第四十八話:黒みぎゃーVSでび子
僕の初連載作品『T霊界探偵事務所』の中で、
僕の悪の心から生み出された黒みぎゃーと言う存在。
それは主人公側で最強だったみぎゃ子の霊力12800を優に超えて
15万と言う圧倒的な霊力でみぎゃ子達を蹂躙した闇の存在。
更には回復の力を持ったユキちゃんの能力を取り込んだ事で
無限再生の力を得てしまい手の付けようが無くなった所を、
霊力8と言う最弱の僕が自らの中に眠る∞(無限)の力で対抗し
それを自身の中に再び封じ込めたのだった。
あくまでそれは物語の中の話、そう思っていた所、
ここ最近の闇堕ちしそうな生活の中で黒みぎゃーが具現化した。
黒みぎゃーが僕に言った。
『お前の中には圧倒的な闇が存在する。
それはお前自身も物語として描き出した事で知っていただろう。
今回、閾値を超えてしまった事でここに顕現した。
礼を言うぞ、お前の魂の闇堕ちが私をここに現した。
後はもう、好き放題にこの世界を食いつぶしてやろうぞ。』
黒みぎゃーの存在は本当に圧倒的なものだ。
僕はこれほど恐ろしいものを自身の中に飼っていると言う事に
非常に無自覚だった。普段は全く何も感じないからだ。
しかしこうした闇堕ちの際には、深く魂の奥底に何か
恐ろしい獣のようなモノがいる事は薄ら感じていた。
僕はそれを物語と言う形で表現したが、本当に実在していたのだ。
でび子が黒みぎゃーを見て、すぐに臨戦態勢を取った。
「コレは…。アンタ、とっても厄介なモノを出したわね。
だけどこの世界はアタシのものなんだから、こんな怪物なんかに
簡単に渡してあげる気は無いんだから。やり合うわ。」
心強い限りだよ、でび子。もちろん勝てるんだよな?」
「知らないわよ、気に食わないから戦うだけよ。
ちなみにアタシの霊力は5万よ。これは高位の悪魔の数値なの。
アンタの中の闇堕ちとか、どうせ1万ちょっとくらいでしょ?」
「いや、それが…15万あるんだ、黒みぎゃーの霊力…。」
「…本当に?アンタ、どれだけとんでも無いモノを飼ってたのよ。
厄介ね、こんな所で本気を出す必要が出て来るなんて。」
そう言うとでび子は普段の少女の姿から大人びた頭身に変わり、
肌には悪魔の模様が深く浮かび上がった。
━ブゥゥン….━
「ふぅ…。本来の姿に近いからこちらの方が楽な筈なんだけどね、
人間界には瘴気が足りないから、ちょっと苦しいわね。」
どうやらでび子は本来の悪魔の姿に近付く程にこの世界では
暮らし辛くなるようだった。
「と、言うわけで、お前の力を頂くわよ、力の消耗が激しいのよ。」
そう言うと、でび子は黒みぎゃーに向けて手のひらを翳して、
霊力を吸い取ろうとした。
『フン、悪魔風情が私の力を吸えるなどと思うなよ。
コイツの中で潜む圧倒的な悪意が具現化した私は、
そこらの悪魔など相手にならぬ程に強いのだ。
その余裕ぶった表情が恐怖で強張るのを見届けてやろう。』
そう言うと、黒みぎゃーはでび子に向けて黒い光弾を放った。
━バチィッ!!━
それはでび子の脇腹を掠め、服を破り肌に傷を付けた。
「へぇ…中々やるようね。まさかコイツの中から、
こんなに強力な悪意が生まれるだなんて…生意気だわ。」
でび子はあくまで余裕の表情を崩さなかったが、一瞬、
焦りにも見える表情を浮かべたように思えた。
『フン、自分よりも強い存在に会った事の無いタイプか。
悪魔には有りがちだな、自分に都合の良い環境に暮らし、
より強くなろう等とも思わない。最初からの強さに浮かれ、
それ以上を求めない怠惰な貴様ららしい生き様だ。』
次に黒みぎゃーは、指から複数の指弾を放った。
━ドウ!ドウ!ドウ!ドウ!ドウ!━
それらの速度は非常に素早く、でび子は全てに被弾した。
「グッ…やるわね…。
だけど、それだけアタシを怒らせてるってわかった方が良いわよ。」
『ほぅ、怒れば何か奥の手でもあるのか?
