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第六話:創造の原点

「ねぇ、アンタ。創造の原点ってどこから来ると思う?」


突然、とんでもなく哲学的な問いをデビ子から訊かれた。


「えっと、これまでの自分の経験や閃き、かな?」


「そうね、確かに経験した事はより詳細に書けるわ。

 そのもう一つの閃きについては、どうして閃くのかしら?」


何とも答え辛い質問だ。

閃くものは閃くのだから、それで良いんじゃないか?と思った。


「それがわかれば、物語を作る上で有利でしょう?」


それは確かにそうだ。

閃く時と閃かない時というのは確かにある。

それが売れるアイデアであるかどうかに関わらず、

自分の中の絶対値として素晴らしいアイデアというのは時に湧いて来る。

しかしそれがどのようなメカニズムでそうなるかは、知らない。


「デビ子、知ってるのか?閃きの正体を。」


「さぁね。知りたければ、それを教えて貰う物語でも書けば?」


いや、そんな事をしたって結局は僕の知識の中でしか書けない。

つまり、登場するキャラクターは僕以上にはならない。


ん・・・待てよ、本当にそうか?

例えば薬草学に詳しいキャラクターを書く上では、

薬草学に関して多少調べたりする。

と言う事は、物語の中で役割を持たせた相手に対して真摯であるほどに

そのキャラクターは輪郭を増す事になる。

だけどそれは結局の所、僕が学習を深めたと言うだけの事だ。


だけど、確かに時々ある。

知らない知識は喋らせられないけれど、

これは本当に自分が書いたのだろうかと言うような、

達観していたり真理を突いたようなセリフが。


「何で、閃くんだろう・・・。」


「だから、それを訊きに行くような物語を作りなさいよ。」


何だか、AIに質問をする為のプロンプトを考える作業みたいだ。

だけどこの考える時間は嫌いじゃない、いや好きだ。


『閃き仙人に閃きの源泉の教えを請いに行く修行者の物語』にしよう。


「何者よ、その閃き仙人って・・・。

 まぁ良いわ、それじゃあその物語、食べてあげるわ。」


そう言ってデビ子は、僕のおでこを齧った。

「今回は脳ごとハッキングしてあげる」の表れらしい。


いやいやいやいや、痛いしそこは齧る所じゃないだろーー!!!!


すぐにヒリヒリとした痛みと血が流れ、僕は意識を失った。




「フォフォフォ、ワシが閃き仙人じゃが、何か用か?」


何とも都合よく、早速仙人の方から登場だ。

とは言え別に仙人を探すまでの物語は不要なので、これで良い。


「仙人様。閃きって、一体何故生まれるんですか?」


僕は単刀直入に訊いた。


「ふむ、本質的かつ深い問いじゃな。

 辞書の通りを答えるよりも、その裏にある真実を語らねばなるまい。」


そう言うと仙人はスッとこの場を立ち、スタスタと歩き出した。

どこか別の場所で真実を伝えると言う事だろう。


僕とデビ子はそれに付いて行く。

すると、


「コラ、付いて来るでない!!」

と怒られた。


何故だろう。

真実を伝えると言うから別室に行くのだろうと思ったが、

付いて来てはいけない?コレは何かの禅問答だろうか?


それでも歩き続ける仙人の後を、怒られてもなお付け回す。


再度、仙人は言った。


「だから、付いて来るでない!!」


そうは言われても、真実を知るには仙人に付いて行くしか無い。

僕とデビ子は更に後を付けた。


「だ~か~ら~」


仙人は我慢の限界と言うような様子で、僕らに言った。


「今からトイレ行くから、付いて来るなと言っているのじゃ!!」



なんと、仙人は僕達を別の部屋に連れて行くわけではなく、

単にトイレに行くだけだった。

それを見送り、数分後。仙人が戻って来た。


「ふぅ~、いっぱい出たわい。」


この人は普段あまり人と接しないからだろうか。

トイレの様子も人に伝えなければ気が済まないようだ。

正直、そんな事はどうでも良いのだが。


「仙人、閃きの源泉は一体どこからやって来るのですか?」


僕は辛抱たまらず、訊いてしまった。

さすがに溜め過ぎである、真実も尿意も。


「ふむ、それではここでは何じゃから、アチラへ行くぞ。

 付いて来るが良い。」


来た。コレを言われたら、付いて行って良いんだよな。


仙人に付いて数分歩くと、最初の部屋と同じような、

だけど左右が反転したような部屋に辿り着いた。


「仙人、ここは・・・?

