨日はお試しで依頼をって感じだったからな、っても大物狩りの大冒険になったが……今日もそんな感じで段飛ばして、ちょっとした手練れの使う“とっておきの技”を見せてやるよ」


 ビクター「ええ? も、“もう”ですか先輩?」

 ソニーとアリエスタ「?」


 ガストン「あぁ、多分ルーナならすぐ身に付けると思うんだよなぁ……」

 何だろう?

 楽しみだな。


 ベル「スライムのこと? お昼に食べようルーナ!」

 ん?

 スライムなら、レイアが料理してくれるというから全部渡したが……。


 そして目指す場所は、その酸スライムから大鷲に変化しスライム塗れの私をすくい上げ泉に落っことした森の奥らしい。


 昨日と同じ道を行き、港を通り過ぎ、門を抜けるはずだったが。



 港で何か騒ぎが起きている。


 ガストン「おいおいなんだ?」


 ソニー「港の方で騒ぎがあったって、神父様がおっしゃられてましたね?」

 ビクター「もう昼過ぎてるよ? 神父様もいないね」

 アリエスタ「ああ、なんか神父が何たらって言ってたやつか、昼前からずっとやってんのこれ?」

 確か、彼の師匠も向かったように思えたが、いないな。


 漁師同士で怒鳴り合ってるな。

 蜥蜴人、魚人、獣人、皆ごろつきより強そうだな、そして荒っぽいな。

 血気盛ん、と言うやつか。


 若い漁師達が丁度港に戻ったのか、集団の背後にある漁船には魚が積まれているが、前に見た時より少ないし、例の焦げたようなにおいが港の魚の匂いに混じって漂っている。


 怒鳴り合っている相手は壮年の、先輩格らしい漁師達と、漁師ギルドとやらの偉い連中だろうか、衣服が漁師の恰好ではなく、組合職員に似てしっかりしている。


 つまり、半裸や下履き一丁だけではない。


 む、若い漁師は怪我をしてるぞ。

 ソニー「あっ怪我してますっ、あたしちょっと行ってきますね」


 ガストン「あ、ソニー! 待てっ」


 若い蜥蜴人「シュー、こっちは命がけで獲って来たんだゾ! ふザけんな!」

 壮年の魚人「だから、買い取るは買い取るってさっきから言っておるだろうが!」

 若い魚人「ソんな安値じゃ割に合わないっつーの! あんたジャだめだ! 網元呼んでくれよ!」

 壮年の蜥蜴人「シュー、んだと小僧! 下っ端のくセに生意気言いやがってこらあ!」

 バキイッ!

 若いカワウソ獣人「ラプトっ、フウッ!てめえなにしやがんでい! おらあ!」

 ドカァッ!

 「ざけんなこら」「いってえ!」「ぶっころす!」「やっちまえ!」

「おいやめろばか! やめろこらあ!」

 ワアアアアアッ。


 ソニーが怪我人の元へ行こうとするときにそれは起きた。

 乱闘になった。


 ビクターやガストンが叫んでいるがもう止まらないな。

 咆哮を使うか?


 乱闘中の漁師「邪魔すんな!」

 狙ったわけではないが、殴り合っている男が背後に来てしまったソニーを手で振り払い、少しぶつかってソニーが大きく転んでしまった。


「きゃあっ!」


 ビクター「あっソニー!」

 ベル「こらーー!」


 アリエスタ「おいてめえ!」

 むっ、魔法を使うのか!?


 その時だ。

 呪文を唱え集中しているアリエスタの背後に、山と積まれた木の板や元頑丈な大きい桶や港の仕事に使う類の道具が、乱闘で崩れ、彼に落ちてこようとしていた。


 ガラァ……。


 がしっ!


 咄嗟に手で掴んだ。


 む!

 ガンッ、ズズ……。

 向こう側で取っ組み合いでもしてるのか、こっちが押されて更に崩れようと傾く。


 ビクター「ソニーっ、ほらこっち、あ痛て! うわあっ」

 ソニー「うう、お兄ちゃん~」

 ガストン「おいやめろバカてめえらっ! 来いっおまえらっ! 一旦下がるぞ!」

 彼らはソニーを掴み起こしたが、乱闘に巻き込まれつつあった。


 ワアアアアア!


 ベル「きゃあっ!」

 釣り竿を振り回した奴がベルの傍スレスレに通り過ぎる。

 ザケンナコラアアア!


 こいつら……。


 ビクター「ソニー! 平気!?」

「う、うん、お兄ちゃ――」


 ガアンッ!

 ドガラアアアアアアアアンッ!!


