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壬玖  作者: 丹午心月


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終章

 新暦一二六五年六月、虹介は三年振りに峻剣しゅんけん山を下り、戸二谷家に到着すると山程ある毛皮を式台に降ろして一息吐いた。

 祥介は留守で出て来ない。祥介の部屋を覗いたらクルーもいなかった。仕方なく風呂を沸かしている間に縁側の雨戸を開けて、軽く拭き掃除をする。

 入浴後は体の大きさ的に丁度良い祥介の服を拝借して着替え、すぐに食べられる物がなく、縁側から隣の澤川家へ向かう。

「尋子さーん、兄ちゃーん、すいちゃーん、俺が来たよー!」

 すぐに足音が聞こえ出し、それが大きくなって居間の障子が開く。

「虹介!」

 大介が驚きと喜びが入り交じった顔で立っている。

「ただいま」

「おかえり」

 笑顔も真顔になって、何かを言い掛けて言い淀む。

「どうかしたのか?」

「尋子さんは亡くなったよ」

「そうか。間に合わなかったか」

 そう言って苦い顔をすると縁側に上がった。

「あ、茶を入れるわ。菓子も持って来る」

「それより何か食わして。腹が減っているんだよ」

「そうか。それじゃあ持って来るよ」

「すいちゃんは?」

 大介が足を止めて振り向く。

すいは生地が、織物が出来て依頼人の所へ持って行っている」

「いないのか。残念」

「それじゃあ待っていろよ。持って来るから」

「うん、頼む」

 台所へ向かう大介の背中を見た虹介は、居間へ入って障子を閉めた。尋子のいない澤川家に奇妙な思いを抱きながらも畳に座る。

 虹介がこの家が澤川家ではなく、戸二谷家となっているという事実に気付くまで暫く掛かった。

(ああ、澤川の家はもう他にあるんだなぁ……。息子がいると聞いてはいたけど、亡くなった事は知っているのか? ……父さんもあの家は譲り受けたと言っていたし、こうして人の手に委ねられて行くんだなぁ……)

 部屋の中を見回して、ふと気付いた。

(まだ子供がいないのか。それとも作らない気なのか? ……どっちにしても訊かないでおこう)

 二十分も経つと大介が白飯を丼で山盛りにして持って来てくれた。湯気を立てている熱気あつげな味噌汁と野菜炒めが盛られた大皿と小鉢を並べてくれた。丼には梅干しが二個載っている。

「ありがとう」

 箸を直接受け取って合掌する。

「いただきます」

「どうぞお上がり」

 梅干しを少し齧って、白飯を多めに頬張る。

じんじいは亡くなったと連絡があったよ」

「ふーん……」

「師匠はまだ元気そうだ」

「ふんふん」

庚漆こうしつ村の師匠の裏山へ行って手を合わせて来いよ」

「うん。ん? ……うああま?」

「散骨したんだとさ」

「ふーん」

 ようやく一口目を飲み込んだ虹介は、次は野菜炒めを頬張った。

「ん、んまい」

「残り物だけどな」

 大介は笑顔で虹介を見ている。久し振りに味わう味噌が、虹介には最高の調味料に思えた。

「やっぱり空腹は最高の調味料だな」

 苦笑する大介を見て、朗らかに微笑んだ。

「素直に旨いとだけ言っていればいいんだよ……」

「兄ちゃんの味で育ったようなもんだから、兄ちゃんの味が一番だな」

「そうか? 父さんの方が多いような気がするけど」

「父さんにもそう言ってる」

「お前ー!」

「あはははは」

 笑いながら野菜炒めを頬張った。そして今度はゆっくりと咀嚼して味わう。

「それにしても虹介、また体が大きくなったか?」

「うん、父さんの服を着ているけど丁度いいぞ」

「そうか」

 頬を膨らませる程に頬張っている虹介を微笑ましく見ている。

(二十歳になる筈だけど、まだまだ子供だなぁ……。人と触れ合っていない所為だろうか?)

