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錬金サバイバル〜女神のくしゃみで無人島転生になりました〜  作者: 桜木まくら


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第4話〜女神サポート始まりました〜

頬に触れる冷たい砂の感触。潮の匂い。

波の音が、やけに大きく耳に響く。


突然、明るい声が響き渡った。


「見つけましたー!レントさん!大丈夫ですか?」


身体が鉛のように重く、指先に力が入らない。

ゆっくりと顔を上げるが、まわりには誰もいない。


「今、天界から話しかけてます!」


忘れようにも忘れられない――あの転生騒動の張本人だ。


「女神さん?」


「はいっ!やっと見つけました!」


その声は嬉しさと安堵が混ざったような響きで、胸の奥が少し温かくなる。


「見つけたって、どういうことですか?」


「えっと、ちょっと恥ずかしいんですけど、その、くしゃみをした拍子に、転生させちゃいまして」


「ええ、覚えてます」


「そのせいで詳細位置が決まってないまま転生してしまったんです!本当ならちゃんとした街の近くに転生させる予定だったんですけど、結果的に、人里から離れた場所にランダム転生になってしまって」


「なるほど。だから、どこにいるのか分からなかったわけですね」


「はいぃ。ずっと見つけられなくて。でも、さっき錬金術を発動したおかげで、ようやく信号をキャッチできたんです!」


女神の声は本当に嬉しそうで、耳の奥が心地よく震えるようだった。


「じゃあ俺、くしゃみのせいで吹き飛ばされたってわけか」


「うっ、す、すみません!」


「いや、もう気にしてませんよ。むしろ、声が聞けて安心しました」


「えっ?」


「だって、この島に来てから、人の声を聞くの初めてですから」


砂浜を打つ波音が静かに響く。風が頬をなで、孤独だった時間の重みがじわりと胸に広がる。


「そうですよね。ひとりきりで不安でしたよね」


「まあ、最初はちょっと。でも、こうして話せるだけでけっこう元気出ます」


「そう言ってもらえると嬉しいです!」


女神は照れたように笑う。その声に、レントも思わず口元を緩めた。


「実は今『通信サポート』がついてるんです!」


「『通信サポート』?」


「はいっ!天界公式、転生者サポートキャンペーンです!」


「なんか聞いたことあるノリですね」


「転生直後の3日間限定で、担当女神、つまり私と話が出来るってことですよ!」


誇らしげな声が空気をふわっと震わせる。


「でも、3日間限定なんです。いわば体験版みたいなものですね!」


「ずいぶん商売っぽいですね」


「いやいや!天界のサポートは大変なんですよ!転生者さんってだいたい、最初の3日で一番トラブルを起こすんです!」


「なるほど、俺もまだ右も左も分かりませんし」


「そうそう!だから、何か困ったことがあれば何でも聞いてください!」


少し胸を張る女神の口調に、内心少しだけ安心した。


「つまり今のうちに質問しておけってことですね」


「はいっ!どんどん頼ってくださいね!」


「ありがとうございます。あ、そういえば、名前聞いてませんでした」


「わ、私ですか?キュリシア、です!」


「キュリシアさん、ですね。覚えました」


「はいっ!レントさん!」


声の向こうで、ぱっと花が咲いたような音が聞こえた。空のどこにも姿はないのに、確かにそこにいるような温かさが胸に残る。


レントは視線を釜に戻し、深く息を吐いた。


「じゃあ、いくつか質問させてもらってもいいですか?」


「もちろんです!質問どうぞ!」


「この島は無人島ですか?」


「そうですね。この島に人間の気配はありません!」


「街の近くに移動することはできませんか?」


「それはちょっと。手続きや制約がいろいろあって、難しいですね」


レントは小さく息を吐く。孤独な現実が、少しだけ胸に重くのしかかる。


「でも大丈夫ですよ!無人島といっても、自然が豊富なので最低限の生活はできます」


「なるほど。ここで自分でなんとかやれってことですね」


女神との通話に少し慣れてきたものの、まだ質問したいことは山ほどある。


「えっと、俺のMPはいくつあるんですか?」


「それに関しては、実際に見てもらったほうが早いですね!転生者が一度は言ってみたいナンバーワンのあの言葉、言ってみてください!」


「あの言葉って、『ステータスオープン』?」


「ピンポーン!」


すると、薄い光の板のようなものが、ふわりと視界に浮かび上がる。触れれば消えてしまいそうな透明感だ。


レントは緊張しながら確認する。


―――


【ステータス】


名前:レント

職業:大釜使い


レベル:1

HP:18/18

MP:0/10

力:4

体力:5

敏捷:6

魔力:7

精神:8


【固有スキル】


錬金術

熟練度:1


―――


「職業、大釜使い?」


「大釜使いは大釜を盾にして攻撃するスタイルです!防御しつつ反撃もできる、器用な職業なんですよ!」


「なんで大釜使いに?」


「えっと、錬金術師の設定をちょっと忘れてて。錬金釜も大釜みたいなものかなって。ちなみに小釜使いは、手に小釜をはめて殴るスタイルです!」


「手に小釜?痛そうですけども」


「結構ダメージ出ますよ! まぁ、レントさんは大釜使いなので、まずは大釜と仲良くなってくださいね!」


ため息をひとつつき、レントは次の項目へ視線を移す。


「レベルは1、まあこれは予想通りとして、HPが18、MPは、あ、0になってる。錬金で減ったんだな」


「はいっ!錬金術を使うたびに消費します!」


「じゃあ、0になったら?」


「0なら問題ありません。でも、マイナスになると――」


一瞬、キュリシアの声が真面目になる。


「気絶します。回復するまで目を覚まさないです」


レントは無意識に喉を鳴らした。


「そんな物騒なこと気軽に言わないでください」


「今回は本当にギリギリでしたよ?ちなみにMPは1時間に10%ずつ回復していきます!」


力、体力、敏捷を確認し、魔力7、精神8。これでもいちばん高いのか、とレントは小さく呟く。


「賢いタイプですね!錬金の成功率や効率アップに影響します!」


「へえ、魔法に使うパラメータじゃないんですか?」


「魔法にも使えますけど、レントさんは魔法、覚えてませんから!」


「言われてみればそうですね。スキル欄は錬金術」


「はい!それだけは忘れずに設定しましたよ!」


「そういえば、さっき熟練度が足りませんって言われたんですけど?」


「熟練度は錬金釜の習熟度ですね。上がるほど扱える素材の種類が増えていきます!」


「素材が増えるってことは、今はまだ少ない?」


「今使える素材は『水』と『木』のふたつです!」


「少なっ!」


「最初はそんなものですよ。熟練度が上がれば、金属や素材なんかも使えるようになります!」


「熟練度を上げるには?」


「はい!錬金釜を使って、実際に素材を加工していくのが一番です!」


「つまり、何度も錬金を繰り返せばいいと」


「そうです!経験値みたいなものですね!」


「じゃあ、まずは手近な素材から試すか」


レントは深呼吸し、黒光りする大釜を見つめる。


この錬金釜を使いこなせるか、生き残れるのかどうかは、この釜次第だ。


「頼むぞ、相棒」


その言葉に応えるように錬金釜が太陽の光を反射して淡く輝いていた。


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