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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
二章 湖の街編
100/133

96話 謎の魔力

 ドドドドドド……。

 台地の周囲の岩壁、そこからのぞく構造物――遺跡から流れ落ちる滝の壁が、水音と共に深淵に吸い込まれていく。


 魔人ノーマダーラ「一度ならずも邪魔立てをするか、エルフ族の魔術士よ」


 大魔道師セレナール「なに、これで仕舞いにするわい。疑いがかかっとるからのぉ、こっちも必至じゃ、すまんの」


 皆「「?」」

「……」

 そういえば湖岸の水壁内で妙な話をしてたな。


「フンッ! 我輩に勝てると思っておるのか? ここは我らの領域だ、本領発揮した魔装の性能を知るまい?」


 ウニュウゾ……あの服、装具? は魔物なんだろうか。異界の中でも“ああいう感じの鏡”を割ったな。


「はて、どうじゃろうな? (日差しがないゆえ、魔装を十全じゅうぜんに発揮できる、ということかの? 戦時中に(うちらが)散々見知っておるのをこやつ、知らなんだな)」


 ギリッ! 

「っ時代は魔術より“魔科学”なのだ! おごり高ぶる貴様ら魔術士ではなくなあ! 我ら魔族のっ我輩の開発した魔道具の進歩におののくがよい! 下等種族共めが!」


(極端な奴じゃな、じゃが、魔術の才が低いのは哀れとは思うが、それは天の領分、その割には魔道具使いとして大成しておるクセに、くすぶって腹に抱えておるようじゃの)


 セレナールと魔族の戦いが始まるようだな。


 皆「「……ゴクリ」」


 バーサ「お師匠様、首飾りからの反撃魔法に注意してくださいね?」

 ガーデリア「ええ、恐らく分解の魔術です」

 セレナール「うむ……(まじかの!? “防げぬ、操れぬ”というあれを!?)」


 アリエスタ「なあっ外の魔導器だか黒球だかの魔道具は壊したのかよ? 異界にいきなり閉じ込めるのとかはもう来ねえのか? それとケイラッドは呼べねえのかよ師匠?」

 師は頷くだけであった。


 ガーデリア「ケイラッド“様”ですよアリエス」


 先程奴の脅威に焦って汗だくであったガストン程ではないものの、今度はセレナールが、汗ばみはまだしていないが、極度な集中と緊張下にあった。


「すぅー……」

 瞑想する時間が出来てありがたい。

 すぐに手伝うからな。


 ノーマダーラ「死ね」

 グニュッ――セレナール「!」


 奴が突然動く、もう何も助言を言わせない気か知らないが。


 ――ドゴゴゴゴゴゴゴゴウッ!


 ――バシャアアアアアアアン!


 皆「「うわ!?」」


 急に攻撃して来た。

 あの切断した腕と取って代わっている新たな腕――魔装とやら“から”だ。


 “手”の場所に相当する場所の“銃口”から、魔法の球を連射してきた。


 その腕は、肩の部分に“筒”を数本生やし、そこから僅かに紫の粒のような光を煌めかせた、何やら得体の知れない煙を噴き出していた。


 紫の光弾だ。

 早過ぎて歪んで細く変形し、一つ一つがものすごい威力を持っていた。

 ビクターの構えている鋼鉄の盾なんて穴だらけになるぞ。

 すでに割れているが。


 あの指輪の光弾とは比べ物にならない。

 そう言えば斬った腕の指輪五個と腕輪は回収したのか?

 腕の魔装は装飾品を着けていない。


 アリエスタ「うおおお!?」

«何じゃ趣味が悪いのぅ、魔族の武装じゃなぁ、うねうねと気色悪いっ»


 ビクター「ルーナさん、凄いですよっ!?」

 見てないの? と言う感じで聞かれたが。

 視てるぞ。

 眼で見ずとも、全部視えている。


 それを、セレナールはいつものように水壁で防いでいた。

 だがこの水壁、普通じゃないぞ。

«何じゃ何じゃ、うっとおしい壁じゃあ»


 ズズズズゴゴゴゴゴ……。

(ドキュドキュドキュドキュドキュ)


 バシャシャシャアアアアアアッ!


 ドドドンゴゴオオオンッ!

 ビキピメキバキイッ!