 虹介が綺麗に食べ終えるまで時間はそう掛からなかった。大介は茶を入れ、それを飲みながら寛ぐ。

「今度はどれくらいいるんだ?」

 不意に訊かれ、虹介は首を傾げた。

「頭を譲って来たからのんびり出来る事は出来るし、戻らなくても良くはなっているんだけどな」

「そうなのか」

「クロアオが完全に迎え入れられたから、それでいいかと思って譲って来た」

「今日はこれからどうするんだ?」

「毛皮を売って金を作る。……あ! その前にさとるに会いに行く。それから寺へ行って、竜爺と尋子さんに会って来るわ」

「そうか」

 虹介は大介の穏やかな表情を見て微笑んだが、すぐに真顔に戻った。

「あ、嘉納かのう家はまだ壬玖じんく村にいるのか?」

「いるよ。安心して行って来い。小遣いをやろうか?」

「大丈夫。毛皮を売れば数日はいけると思う。父さんが戻ったら小遣いをもらうわ」

「そうか、分かった。足りなかったら言えよ?」

「ありがとう。そうなったらきちんと働いて返すよ」

「それは当然だ」

 虹介は頬を綻ばせ、大介も微笑んだ。


 毛皮を担いで桜並木通りを下りて行き、先に嘉納家に立ち寄った。いつものように手土産を持って行ったが覚はいなかった。みどりにそれを渡し、皮革品を扱う村地へ向かう。

 村地では大量に持ち込み過ぎて怒られ、一応全て買い取ってもらえたが一部は靴や上着に化けた。

(うん、まぁ、新調しないといけなかったから……。でも現金が良かったなぁ)

 釈然としないまま他の衣類を買い揃え、それから食料も買い込み、それらの荷物を抱えて玖里くり寺へ向かう。

 納骨堂の前に到着すると、足元に荷物を置いて合掌する。

(竜爺、尋子さん、ただいま。三年くらい峻剣山に篭もっていたけど無事に下りて来たよ。今日から当分いるけど、じきに庚漆村へ行って仁爺とまだ元気なしん爺にも会って来るよ。二人共、あの世で見守っててくれよな。それじゃあまたな)

「おやぁ? そこにいるのは誰だ?」

 合掌を解いて住職の方を見る。虹介が笑顔になると、にわかに住職がみはった。

「おお、虹介か! 久し振りだな?」

 虹介は荷物を持ち、徐に住職の方へ向かう。

「こんにちは。お久し振りです」

「元気だったか?」

「はい、元気だけが取り柄なんで」

 二人はしばらく立ち話をし、虹介は茶を馳走になった後、掃除を手伝ってから玖里寺を後にした。


 のんびりと桜並木通りを上っていると、キュウが急降下して来て虹介の頭を掠めた。虹介が右腕を上げ、旋回して来たキュウが留まる。

「先に家へ帰ってくれればいいのに……」

「キュルルールルル」

 虹介は小さく溜息を吐き、上着の中にキュウを入れて上着の上から優しく叩く。キュウは頭を動かして周りを見ている。

 夏を前に葉を茂らせている桜の脇を通り、青い田畑を見ながら無心で家へ向かった。

(そう言えば、父さんとここを通っている時に郡司さんに声を掛けられて、庚漆村へ行く羽目になった事があったんだよなぁ……。あれも六年くらい前か? ……そうだ。あの一年後に一度目だから、二年山へ入って、その後が三年で、うん、六年くらい前だな)

 それだけの年月を経ても、この辺りの景色は変わっていない。時の移り変わりを感じさせない、幼い頃から変わらない景色を眺めながら家に到着する。

 カルカル等は虹介の気配を感じて燥いでいる。カル舎を通って近道はせず、回り込んで玄関から入った。家の中はやはり人気がなく、日後に帰宅するであろう祥介と会う事を楽しみに待ちながら一人で過ごす。


