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アディマライド~英雄のツヅキ~  作者: 多神 久郎
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第三話 海を往く者たち

海へと出航するコウとアイリたち。

ついに明かされる目標。

そして遭遇する化物。


戦いの火蓋が切られようとしていた。

「うぐっ……」

 太陽はきつく照り付け、潮風は匂いがきつい。

そしてこの永遠にシーソーに乗っているような揺れ。

そしてオヤジの群れ。どれ一つとって好ましい材料などない。

そして今日幾度目かしれない魚達への御奉仕。

だが誰もそんな僕を気遣う事無く

「ほら右引っ張れー!」

 と声が掛かるたびによろよろと駆け寄り引っ張る。


ここで最悪だと思ったのが、ステータスの力が九十九という悲惨な現実。

こんなに頼りになるものを気持ち悪いからと言って

へばらせてるとかありえないと言わんばかりに使う。

くそう……確かマインドなんて項目は無かったな。

何で無いんだこの糞ゲー! ていうか最早ゲームじゃねーよ!

「よし! 元の位置へ戻せー!」


 畜生……早くどうにかなってくれ……

こんな状況続けられるくらいなら死んだ方がマシだ! 

半ベソを掻きながら右へ真ん中へ左へと動かす。

もしこれで仇の位置が判らず回遊してるとか言い出したら、

航海士を真っ先にこの銃の試し撃ちの的にしてやる。

ホント皆滅べば良い。

どいつもこいつも自然さえも僕を無視して勝手に決めて、押し込めて。

それで役に立つと思えば煽てて使ってやろうと、

今度は首輪を付けようとする。

何でこんな所まで来てこんな目に遭うのだろうか

……もう嫌だ……。


「少し右へ引っ張れー!」

 それでも僕はその少し右へ引っ張り帆を動かす。

何故相手の都合良く真面目が発動するのか。

……でも、もう考えられる最悪と罵倒を考えて吐きつくした。

こうなったらやるだけやってやる! 

もう完全に頭にきた! キレた!


「ふんぬおー!」

 ここまで何度もやらされたことで感覚は解った。

真っ直ぐ進む為に、流されたら逆へと戻しているのだ。

今は右により過ぎたので精一杯の力で左に傾ける。

そして安定すると、棒立ちになる。

ボーッと今はもう憎らしいとも思わない太陽を見つめながら、

何だか段々面白く思えてきた。

もう吐くものは身にも心にも無い。


「はっ……りゃー!」

 僕は僕の感覚で思うまま帆を動かす。

「そろそろ交代だ!」

 あの武器を支給してくれたスキンヘッドのオヤジが肩を叩いてきた。

「いや、別に疲れてないから」

「良いから休めよ。まだ先は長い。ここで折られても困る。

それにまだ動いてないのも居るんだ。動かさせてやってくれ。

御前が役に立つ事は十分に解ったから」

「はぁ……」

 ボーっとしているのでそれ以上は拒否しなかった。

どの位の時間やっていたのかも解らない。

取り敢えず皆が認めてくれるくらいにはやれたらしい。

僕はどこか休む所を探しつつ揺れる甲板の上を平然と歩いた。

慣れて来てバランスが巧く取れるようになった。

「おい、甲板じゃなくて船員室使って休め!」

「ありがと」

 顔はよく見てないが、手を立てたのでハイタッチして

声を掛けてくれた人の脇を通る。

そして中に入ると、転がるように端っこにへたり込む。


大分慣れたとは言えしんどいのは変わらない。

流石海の男って凄いよな筋力あるはずだよ。

職が無かったら漁師にでもなるなんて御笑い種だ。

ステータス補正が無きゃ今頃死んでる。引篭もりって凄いよな。

何もしなくても生きているんだ。

他でこんな目にあってる人の横で。

まぁ彼らはそんな事思って無いだろう。

誇りを持ってやってるから負けない気持ちが出来るんだ。

僕にはそれが無いから……。そう思うと自然と涙が出た。


「だ、大丈夫?」

 その高い声に視線を向けると、長い金髪を襟足の所で縛って

似合わない銀の鎧を着ている人が居た。

眼鏡がずれていたので、涙を一回拭いて眼鏡を掛けなおして改めて見ると、

それはアイリだった。

「ああ、うん」

 最初に会った時とは違う、少女の様な顔をしているアイリ。

のような、は失礼か。

少女だし。僕は伸ばしていた足を引っ込めて胡坐を掻き、

壁の隅に尻を動かし移動する。

「どうぞ」

「うん」

 僕はてっきり甲板に出たいのかと思って、

邪魔だろうと考えて足を退かした。

だがそうでは無いらしい。何だか横にちょこんと座った。

その様があまりにも可愛らしくて、

さっき啖呵を切った人物ととても同じには見えなくて。


「そういえば、目的を話してなかったわね」

 暫く沈黙した後、彼女はそう口を開いた。

僕は目を合わせるが、アイリは直ぐ目を逸らす。

首を傾げながら、次の言葉を待つ。

「アタシのね、お父さん……初代アイリカンパニー社長がね、

丁度一ヶ月前この辺りで船と一緒に消息を絶ったの」

 僕はその横顔を見つめる。跡を継いだだけってそう言う事なのか。

でも申し訳ない話、僕は家族がある日居なくなった所で、

お金さえあればどうでも良いと思っている。彼女にとってそれは

とても悲しいことなのだろうと想像するくらいしか出来ないが。


「この辺りには昔からエクラノプランっていう化物が居て、

逃げ延びた船員の一人がそれにお父さん達が飲まれるのを見たって」

 この時僕は彼女の顔を改めて見て可愛いと思ってしまった。

ていうかそう言う場合じゃない。

エクラノプランってソ連で開発された地面効果翼機の事だろうか……。

でもあれは水面擦れ擦れを飛ぶ飛行機で

海の生き物じゃないと思うんだけど。

「カスピ海の怪物か……」

 そう言う事か……船を飲み込む化物とエクラノプランが一致しないけど、

開発者はそこから名前を取って付けたんだろう。

正面から見ると翼が無い輸送機に見える……まさか。

「アイリ、その化物って胴体見えたっていってた?」

「え? う、ううん。大きな風が吹いたと思ったら急に大きな顔が現れて、

船を飲み込んだって」

「やばい!」

 僕はふらつく体をなんとか踏ん張り外に出る。


だが時既に遅し。


仇を目視した。


一か八か!

「いけっ!」

 大きな筒を化物に向けて構える。

そして撃鉄を起して引き金を引いた。

ズドンという音と共に肩に凄まじい衝撃がくる。

これステータス筋力上げてなかったら確実に腕が吹っ飛んでるぞ! 

僕は苦虫を噛み潰した表情で銃をみたが、直ぐに撃鉄を起す。

そして正面を見ると、エクラノプランは迂回していた。

このまま海の中に入ったりしないでくれよと願いながら、

水面に一番近い部分を狙って引き金を引く。

だが二発目も避けられる。

それでも牽制になるならそれで良い。


 こうして僕とアイリたちと未知の怪物との死闘が幕を開けた。

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