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02 開宴


 出られないと全員が理解してから数分、誰が言い出すともなく探索が始まった。そもそもここに来た理由ではあるし、建物の全貌を把握しないと何も始まらない。


 光の無いロビーの奥に、村重がエレベータを見つけた。ロビーを一通り探したが照明のスイッチは見つからない。

 

「どうせならちょっと探検しようよ。こんなこわぁいところそうそうないよ」


 断る理由などそこにはなかった。6人がエレベータに詰め込まれ、扉がゆっくりと閉まる。不審に思った森田が口を開く。


「こいつは動くんだな。ドアはあかなかったのによ」


「その辺も、調べてかないと。なんでまだ電気が通ってるんだろ?」


 ごん。上昇していた箱が急に静止した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「部屋の鍵は…さすがに開いてないか」


 先ほどまで静かにしていた古村のポケットで金属がじゃれあう音がした。


 「あたし、さっき見つけたよ。鍵」


 マスターキーだ。いくつかの鍵が束になっている。スタッフルームなんかの鍵もあるのだろうか。


 かちゃん、と心地の良い解錠音が長い廊下を駆け抜けた。我先にと男たちが駆け込む。やはり心はいつまでも子供のままなのだろう。ベッドを確認した次の瞬間には脊髄反射で飛び込んでいた。


 長らく放置された埃のにおいがあたりに漂う。中岡が小振りなくしゃみをした。


 

 それからその階の客室をしらみつぶしに調べた。何を探すでもないまま、調査という建前を忘れて探検を楽しんでいた。


 夜が静かにやってきた。といっても明るさが変わったりということはなく、ただスマホの時計がそう言っているだけである。

 


 一度ロビーに全員が集まった。

 中村が仕切る。


「電波が悪すぎて電話で助けを呼ぶこともできない。また森田がぶち壊すのも危ない。だからここで一晩過ごそう」


 急に自分の名前が出たことに驚きつつ、森田が頷く。


「素手でやったらさすがに俺の拳がもたん」


「んで、食料を見つけた人はいる?」


 華麗な無視。


「202と205の棚の中に乾パンがあった。まだ食べられる」


「水はとりあえず手持ちので。もしかしたら自販機の中にあるかも」


 


 会議はすんなり終わった。各自ポリポリと乾パンを喰らい、男たちは枕投げをしてから、一人一部屋を贅沢に使って就寝した。




 だが1人、目を開けている者がいた。何かを強く求めているようだ。


 

 ぐぎゅう。



 ドアノブに震える手が伸びる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 一階、食堂。

 だだっ広い空間に椅子とテーブルが几帳面に整列し、奥には異臭を放つ厨房が居を構える。



 2人、いる。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なんだよこんな遅くに。愛の告白かよ?」


 冗談めかして俺は言う。


 だが、なんだろう。

 

 雰囲気が違う。


 いつも朗らかな俺、龍太でも少し怖気づいちまう。


「なんか言ったらどうだよ…夢遊病か?」


 真っ暗な大部屋に二人きり。しかも向こうは何も喋りやしない。怖いに決まってる。


「おい……!?」


 手に…ナイフ?そんなわけない。でもそれにしか見えない。


 喧嘩なら負けない自信はある。


「やるのか?おい」


 


 ーーッ!

 

 腹が、熱い…?




 

 見えない。

 

 暗い。 


 

 俺は刺されたのか?






 何かいってる…?



「人……ってど…...味がす……?君は肉付…がいい…ら…、我慢で……かった」

 


 そうか、こいついかれてたんだ。



 あいつらも、やられちまう。



 

 ッッ!!!



 

 腕が…!!


 

 食われる…のか。




 痛い。



 

 



 寒い。

 



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 一日目、腹が満たされた。



 だが奴は、まだ渇いている。

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― 新着の感想 ―
やはり鬼才。
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