 夜になると玄関の戸の開く音がする。

「虹介ー! 帰って来ていると聞いたぞー?」

(郡司さんだ)

 立ち上がると、急いで今から玄関へ向かった。廊下に姿を現した虹介を見て、郡司が破顔一笑する。

「元気だったか?」

「うん、元気だよ。郡司さんも元気そうで何よりだな」

「上がるぞ?」

「うん。飯は食ったのか?」

「今まで仕事だったんだぞ」

「食ってないから食わせろと普通に言えよ」

「あはは。食わしてくれよ」

「最初からそう言えばいいのに。まぁいいや。待ってて」

「おう」

 既に戸を閉めていた郡司は式台に上がった。虹介はもう台所に向かっている。

 朝食用に多めに拵えておいた野菜炒めと味噌汁を温め直し、これも朝食用に拵えていたお握りを盆に載せ、小鉢に胡瓜とトウモロコシと大葉の酢の物を用意した。そして、それを持って居間へ行くと我が家のように郡司が寛いでいる。

「お待たせ」

「おお、ありがとう。もう腹が減って……」

 そう言いながら起き上がり、座卓に置かれた盆に載っている物を見る。

「豪華だな」

「足りるか?」

「十分だ。いただきます」

 郡司が美味しそうに食べている間に虹介は茶を入れた。

「また何か頼み事をしに来たのか?」

「はん? 息子の様子を見に来ただけだ」

「そうか」

 虹介は苦笑した。お握りを手ではなく箸で食べている。

「食う前に手くらい洗えよ……」

「上がってそのまま居間に来たからな」

 そう言って野菜炒めを頬張り、すぐにお握りも頬張った。「うん」と頷いている。本当に美味しいようだ。

 郡司の食事が終わり、茶を飲んで一息吐いている。虹介は食器を桶へ浸けに行き、戻って来た。

「祥介は?」

「後四五日で帰って来ると思う」

「そうか。今度は何日くらいいる積りだ?」

「うーん、ずっと。様子を見に時折峻剣山へ入ろうと思う」

「おお、そうか。警備隊に…」

「いやいや、ないって。それはないわ」

「残念」

 苦笑して茶を飲む。虹介は口元を綻ばしていた。

「大介も結婚したし、俺ももう思い残す事は俊亮しゅんすけと虹介の事だけだな」

「急に何だ?」

「色目は子が持てないからな、預かった子等が俺の子になるんだ」

「俺もそうなるな。どこかで拾う事になるんだろうか?」

「因果は巡る糸車、か。大介も子が出来ないから、どこかで拾う事になるのか?」

「え、何? 兄ちゃんに子が出来ないってマジ?」

 驚いている虹介を見た郡司が一瞥して額に手を当てた。

「いやぁ、まぁな。大介は祥介の弟の子で、祥介から離れているとは言え、産まれた時は二八にはちの含有量が極めて少なくて虚弱体質だったんだよ」

 虹介は初耳の事を色々と言われて混乱した。左肘を座卓に突いて、その手で口を覆った。

「色々とあってクルーが育てていただろ? あれで含有量が増えて健康になったが、子が出来るまでに身体機能は回復していない筈だからな」

 虹介は郡司を上目遣いで見ているだけだった。しばらくしてようやく口を開く。

「それなら兄ちゃんも、どこかの子を預かって世話をするようになるかもなぁ。俺もどこかで拾うんだろうな……」

 郡司が微笑んだ。

「それは分からないぞ? 態々わざわざ探す事もないと思うが、成り行き任せで行けばいい」