 水壁反対側の、防いでる向こう側の地面が爆発して弾け飛んでいる。

 弾は広範囲にばらまくように放って来てるからだ。

 

 奴は私達全員を狙って、死ねと言ったんだな。

 バキバキィッ。

 水壁からこっち側まで砕けて来て、というか台地全体が崩壊しそうだが


 ズズズズゴゴゴゴッ。

 皆「「わわわっ」」

 ガーデリア「うわっ補強しますよ」

 パキパキピキ……。

 流石に彼女が土魔術で塞ぎ始めた。

 彼女も色々使えるんだな。水や土もか。


 ガストン「皆もっと下がれ!」

 ゼラ「ひゃ~っ」


 ラグザ「ちょっと何やってんだよセレナール様あ! 攻めろっぶっ殺せ!」

 ロムガル「グル、ラグザ、下がれっ」


 バーサ「ほら、あなた達もっううん、“儀式魔法”をかけるには狭いのよねここ……」

 マルギット「はい~っ」

 ソニー「は、はいっ!」

 儀式魔法……多分、大魔法とかか? もしかして、私達が居ると、セレナールの邪魔なのか?


 ドドドドオオオオッ。

 アリエスタ「ありえねぇ……くそっ」


 ブブブブブ。

 黒い腕に魔力が集中し始めた。

 溜めているのか?


 !

 アリエスタがいない!

 ――いた!

 白い鳥だ! いつの間にか変化し背後に回り込んでいる。


 同時に鳥から戻って、何か放ったぞ!

 ヴィイイイイイイイ!


 ――魔道銃か!


 白鳥アリエスタ『どうだ! これで何もできねえだろ――ってはあ!?』


 イイイイ――……。


「馬鹿めが! 自分が開発した兵器の対策をしてないとでも思ったか?」

 魔道銃の波動が、防がれていた。

 指輪もなしにだ。

 首飾りの障壁か?


 こいつは魔封じも効かないのか!

「フン、三流以下の魔術士だな、小人族の程度か」


『ってめえ!』


 クイッ――『んならこれでどうだボケ!』

 器用に嘴からいじった物を投げ飛ばした。


 キ――――――ンッ!!


 皆「「!?」」

「っ」

 うわっ!? 魔除けか!?

 皆急に響いた音に耳を塞いだ。魔力持ちだけだ!

 キュン! キュウ~!?

 (バイトベアの)子熊達もか?


 ザバァッバババシャアッ……。

 セレナール「っ何を!?」

 集中が乱れたのか、彼の大水壁がぶれて、歪むっ!?


 あれが私達を守ってるんだぞ!


 アリエスタのやつ、最大音で奴に投げた!


 ベル「あっ」



 カチャンッキ――――キュイイイィィッ――…………。

「よい音であろう? 一応開発したのは我輩だ……効くとでも思ったのか? くっくっくっ、まるで玩具を拾った猿だな」

 奴には魔除けの音さえも効かないようだ。

 ベルもそうだったな。


 バサバサアッ。

『クソ! それもかよ!』


 だが、魔石や魔道具に悪さはするからな、止められた。

 足元に転がったのを、片腕にある幾つもの魔法指輪の、恐らく念道術のそれで浮かばせ拾って、つまみを戻してしまった。


 セレナール「ふんむっ」

 バシャアアアアアアッ。

 大水壁が持ち直す。

 元々魔力を乱され多少ぶれただけで、彼は制御を保っていたが。

«チッ、何じゃ、持ち直しよったっ»


 それでも、連射は止まらず放たれ続けていた。

 ドゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


 魔力の量といい放たれる光弾といい、異常だ。

 減った傍から回復していっている。


 ……どこからだ?


 それに、奴の背中から、何か伸びてきてないか?

 砲撃している腕と同じような、先端が怪しく光った黒い触手を四本。

 魔装か? 別の?

 ギュニュニュニュ……。


 マルギット「後ろ! あいつの後ろからなんか伸びてる!」

 ベル「お爺ちゃん後ろー!」


『師匠! やべえぞ!』

 奴から無視されてる、向こう側の彼も警告する。そっちからはよく視えてるだろう。


 今思うのもだが、鳥になってるが喋ってる声はいつもの彼の感じだ。

 どの変化もそうだが。

 ヴェルに化けていた時は彼女の声だったんだが。


 パアァァ。

 何だっセレナールの足元が光ってる。

「ゲコゲコ♪」

 あれ? あの蛙は。


 ベル「わぁーっ」

 アリエスタ「ケロ助!」

 バーサ「メメタでしょ」

 ガーデリア「黙って見てなさいアリエス」


 青晶剣が帰って来た時に見たことあるぞ?