 崩れかけの積まれた資材が弾けるように蹴り飛ばされ、反対側の連中にぶつかり崩れ落ちた。

 向こう側の連中「うわあああっ!?」


 スウゥゥゥゥゥ。


 ガストン「うわやべえっ! 皆耳塞いで伏せろ!!」



「ッガアアアアアアアッ!!」


 魔力を少しだけ乗せて、威力だけは思い切り入れて、咆哮を暴れる馬鹿共に向けて放った。


 ――――漁師達「「「!!!!!!」」」


 ドサバタドサァッ!


 手前の連中だけ気絶して倒れた。


 他はあまりの大音響に、痛いとでもいうかのように耳を塞ぎ、空間を振動させる威圧の覇気に、本能的恐怖で体が勝手に身を竦めさせた。


 彼らは悟った。

 巨大な魔獣が街に攻めて目の前に来たのだと。


 咆哮が鳴り止み、そちらを見ると、まさかのエルフの、美しいがオーガのような憤怒の表情をした娘が、襲い掛かるような姿勢で港の出口を塞いでいた。


 何故か、考える暇も与えず、竜のような恐るべき瞳に、射貫かれ、蜥蜴族は勿論、全ての漁師達が心底生物的な恐怖に凍り付いた。


 歴戦の、湖の狂暴な魔獣と血みどろの戦いをしてきた、冒険者に引けを取らない荒くれもの達がだ。


 なけなしの勇気と戦いの本能で、かろうじて得物を握る指に力を込めたその時、更なる絶望が彼らを襲った――。



 全然倒れてないな、頑丈な連中だ。


 蜂が潰れたのを見たから控えたのだが、もっと魔力を込めておけばよかったな。

 とりあえず手前に立っている奴をぶん殴った。

 バキイッ!

 蜥蜴人「ぐへっ!」

 意識を失って力なく崩れ落ちた。


 鱗の皮膚が中々硬いな。

 隣で茫然と突っ立ってる魚人の腹を蹴っ飛ばした。

 バゴオッ!

 魚人「ぐぺえっ!」

 バガアアンッ!

 飛んだ。

 向こうの籠の山に突っ込んで見えなくなった。


 その間にケープから瞬時に反対側の拳に拳当てを出現させて力を込めて握り、そのまま奥の蜥蜴人の偉そうなやつを殴り倒す。

 バゴンッ!

 偉そうな蜥蜴人「儂は見てただけな――グハッ」

 上から降ろすようにして脳天を叩き、床に倒し落とした。


 うむ、こんなもんか。


 力はそれほどこめてないぞ、思い切りやれば多分死ぬ。


 もう少し弱めにして、速さを主にやれば、いけるな。

 あと三十くらい 流れるように続けて殴り倒した。


 全員を。


 バキドカボコベキドンドカカカッ! バゴオンッ! ドカンバキンドゴンズガンバコオン!

 ゼラ「ルーナさ――ぐぼぁっ!」

 うん?


 漁師達「ひっ、ばっばけもっぎゃあああああ! ぐぶぷぅっ!!」「ふにゃあ!?」

「雷女王だあ! 黒焦げにされるそぐぷぅっ!? ――」「ひえ!?」

「違う! 別のエルフだばぱぁ!?」


 ドゴオッ!

 ???「なんのっぐっぽあ!」

 途中、とっさに受け流したでかい奴が居たが、強めに膝を腹にめり込ませてうずくまらせてから、飛び降りながら肘で背中をぶち当て床を舐めさせた。

 バグッ――ドサアアアンッ。


 最後あたりで我を取り戻した奴らが一部、蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。

 背後を蹴っ飛ばし湖へ落とした。


 他は震えて動かない。

 的だな。


 容赦はせんぞ。力は抜いてるがな。

 バキイッ! ドカッ! ベシイっ!

「――ちょまっ、俺怪我してぐはっ!」 

「――わっ、何でオイラまでっぐぺっ!」

 次々と面白いように飛んでいくな。


 ここらへんで蹴りが楽しくなってきた。


 回転して蹴っ飛ばしたら、さらに勢いよく飛んでったな。

 バシャアンッ! ドボオオンッ!


 きゃああああ!