 それから郡司は話してしまって極まりが悪かったのか、早々に帰って行った。

 虹介は事実を知ってしまったが思考が働かなかった。キュウは静かに寝ているようだ。行燈の火を落とし、目を閉じる。


 四日後に祥介が帰宅する。

「誰かと思ったら虹介か。おかえり。大きくなったか?」

 些か驚いた様子で縁側に荷物を置きながら言うと、居間から縁側へ出て来た虹介が笑顔になる。

「父さんもおかえり。少し大きくなったよ。悪いけど父さんの服を借りていたからな」

「そうか。服が必要なら持って行けばいい」

「クルーは?」

 膝を折って置かれた荷物を手にする。

「戻って来ている筈だがまだ到着していないな。途中で休憩していたから置いて来た」

「そうか。迎えに行って来ようか」

 何気なく言ったが、祥介が笑顔になった。

「おお、行ってやれ。喜ぶぞ」

「父さんに飯の支度をしたら行く」

「自分でやるから気にするな」

「まぁたまには。荷物は部屋へ持って行くぞ?」

「ああ、頼む」

 三年経っても変わりない父の姿を見られた虹介は心底嬉しかった。

 祥介の荷物を部屋へ移動し、洗濯物を出してそれを脱衣所にある籠へ入れに行く。そして台所へ向かい、多めに拵えておいた昼食の残りを温め直し始めた。拵えておいた焼きお握りは先にそのまま全部居間へ持って行き、すぐに台所へ戻って温まった味噌汁を装う。それから茄子の煮付けも深皿に装い、トマトと胡瓜の甘酢和えを小鉢に入れて盆に載せると運んだ。

 祥介は座卓よりも囲炉裏の側に座っていて、既に焼きお握りを頬張っている。

「お待たせ」

 盆を祥介の側に置く。

「あいあおう」

 盆を炉縁ろぶちに置き直した。

「旨いわ」

「空腹は最高の調味料だからな」

「素直にありがとうって言えよ」

「ありがとう。でも焼きお握りで言われてもなぁ……」

「あはは」

 温まっている茄子の煮付けを頬張る。

「うん、んまい」

 そう言うと焼きおにぎりを頬張った。

「茄子はすいちゃんが持って来てくれた」

「ほうか」

「すいちゃんじゃないよな? 兄ちゃんの味だよな?」

「ん、あーそういう事か。馴染みのある味なのにおかしいなと思った」

「すいちゃんは甘めなんだよ」

「そうだな。……夜はうどんを食いに行くか」

 小鉢を手にするとトマトを頬張って少し咀嚼し、すぐに胡瓜を放り込んだ。小気味良い音が鳴る。

「お、久し振りに行きたい。かがわな」

「うん。まぁ、かがわしかないからな」

 今度は先に胡瓜を頬張って音を鳴らしながら少し咀嚼し、すぐにトマトを放り込んだ。


 三日後、虹介は久し振りにくとさに乗り、くわいつと共に庚漆村を目指した。

 二日後には杉村家へ到着し、早速裏山で合掌をして挨拶を済ませてから家へ上がり込んだ。

 杉村に新しい弟子がいて、その弟子が杉村の面倒を見ている事を知った虹介は心底安堵した。そして、大介から預かった手紙を渡し、嬉し気に読んでいたのが印象出来だった。

 翌日は久し振りに杉村と村へ買い物に出掛けたり、隊舎へ遊びに行ったりした。相変わらず隊長に就いている赤井から、警備隊に入れと熱烈に勧誘されたが、それから逃げるように隊舎を後にした。