 やはり彼の使い魔だったのか!


 セレナール「(やれやれ、一瞬死ぬかと思うたぞ)アリエスタ、よく見ておくのじゃ、水魔法の真髄しんずいを」


 アリエスタ「!」


 辺りの水の気配が一層強くなる。


 皆「「?」」

 ロムガル「グル……?」

 ソニー「うわっ……」


 ドドドド――……。


 !?

 滝の音が消える。


 周囲の水が、止まった!?


 パアァァ。

 何だ? セレナールの周りが、次々光って?


 いや――足元に、青い魔法陣が!?


 ガストン「何だ?」

 ビクター「きょ、教会で見ましたっ召喚ですっ――けど!?」


 パアァァ――。

 青い鳥「ピルピ」


 パアァァ――フヨンッ。

 青い魚「……」

 また魚も現れた。

 入れ替えて地上に言った魚を、再び呼び寄せたのだろうか?


 パアァァ――パシャ……。

 透明クラゲもいるな。召喚された時から透明だが、今ははっきり魔力で視えている。


 セレナールの使い魔が、多分全部来たぞ。全部か?

 何体居るのかは知らないが。


 一体だけしか、と言う訳じゃなかったようだ。

 勝手に思い込んでいた。

 多分、通常の事ではない。

 全部出すほどの相手だということか。


 ゲコゲコ♪

 あと、蛙が歌ってるのはこれは、魔術なのか?


 あっこれが魔術歌か!?

«何じゃあ! その歌を止めんかあ! 虫唾むしずが走るわ!»

 すごくこっちで嫌がってるのがいるぞ。


 ザバアアアア。

 セレナールは先を見越していたのか、水壁を曲げ歪め、奴を包みこみ始めた。

 触手は伸びて、水壁を回り込もうとしていたのだ。

「! 貴様っ」

「ニヤリ」


 ニュニュニュ――パパパッパパッ!

 触手の先が紫に輝いた!


 ドバババアアアアンッ!

 すると、水壁の一部が弾ける!


 パシャアアッ!

 皆「「うわっ!」」

 反動で、こちらに水飛沫がかかった。


 王蜜蜂女王のやったような、範囲の攻撃か?

 だが、水壁は表面だけ削れたようで、耐えていた。

 凄い。

 今の攻撃の余波? で地面が大きく円形に抉れているんだが。


 ガーデリア「腕から来ます!」

 あっ溜めていた砲が出るぞ!


 ブブブブ――ギョルッ。

 !

 奴の蠢く黒い腕の、魔力が溜め込まれていた場所に、眼玉が現れた。


 ――ドバアアアアアアアアアア!

 目玉から紫の極太の光線が放たれる!


 ザババアアアアッ!

 皆「「うわああ!」」


 ズズズズズズゴゴゴゴゴッ。

 地面が揺れる!


 向こう側の周りの壁も、全てが!

 ガラァッ。


 貴族やマルギット達「「うわわっ」」

 レズミル「ひいいいやっぱり死ぬううう!」

 オルカーン伯爵「ぐぬぬったっ耐えろお! セレナール殿を信じるのだ!」

 立てずにしゃがみこんでしまったものまでいる。


 セレナール「ふむ」

 だが彼は全く微動だにしない。

 白いローブが青く照らされ、奴の側は黒く紫だな。

 気配も空気も、魔力さえもよどんでいる。

 水の清浄さがよくわかる。


 ゲコゲコ♪

 水壁がまるで、奴の障壁の様に硬いぞ。

 それに魔水の、濃度? 多分、触れたら黒鎧スライムの体液並みに取れないぞ。

 この一帯の魔力、まるで水中みたいだ。

 あの蛙の歌か? 加護なのか!?


 水を強化……そうか、スピネルが自力で帰って来れたのを助けた技だな!?

 一緒に居たし。


 今度は大光線が水壁に激突し続ける!


 いかんっ彼の魔力は持つのか!?


 ノーマダーラ「これもだあ!」

 ヴヴヴ――ヴバアアアアッ!


 な!

 指輪のアレもだと!?


 ザバアアアアアアアアアア!

