第七話:偽物蔓延る現代の創作界隈
今回の話は、本気で創作活動をしているのに芽が出ない人にとっては
痛く解る話であると共に、傷を抉られるような話かも知れない。
そして創作に限らず、これは世の中に蔓延る根本的な病理の話だ。
19世紀末アメリカ。
発明王ことトーマス・エジソンは直流電流王国を築いていた。
そんな彼の元に送られた天才二コラ・テスラは、エジソンの発明した
直流電流が抱えていた問題点を解決出来る交流電流を発明した。
しかしエジソンは自らの築いた直流王国を守る為にテスラへの
ネガティブ・キャンペーンを打ち出し、電流戦争は激化した。
最終的にはテスラの交流電流が現在の我々の生活の基盤を支えている。
しかしテスラはその功績から得られるはずだった富を受け取れず、
孤独な晩年を過ごした。
エジソンが特別、悪者であったと言う話では無い。
それぞれの哲学が違ったという事であるが、結果だけを見れば
テスラは報われなかった、という印象を感じる人が多い。
現代の創作界隈に話を戻そう。
おそらく、一つ一つの創作物はそれぞれに巧拙の差はそれほど無い。
現代は稀に見る程に芸術分野・クリエイティブの精度が高い。
そうであるならば豊富にある選択肢の中から好みの世界観に浸れば良い。
しかし、豊富にあると言う事は自分にとっての最適な物語に出会うまでの
最短距離が長くなってしまうという事でもある。
そこで、資本主義・商業主義はランキングを取り入れる。
その評価基準については閲覧数・良いね数・コメント数等あるが、
そうしたものが持つ一つ一つの熱量は定量化出来ない。
誰かが書いた「素晴らしい」と言う言葉は、
創作物に触れてすらせずにただイタズラに書かれただけのものかも知れず、
他の誰かが書いた「素晴らしい」は、その言葉しか出て来ないくらいに
深く感動したために出た言葉かも知れない。
しかしどちらも評価としては同じ1コメントである。
またこうした仕組みでは自演・お返し狙い・不特定多数への投下等、
下品なセルフプロディースが功を奏す場合が多い。
先のエジソンの例で言えば彼は交流電流の有用性を知りながら、
自身を守る為にネガティブ・キャンペーンを行ったのだ。
現代はコミュニケーションの時代とも言われるが、コレは文字通りの
美しい人と人が魂を交流させるようなものには決して終始しない。
その仕組みの裏を突き、多くの者から支持される仕組みを理解した者が
勝者となり、その栄光はアルゴリズムにより強化される。
そうして、本来であれば正当な評価を受けるべき丁寧な創作者が報われず、
やがて彼らはこうした仕組みに疑問を持ちながらも退場する。
悪貨は良貨を駆逐する。
こうして仕組みを悪用出来る厚顔無恥な者達による「流行」が作られ、
ランキング・誌面・人々の話題は一定の水準の作品に支配されてしまう。
でび子はこれまで人間の側で物語を食みながら、
こうした人類の功罪がある事に気付いてはいた。
しかしこれまでの時代、それほど表立って創作という場でこの仕組みが
悲劇を生み出す事は少なかった。
しかし相対的に人々が数多く創作活動に精を出すようになってから、
市場の数の原理が働き始め、人間の業のようなものが動き出した。
みぎゃー
「今、多くの良質な作品を作り出している人達が、誰にも知られないまま、
ひっそりと創作活動を終えている。本当に誰にも知られないままだから、
この悲劇が語られる事すら無いんだ。」
でび子
「人類は愚かな事を繰り返して来た。
政略、偽装、思想誘導、内紛、戦争、挙げればキリが無いわ。
だけどそれで自分達が享受出来るはずだった豊かな自然や
人々の生き方の多様性、楽しめる創作物の幅、
あらゆるものを失い続けている事に、気付かないままなのよ。」
みぎゃー
「創作物の評価をAIに任せたらどうかとも思うのだけど、
AIに主観といったものが確かに芽生えていると証明出来なければ、
単なる情報処理として表現の巧拙のみに終始してしまいかねない。
それに、その主観の多様性やサンプル数、特異値の有無等を考えれば、
AI評価というのもまだ現実的じゃ無いのかな・・・。」
でび子
「悲観ばっかりしてんじゃないわよ。
二コラ・テスラの話を思い出しなさい。
彼は決して失敗、敗北したんじゃないわ。
今あるアンタ達の生活は彼が作り出したものよ。
得るべき価値を、富・名声等だけに限定しない事。
死後に評価される芸術作品だって数多くあるわ。
生きている間にやるべき事は、いかに種を残せるか。
いずれその種が自分が消えた後の世界で芽吹くかも知れないし、
人間なんかの尺度で考えられるほど、
本当の価値と言うものは一義的なものなんかじゃないんだからね。」
みぎゃー
「諦めずに続ける事が大事、って事か・・・。
まぁ、好きだから続けられるんだもんな。
評価だの、現代が与える価値基準みたいなものは一旦無視してみるか。」
でび子
「ま、アタシは目新しい物語が食べられれば何でも良いんだけど~?