「虹介が庚漆で警備隊に入れば、わしの老後が安泰なのになぁ」

 不敵な笑みを浮かべて言われ、虹介は苦笑するだけだった。

 一週間滞在し、帰り際に日持ちする土産を買ってから帰路に就く。


 三日後の午前中に帰宅すると祥介が出掛ける寸前だった。

「あれ、出掛けるのか?」

「うん。砂漠へ仕事で行ってくるわ。速達が入った」

「二泊するのか?」

「クルーを連れて行くからそうする積りだ」

「分かった。気を付けてな」

「おう」

 祥介とクルーを見送って一人になり、やる事がなくて縁側で寝転がっていた。

 物音がして起き上がると英次がいた。

「英次」

 久し振りに見る英次は驚く程に大きくなっていた。背丈も三十センチメートルは大きくなっているような気がした程に伸びている。

「久し振り。元気にしていたか?」

「元気は元気だけど、英次は大きくなったなぁ!」

「それはお前もだろう?」

「まぁ上がれよ。茶を入れる」

「それより何か食わして」

「分かった。待っていてくれよ」

「うん、頼む」

 虹介は台所へ向かわず、自室へ向かった。それからすぐに戻って来て、居間で既に座っている英次に手を出す。その手を見て虹介を見上げて受け取った。

「何?」

「奥村さんだよ」

 手にあるのは小さな巾着だった。

「は?」

「奥村さんを看取ったからな」

「……いつ亡くなった?」

「あれから二年は持ったから、去年だな。数え間違えていなければ八月八日だ」

「そうか。ありがとう」

 声が震えている。

「英次にと思って小さい骨を取っておいた。それから小さな仏像が入っているからそれもな。先に渡しておくよ」

「本当にありがとう」

 やはり声が震えていて、虹介は黙って台所へ行ったが直ぐに戻って来た。

「何もないからうどんを食いに行こう」

「分かった」

 英次の声はもう震えていない。二人は徒歩でうどん屋へ向かった。

 虹介は英次に奥村を山へ連れて行くとしか手紙に書いていなかった。それもあって、帰宅後に英次が奥村を山へ連れて行った理由を訊いて来たが、虹介は話さなかった。

 血の繋がった本当の兄弟が久し振りに枕を並べる。虹介はすぐに熟睡したが、英次は渡された巾着を見ていた。

 この日から英次宛ての手紙が届くまで滞在する事となる。


 祥介が帰宅すると、三人での生活が始まった。

 虹介はカルカル牧場以外の仕事を手伝う程度で他の仕事をせずにいたが、祥介は何も言わなかった。

「虹介は仕事をしないのか?」

 英次がそう何度も訊いていたが、虹介は「うん、今はしない」と頷いて言うだけだった。

「祥介さんはそれでいいんですか?」

「俺? 仕事がしたくなったらするだろう。山の生活がまだ抜け切っていないだろうから、抜けてからでいいと思っているな」

「そうですか」

 納得していなさ気な英次を見た祥介は苦笑した。

「山では狩りに集中をしていればいいが、こっちは違うからな。俺に甘えるのも近々止めるだろうから、その内に尻に火がつくだろう」

 泰然と言う祥介を見て、在りし日の奥村を重ねようとしたが重なる事はなかった。

(虹介もいい父親を持てたんだなぁ……。それぞれ違う人に拾われたけど、それで良かったのかもな)

 本当なら兄弟として育つ筈だった虹介との溝が埋まらない事に対しての葛藤が、英次の中でようやく消えた時だった。


 数日後、虹介が帰宅している事を聞き付けた志川が到着する。志川も成長していて大きくなっていた。

「お前ー! 俺に黙って峻剣山へ行きやがってー! それも二度!」

 蹴り掛かられたが当然躱し、咄嗟に首に手刀を食らわせた。

「いでっ!」

 気絶には至らず、虹介は驚いた。地面に叩き付けられた志川に手を貸して起こす。

「久し振り。元気だったか?」

「この通り元気だよ。お前……」

 眉を顰めていたが、ふと辺りを見回した。

「あれ? クロアオは?」

「群れに受け入れられたから置いて来た」

「ああ……、そうか……」

 今度は寂し気な顔をする。そして英次の姿を見付けると不機嫌な顔になった。

「奥村もいたのか!」

 そう叫んで鼻息を荒くし、虹介はこれだけで気疲れした。

「賑やかだと思ったら志川が来たのか」

 祥介が様子を見に来た。

「まぁ茶でも飲むか」

 四人は居間へ上がり、じゃんけんで負けた虹介が台所へ向かう。しばらくは賑やかな時間が続くだろう。

 戻ったキュウが青空の中を旋回しながら鳴いた。

2026年2月22日に書き終える

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