 もちろん、遠巻きに見ていたり乱闘を止めようとしていた漁師達や女達の腹は殴ってない、はずだ。


 ガストン「おー、ついに切れたか、まるでマルコの親父みてぇだな。旋風だ。ククク、ハハハハッ」

 ビクター「うわぁ~……」

 ソニー「ええええ!? とっ止めなくていいんですか!?」

「元気が有り余ってるからなこいつら、いい薬さ。ついでに雷石でも投げちまえばいいんだよ」

 アリエスタ「やれー! ぶちのめせ! いい気味だぜ! あいつがやんなきゃ俺の大魔法が炸裂してたからな!」

 ベル「いけー! やれー! がんばれー! がんばルーナ!」



「ふぅー」


 全員ぶちのめした。

 乱闘は終わった。終わらせた。


 良い運動になったな。


 ベル「ルーナすごかったね!」

 いち早くこちらに飛んで来て、宙を殴る仕草をした。


 うめき声が港のあちこちから聞こえる。


 ううぅ~、痛ぇよ~、母ちゃ~ん、ボエエエエっ、びちゃびちゃ、ううう、グスン。


 皆の元に戻る。

 倒れた連中の間を歩く際、めちゃくちゃ怯えられたが。

「皆平気か?」

 ソニー「あ、ちょっと尻もち着いただけですから」


 ガストン「はは、おつかれさん」


 ソニー「……これ、私が治療するんですか?」

 アリエスタ「ほっときゃ治るだろ、手加減してたっぽいし」


 ビクター「で、でも、あそこの人、骨折れてませんか?」

 あ、しまった。

 アリエスタ「……」


 遠巻きに見ていた止めようとしていた者、家族、近くを通りかかった人々、近くの商店から出て来た店員と客、大勢の者達が現場を取り囲むようにして港の惨状を眺めていた。


 あ、衛兵が仲間を呼んでいる。

 港を囲む橋の上にも衛兵は立っているから、完全に見られていただろうな。


 逃げた方がいいか?


 アリエスタ「じゃ、さっさとズラかって依頼受けに行こうぜ」

 兄妹「「ええ!?」」

 ガストン「まぁ、多分無理だろうな、見ろよ」


 む、一番丈夫で偉そうな奴が腹を抱えながらゆっくりこちらに来る。

 ああ、一度避けた奴か、もう起きたのか? やるな。


 偉そうな恰好の蜥蜴人「儂の名はレックスでス、エルフ様。我ら一同、あなた様に付き従いまス。どうか寛大なお慈悲を」


 そうわけのわからんことを言って、大柄男レックスは傷みに顔をしかめながら、片膝を港の木の床に着き、頭を下げた。

 兄妹「「ええ!?」」


 今まで見た中で一番鱗がごつくて硬くてトゲトゲしていて、身体もギルマスの獅子獣人ロムガル並に大きい。


 あちこち大小の傷跡があり、特に右目当たりにに大きく引っかかれた傷跡があって、しかも魔物みたいな面構えで、悪くない。

 あちこちに痣が出来ているが。

 アリエスタ「おっさん何言ってんの!?」


「こんにちは、私はルーナだ、そういうのはいらない、争いを止めただけだ」

 あと、喧嘩するなら外でやってこい。


 他の連中もちらほら、立ち上がったり気が付いたりして来たな。


 レックス「ルーナ様……やはり噂は間違っていなかったようでスな、ソの外套も伝承の通りでス」

 ?

 私の眼を見てそう言ったな。

 ケープのことも言ったぞ。


 ビクター「噂?」

 ソニー「お兄ちゃん、レンちゃん達から聞いたんだけど、ルーナさんの事が結構広がってるみたいなの……」


 ちらほらと私のことが広まっているようだ。

 ソニーが道具屋で、娘達と色々話をしていたらしい。


 アリエスタ「なぁおっさん、俺の噂は?」

 レックス「……」

「無視かよ!」


 ガストン「よぅ、旦那。ルーナは強えーだろ」

 ビクター「あれ? 知り合いですかガストンさん」

「ああ、この旦那は網元の息子で中々強い人だぜ」


 アリエスタ「なんだ? ぼんぼんかよおい」

 ぼんぼん?


 どうやらガストンよりも年が上の様だな。

 ダロムぐらいだろうか。

 レックス「……」

「おいまた無視かい!」


 網元の息子というレックスの背後に、ゾロゾロと漁師たちが集まって同様に膝をつき始めたな。


 わけのわからない感じでいる若い漁師達にも目上の漁師達がまねさせている。

 何をしてるんだろうか?


 周りに集まって来た蜥蜴人達もざわついている。

 人々「大樹の紋章だゾ」「世界樹だ」「伝承の大樹のマントだ」「まさか」


 これは……ダロムが妙にケープを推してきたのは、これか?