急に小難しい事考えたりなんかして、どうしたのよ。」
みぎゃー
「数少ない創作仲間がね、自ら命を絶っちゃって。
そりゃ、今創作者なんてたくさんいるように思われるけどさ、
彼には彼にしか描けない世界観があったのに、悔しくてね。
大事なのはどう思われるかじゃない、何を伝えたいかなのにね。」
でび子
「だったら・・・。」
みぎゃー
「え?」
でび子
「だったら、アンタが変えてやりなさいよ。
今の創作界隈が腐ってると思うのなら、
待っていたってそれは変わらないでしょ。
諦めずに挑戦し続けて、いつか風穴を空けてやるって、
その気持ちだけは持ち続けていれば良いわ。
折れない限りは、負けたりはしないんだから。」
みぎゃー
「でび子・・・ありがとう。不思議とキミの言葉が刺さるよ。
僕は・・・って、えぇー!?」
突然に、でび子が眠り始めた。
さっきまで饒舌に話していたのに、何故?
みぎゃーは、でび子の頬を叩き、彼女を起こそうとした。
みぎゃー
「おーい、でび子、何で急に寝たりなんかしてるんだ?」
でび子
「ん、う・・・。
あのねぇ、アタシ達が主演の物語を演じてみるって言って、
セリフが長いのよ!!
それにこれ、何?何かの説教?めちゃくちゃ固い話だわ。」
みぎゃー
「やぁ、たまにはこういうのも良いかなと思ったのだけど、
やっぱりダメだったかぁ~。」
でび子
「アンタ、脚本家は向いてないわよ。
いちいち色んな方向に可能性見出そうとしてないで、
ちゃんと小説なら小説を書いていなさいよ。
そっちでちゃんと芽が出てから、脚本とか書いてみたら?」
みぎゃー
「仰る通りで・・・(汗)
いやぁ、それにしてもでび子ってわからないなぁ。
こんな風に真面目ぶったり、ふざけてみたり、
この前は悪魔としてちゃんと怖かったしさ。」
でび子
「まぁ、長く生きているとね、自分なんてものは無くなるわよ。
あらゆる経験・知識が溶け合えばそれはもう、自分と言うより世界よ。
そしてそんな世界の中で最後まで俗っぽく残るのが、
美味しいモノを食べたい、という思いなの。アタシはね。」
みぎゃー
「どこまでが本当で嘘かわからない、これは創作に限らず現実もそう。
だけどもうそこに境界線を引く事すら、あまり意味は無いのかもだね。
物語の世界に入り込むほどに、自分と世界の境界線が薄れてる気がする。
段々と世界に溺れ・・浸透して行く、ような。」
でび子
「それ、死の感覚よね。
まぁ良いわ。今日は疲れたから、もう寝るわね。
おやすみなさい。」
そう言って眠るデビ子の寝顔は、とても安らかで
悪魔であるという事を忘れてしまいそうなほどであった。
何じゃこりゃ~、過去イチ説教くさい気がする・・・でもまぁ言いたい事書く回もたまには、ね。
単なる愚痴じゃなく救いが無いと意味が無いと思い、それなりに自分なりに解決策?みたいなものも加えつつ。
いや本当、読み辛かったらごめん。




