01 招待
ごごごご、と低い地鳴りのような音を立てながら、エレベータの扉が開く。目の前にはまっくらな廊下が終わりを告げずに走っていた。つぶれたホテルの廃ビルの最上階、6人の男女グループが赤いカーペットに足をのせた。
「電気のスイッチはどこにあんだ?エレベータは動いてるから電気は通ってるはずだ」
金髪中分けのいかにもチャラ男といったような男が、見た目にそぐわないまじめなことを言った。
「想一、やっぱこういうスイッチって一階にあるもんじゃないの?」
横にいた小柄な女性がいわんこっちゃない、とでも言いたげにぷすぷすしている。ボブカットのやわらかな黒髪を揺らし、想一と呼ばれた金髪を見上げる。
想一はむっとした顔をしながらも頬は少し赤らんでいる。彼らは恋人同士なのだろう。
「とりあえず部屋を決めよう。少なくとも一晩は過ごさないとだから」
この男は落ち着いている。見るからに温室育ちといった風貌で、小柄で童顔ながら統率力は高いようだ。
彼らは今、このホテルの調査をしている。このグループの一人、中岡春奈が大学の研究の地域調査の一環で廃屋の調査をするところに友人である村重菜津、古村游が同行。古村の恋人である金井想一が招集され、男一人はちょっと…ということで金井の古くからの友人である花村煌助と森田龍太も面白半分でへばりつく運びとなった。
つぶれたのはつい最近のことで、まだなぜか電気は通っており、そのあたりも含めて調べる必要があった。
ホテルの立地は極めて悪かった。街中から外れた郊外どころか「山奥」に片足を突っ込んでいるような場所に鎮座していた。車道の整備も不十分であり、すぐに廃れてしまうのも当然だ。
正面入り口に立った一行は、自動ドアという名前に反して微動だにしない板に阻まれた。
「どうすんのこれ…」
村重がゆっくりと口を開く。肋骨の下部ほどまで伸びた長い黒髪をなびかせた彼女は、見た目や口調、声のトーンからおとなしめの子とみなされることが多い。実際はそうでもないが。
突然ナイキのランニングシューズが先陣を切った。
「俺に任せろ。開ければいいんだろ?」
森田龍太だ。背筋がすんと伸びたがたいのいい青年である。近くで様子を伺っていた倒木が鷲掴みにされ、入り口のほうに構える。壊すつもりだろうか。
ふん、と龍太が力む声が聞こえた。次に彼らの耳はガラスが砕け散る耳障りな音によって貫かれた。
大きな風穴が出来上がった。龍太はどうだとばかりに倒木を放り出し、
「できたぜ、入り口。入れよ」
ちょっとカッコつけてみたりしている。
そんなことは気にも留めず彼らはぞろぞろとビルに入っていった。
最後のひとりが通り抜けた直後、轟音が響く。
壁が崩れた。出来立ての大穴を塞ぐように。
出られない、とその場にいた全員が直感する。
だが彼らの直感は少しばかり鈍かったようだ。
これから彼らの身に降りかかる地獄に、気づけなかったのだから。