 ベル「世界樹ー?」

 集まる人々を興味深く飛び回って見ていた彼女がその言葉に興味を引いていた。


 アリエスタ「なんかほんとに手下にしたみたいになってんぞ?」

 知らん、好きにさせておこう、それより。


「何で争っていた? あと、様はいらない」


 ゼラ「いてて、ホントだよ、聞かせてもらおうかレックスさん」


 一同「「あれ?」」

 レックス「ノーデント卿!?」


 彼が口を開いた瞬間、何と、起き上がった漁師たちの間からずぶ濡れのゼラが出て来たぞ。

 彼の登場でまた蜥蜴人達を中心に辺りがざわついたな。

 貴族とやらだからだろうか?


 何故か鎧姿ではなく軽装だな。

 そして腹に蹴られた跡がある。



 ガストン「おい、何してんだおまえ?」

 ゼラ「お前が言うんじゃないよ、のこのこようやく昼過ぎに出て来やがって、どうせまた飲んだくれてたんだろ?」

「うるせい」


 ベル「ゼラだー!」

 ビクター「ゼラさん!?」

 ソニー「え? まさか乱闘の中にいたんですか? ちょっとルーナさん! 貴族様ですよ?」

「む」


 アリエスタ「ぎゃはははは! ばっかでー!」


「いや、気付かなかった、すまんゼラ」


「いえいえ、いいんですよルーナさん。あなたの熱い思いのこもった拳なら、いくらでも受け止めますからね」


 ソニー「まぁっ!?」

 ビクター「???」


 アリエスタ「ははは意味わかんねー! 頭打ったなこりゃ」

 ゼラ「やかましいっ」


 ガストン「お前、乱闘止めようとして巻き添え食らっただけだろ?」


 ビクター「何で濡れて……湖に落ちたんですか? 鎧じゃなくてなくてよかった」

 アリエスタ「だとしてもハーフだから平気だろ? しばらく沈んじまってもさぁ」

 ガストン「はは、そうだとしても誰が引き上げると思ってんだよ」


 ゼラ「ひどい言われようだね?」


 ソニー「ゼラさん、衛兵のお仕事はもう非番なんでしょうか?」


 ゼラ「ああ、いやね? 団長を呼んで戻る際に脱いどいたんですよ、ほら、例の下に降りて潜らなきゃいけないだろうしね?」


 ああ、団長に例の迷宮門の発見を知らせに、衛兵団事務所とやらに髭と一緒に戻るとか言っていたな。

 ガストン「ああ、らしいな、俺も組合で聞いたよ、で?」


 ゼラ「あれ? ルーナさんのまわりになんか浮いてるんだけど? 何ですかそれ?」

 アリエスタ「いいから続き話してくれよっ」


 レックス「……」

 ベル「お~高ーい! 控えおろ~!」

 ?

 控えおろお?

 アリエスタ「お前何やってんだよ」

 彼女は膝をついたままでも十分私達より高いレックスの頭の上に、怖がることもなく跳び上がって乗ってそう言い、大きな声がそこら中に響き渡った。

 

 ざわざわ……。


 ガストン「で?」

 二人して一瞬そちらを見たが、ほっといてゼラを見た。

 早く続きを話してくれ。


 ゼラ「え? いいのかよあれ放っといて? ……そしたら団長がルーナさん達も呼んで来いって言うもんだから、あちこち探し回ったんですよ? 組合に行ったらモードさんしか拾えなかったし、大屋根に行ったらもう買い物終えて依頼に出てったって言うから後を追っかけたら、この乱闘に遭遇したってわけなんですよ」


 ふむ、道具屋を出てすぐゼラが来たのかもしれないな。


 しかし乱闘の中にいたとは。


「あ、モードさんは何か用事を思い出したって途中で別れましたけど、団長達は崩落現場に行きましたからね、それと、団長も無理なら別にいいって言ってましたよ?」


 ガストン「なんか面倒だな、“例のやつ”の確認ってだけだろ?」

 アリエスタ「じゃあ俺はパス!」

 パス?

 ゼラ「そそ、例のやつね」


 ふむ。


「これからやることがあるから後だな」

 ビクター「け、ケイラッド様の誘いを断った!」


 ベル「あっ、あの子、たくさん血が出てるよ」

 ソニー「大変、私あの人大怪我してるから治してきますね」


 ゼラが私達越しに向こうを見て、私と、私の拳を見て一瞬下がってガストンを抗議する様に見た。

 ゼラ「……ええ~~ちょっと?」

 違う。

「あれは私じゃないぞ」

 ガストン「ああ、漁から帰って来た連中だよ、魔物に襲われたんだと」


 最初に揉めていた若い蜥蜴人か。

 彼も元気に大暴れしてたから、軽く蹴ったな確か。


 アリエスタ「ソニーっ、きつそうなら俺を呼べよーっ」


 ゼラ「そうですか、じゃあ下水道の事は置いといて。すいませんレックスの旦那、ちゃちゃっと話しちゃってください」

 ベル「ちゃちゃっと!」

 アリエスタ「だいぶほっとかれてたよな」


 レックス「……わかりまシたノーデント卿。こほん、ソうでスな、あのお嬢サんが治療をかけてくれている小僧が発端でスが、先程まで騒いでいたのがまた再燃シまシて、申シ訳ない」


 ベル「わぁ~」

 レックスが頭を下げるので上に乗っているベルが揺れた。

 丁度私の目の高さに彼女が降りて来て目が合った。


 ふむ。騒ぎ?