 一番水壁が震え波打った。

 ズザザザッ――セレナール「ぬおっ!?」

 彼の足がずり下がったっ。


 ――バゴゴンッ!

 !

 同時に、魔人のローブの影、足元から、何かが地面に刺さっていった!?

 地中!?


 また触手か何かか!?


 ズズズズベキベキベキベキッ……。


 いかん!

 ――「セレナール地中から来るぞ!!」

 ビクター「うわっ!?」

 とっくにルーナは瞑想もそこそこに竜眼を見開いて戦いを注視していた。


 ――ガーデリア「(今)固めています!」

 ――セレナール「(いや)無用じゃ」


 ソニー「え? ルーナさん?」

 ベル「ルーナ起きたー」

 別に寝てないぞ。

 ラグザ「おいルーナ、干し肉寄こせ」

 今か?

 ガストン「状況考えろっ!」

「ガルルッあたいは腹減ったんだよ!」


 気付けば、召喚した使い魔たちに、水が纏われていた。

 蛙、鳥、魚、クラゲ、全てが!?


«何じゃワシは帰るぞ! 水水水ッ忌々しいっ»


 青い魚「パクパクパク」

 フヨンッ――トポォンッ。

 !

 魚が、硬い岩の地面に飛び込んで行った!?

 水面のように波紋を起こしているぞ。

 何が起きてるんだ。


 ガーデリアの土魔法でだじゃないんだな?

 さっきひび割れを直していた。


 これは――“これが”空間魔術か?

 さっきも障壁を壊したんじゃなく、“隙間”を開けたように!?

 魚!


 ベキベキイイイ!


 皆「「わっ!?」」


 地面の中で、何かが引き裂かれて、ねじ切れて、潰れる音がした。

 その岩の地中ごと。


 感知によると、奴のローブ下から伸びていた魔装の触手が、どうやらやられたようだな。

 変異とは違うのか?


 そうか……ブラッダーが言ってたのはこれか!

 ベタが瓦礫に埋まった彼を補佐して、助けてくれたんだな!?


 ノーマダーラ「フン! さぞ自慢だろうその魔術が! だが所詮はエネルギーが全て! 我輩のストックしてある魔道具や魔力がどれ程の物か、身をもって教えてやろう! 諸共消し飛べ!」


 奴はそう、魔法使いに何か含みがあるように言った。

 盗賊リゾットのように……だが、奴はそれに十分対抗できうる程の恐るべき魔道具の使い手だ。


 奴が浮かび上がり、腕と背中の魔装で地面を、水壁もろとも破壊し始めた!

 ドゴゴゴゴゴゴゴオ!

 パパパパアア!

 ドバーーーーーードゴゴゴオオオオオオンッ!


 セレナールっ奴の指輪の手も――。


 ――バヂュンッ!


 ノーマダーラ「ぐがあああ!?」


 何だ!?

 全く見えなかった!


 腕が、急にちぎれ飛んだぞ!?


 右上、斜めから“青い筋”が貫いた!


 腕が飛んで――こっちに向けた、指輪を光らせたのが――ピュンッ――また!?


 青い光線?

 ピピュンッ――。


 青い鳥「ピュルル♪」

 奴の遥か後方に、青い水飛沫と残光を走らせた水鳥が高速で飛び、水の滝を避けるように曲っていた。


 あの鳥、あんな強かったのか!


「っぎゃあああ!? 腕が! またしてもお!? ぐっ、ぐあああああ!」


 ジュビュルジュボボオッ!


 皆「「!?」」


 腕が生えたぞ!?

 反対側の腕砲台と同じ様な、黒い生物の腕が。

 奴の胴体から、背から足元から、寄せ集めるように集まり瞬時に形作られていた。


 皆「「そんな!?」」

 驚く皆。

 セレナールは冷静に観察している。

 彼の操る魔水は、ちぎれ飛んだ奴の、魔道具をたくさんつけた腕も回収して取り寄せていた。


 あれだ。

 奴の背後の、破壊から逃れている、いや破壊をしなかった、魔法陣。


 周囲の魔力が底に集まり、奴に魔力を流し込んでいるんだ。


 多分、魔装に。


 そう考えながら、新しく生やした腕の、ラグザのような鉤爪の手を振り降ろす奴を私は呑気に見ていた。


 バシャアアッ。


 クララ「……」


 まだクラゲが居るからな。


 読んでくださりありがとうございます。

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