 まさか、時間の流れや物理法則、あらゆるものが反対になった空間?」


仙人は応えた。


「いや、ちょうどさっきの部屋の正反対にあるから、

 全ての部屋の作りを逆に作っただけの部屋じゃよ。

 これからの時間、こちらの部屋の方が日当たりが良いからのぅ。」


”どうでも良すぎる!!!!!”

心の中で思わずツッコみの鬼が暴れ出した。

しかし仙人は部屋に置いてあった何日前のものかわからない茶を飲み、

ブッと屁をした後にこう語った。


「実は閃きはな、宇宙からの贈り物なのじゃよ。」


また、この仙人はさっきから冗談ばかりだ。

今回は真面目そうな顔をして、突飛な事をそれっぽく言う。


しかし、更に続ける。


「自動書記、と言うものがあるじゃろう。

 ある日突然、身体が動き出して作品を書き上げる。

 あれなどはその最たる例じゃが、あらゆる閃きの裏側には、

 目に見えぬ存在達の力が働いておる。本当じゃぞ。

 そもそも、それ以外のあらゆる科学で説明が付かぬ事があるじゃろ。

 知りもせぬ知識をスラスラと書いた者もおるし、

 書かれたアイデアが世界の大発明になった事もある。

 『物語』に限らず、あらゆる閃きは宇宙が裏にある。」


何だか、そう言ってしまえば全てがそうであると結論付けられる。

反証しようの無い、ズルい教えだと思った。

だけどどこかでこの教えを否定出来ない自分もいた。


少なくとも、僕の目の前にはデビ子と言う超常現象が存在している。

それならば、閃きが宇宙からと言うのもあながち間違いでは無い。

そんな風に思えてしまったのだ。


「全ての事物は、必要な時にちゃんと動くように出来ておる。

 その時代、その地域に必要なタイミングで、気付きが訪れる。

 やがてそれは閃きへと形を変えて、世に影響を与える。

 大事な事は、決して偶然や個人の力では無い、という事じゃ。」


言っている事が、わかる気がする。

僕も一度、不思議な閃きを得た事があったからだ。

ある事件の数日前、それと全く同じような内容の小説を書いた。

事件が起きた後、怖すぎて誰にも見せられなかった。

だけど今思えばあれは、何らかの存在が僕に伝えたかったんだ。

それを世に知らしめるチャンスを得ていたのかも知れないと思えた。

僕は言った。


「つまり、そうした宇宙存在達からのメッセージに気付けるよう、

 しっかりとアンテナを張り、見逃さない事が大切、と言う事ですね?」


「うむ、その通りじゃ、ブッ。

 おっと、今の屁は、聞き逃しても良いぞ。」


「うわ、臭っ!

 こんなの、聞き逃せても嗅ぎ逃せないですよ、本当に臭っ!!」


その瞬間、僕は現実世界へと戻された。


━━━


「お疲れ様。

 最後のアレ、めちゃくちゃ臭かったわね。」


いまだに鼻腔に残る、油が腐ったような匂い。

あの仙人、一体何を食べたらあんな屁が出せるんだ。

と言うより、匂いの衝撃がインパクト強過ぎて、

聞いた内容を忘れそうになっていた。


「閃きはいつも、宇宙的な何らかの存在達からのメッセージ、

 だったっけ?」


僕はデビ子に確認した。


「うん、それで合ってるよ。

 ってかアンタ、最後のアレを引きずり過ぎでしょ。

 もっと冷静に対処しなさい。忘れたら意味無いじゃない。」


きっと宇宙は僕達に様々な閃きの種を送ってくれている。

だけど毎日の忙しさで、ちょっとした変化には気にも留めず、

強烈な刺激によりすぐに注意は逸れてしまう。

これからは目に見えるもの、聞こえるもの、におい。

全てを丁寧に感じようと思う。

ただし、屁のにおいだけはそのリストから外そう。

閃き仙人、今回限りの使い捨てキャラで勿体なく無い?と思う人は、是非フォローお願いします!

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