 ガストン「ああ、昼頃から騒ぎがあるって聞いてた、それか?」

 何故かレックスはガストンには答えないので視線で促す。


 レックス「お恥ズかシい限りで、商人達と買取で揉めまシてな、今後取れた魚を買わないとまで言い出シたので乱闘になりかけたのでス」


 アリエスタ「はあ? 湖の魚を? 無茶苦茶じゃん!」

 そうだそうだ、と背後にいる漁師たちが騒いだ。


 ガストン「例の妙な魚が獲れるとかでか?」

 ああ、内部が焦げた臭いのする、あれか。


 レックス「……ソうだ隻狼、あの若い連中の船を見て見ろ」


 アリエスタ「ルーナとおっさんで態度が全然違うなこのでっかいぼんぼんは」

 ビクター「あの漁船ですか?」


 ソニーがけが人を治療してるところが見えるな。


 ベルがレックスの頭の上から彼女に向けて手を振っているが、気付いてないぞ。


 その彼ら若い漁師たちの背後にある船に積んだ魚、やはりあの魚もそうなのか。

 怪我してまで獲って来て買い取られないのは、冒険者だって怒るかもしれないな。


 ビクター「あれ? 神父様がこっちに向かったと言っていましたけど」

 アリエスタ「あー、師匠もこっち来なかったけか?」


 レックス「ええ、マイケル様が現れ仲介をシて下サり、最低価格でスが買取に応ジてくれまシた。ただ……」

 アリエスタ「うーわ、売り上げ激減じゃん! 最悪だろそれ!」


 ガストン「ああ、はらわた煮えくりかえってるだろうが、それでも一応は収まったのか」

 彼はそう言って漁師達を見回した。


 ふむ、皆納得してる顔を全然していないな。

 だが、マイケル神父はやるな、言葉でこの荒くれ者達を制したのか。


 ビクター「ルーナさん、神父様や水教会はお互いに湖関連で仕事をしているので、この漁師さん達とはとても仲が良いんですよ」

 ガストン「教会は水を浄化してるからな」

 ああ、もう一つのロッカ湖で何かスライムで浄化とやらをやっていると言ってたな。


 ゼラ「それって僕たちと同じですねルーナさん」

 レックス「!?」

 ベル「ええ、どこがー?」

 アリエスタ「おっさんはちょっと黙ってろや」


 ガストン「旦那、網元やマイケル神父は今いないのか?」


 レックス「……ああ。買い取った魚を食料ではなく油にスるということで折り合いがついた」

「ソれが可能かどうか調べるのを、通りかかったセレナール様が協力スるとおっシゃられて下サり、オヤジ――網元とマイケル様と共に魔法協会へ調べに出掛けたばかりのところへ、小僧らが港に帰還シたのでス」


 アリエスタ「やっぱそうだろ?」

 ああ、やはり彼も来ていたのか。


 魔法協会で調べる、と言うことは魔法とかでだろうか?

 油というのは、灯に使用してるあの魚油とやらかな。

 魚を全て?

「食べられないのか?」


 レックスが部下に目線で指示し、魚を持ってこさせた。

 樽に乗せて手早く中を開いて見せてくれた。


 むっ、内部が焦げたような、腐ったような臭いを発しているな。

 水と魚の汁や血に混じって黒ずんだ液体にまみれて流れ出していた。

 あの汚染した水のように……。

 ベル「なんかやー」


 ゼラ「ええ!? 初めて見たよこんなの、どうりで守備隊が最近騒いでたわけだ」

 ほう? 蜥蜴族の守備隊達だろうか。

 漁師達と仲が良さそうだからな。


 ガストン「うーん、腹壊しそうだなこりゃ」

 ビクター「これは、買い取らないって言われそうですね……最近魚料理が少なかったのって、これだったんだ……」


 アリエスタ「ああ、こりゃ食えそうにねーな、てゆうかこれさ」


「ああ、あのスライムが増えた時に汚れた水だ」


 読んでくださりありがとうございます。

 蜥蜴族の漁師連中を絞めました。

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