あるのなら今の内に出しておかねば、死んでからでは出せぬぞ?』
客観的に見ていて、でび子は劣性だ。
黒みぎゃーの圧倒的な力、だけど今の僕には黒みぎゃーを再び封印出来る
奇跡的な力なんて出せそうにない。
『物語を喰らう悪魔、などと…そのようなものが大して強い筈が無い。
悪魔によくある、自分が唯一無二であると騙る手法だな。
我が宿主を誑かし、エサを強請っていたのか。
この浅ましい悪魔め。』
次の瞬間、黒みぎゃーは一気にでび子の懐に入り込み、
腹部に強烈な一撃を放った。
━ドゴォッ!!!!!!━
「ぐ・・・・はっ!!!!!!!!」
でび子が胃の中のモノを吐き出し倒れ込む。
骨が折れたのではないかという音も聞こえて来た。
「お、おい、でび子…大丈夫か?ここは一旦逃げても…」
「ハ?…逃げられるワケ、無いでしょう…アンタ馬鹿ね…。
ケンカ売った時点でもう逃げられないのよ、当然でしょ...。
どちらかが死ぬまでやる、それが強者の決闘よ。」
しかし、傍目にはどう見ても決着が着いている。
「無理だ、でび子…。もう奥の手も無いんだろう?
それに追い払うとかもう一度僕の中に封じるとかせずに
倒すなんて言ったらそれはもう相当な戦いになる…。
何の準備も無いままこんな不利な状況になって、
今から勝ち筋なんて見いだせないよ。とにかく逃げよう、
でび子が死んだら次は僕だぞ?その次はコイツはきっと…」
『フフ、まさか宿主以外の何ものかがいるなんてね。
外に出たらすぐにでも世界に絶望を蔓延させようと思っていたから
こんな思わぬチャチな邪魔が入るなんて思わなかったよ。
まぁでも、少しくらいは遊べたから良かったとしようか。』
「待ち…なさいよ。まだ終わってないでしょ。
アンタ、本当にアタシに勝った気でいるの?」
でび子はまだ強がりを言っているが、
傍目からどう見てももうでび子は満身創痍だ。
「止めとけって、でび子!
挑発するな、このままアイツが僕達に興味が失せるのを待つんだ。」
「フン、そんな事出来るワケ無いでしょ…。
高位の悪魔はアイツが言うような怠惰な存在じゃないわよ。
人間の貴族と同じ、それなりにプライドを持って生きてるの。
そしてそれはたとえ相手がどんな強さであっても駆らなず勝つ事よ。」
「いや、気持ちはわかるけど無理だ!
勝てるのなら勿体ぶらずに、奥の手を出してくれよ、でび子!!」
『ハハハ!そんな奥の手など無い事はソイツが自ら体現しているだろう!
悪魔のプライド?知らぬな。
プライドがあるのなら、まずはそのボロボロの体を何とかしてみろ!』
「・・・・・・・・。」
しかし、でび子はそれに応えなかった。
既に彼女の身体は限界を超えて、冷たくなっていた。
「でび….子?」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「でび、…子?おい、嘘だろ、さっきまで喋ってただろ、おい何で、
何でこんな突然なんだよ、おい嘘だろ、起きろよ、でび子!!
おい、起きろ!!起きて、そして僕を守り助けてくれよ!!
なぁでび子、起きろよ!!!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
でび子から返事が返る事は無かった。
「でび……..子……。」
『ククク、お前が心の底で期待していた【奇跡】は起きなかったな。
まぁ当然だ。そう都合よく奇跡が起きていればそれは奇跡では無い。
残念だが力の原理と言うのは原則に忠実なのだ。
そして貴様にはもう私を封じるだけの奇跡を起こす力も無い。
この悪魔が最後には何とかしてくれると、そう思っていたのか?
もしそうだとしたらとんでも無い他力本願だな。
そんな事だから、このような結末を生むのだ。
もっと自分で何とかするという経験を積むべきだったな。
まぁそれをした所で私に対しては何の意味も無いがな、ハッハッハ。』
「・・・・・・・・・・。」
僕は、何の返事も出来なかった。
ただ、冷たくなったでび子の身体を抱きしめて泣く事しか出来なかった。
何で、どうして突然こんな理不尽な事が起きるのか。
これは物語の中の世界?いや、現実だ。取り戻す事も出来ない。
僕は悲しみを通り越してもはや無感情になった。
しかしおそらくこれから5分も経たずに僕も殺されるのだろう。
今から死ねばせめて、でび子と同じ地獄へ還れるのだろうか。
その時、聞き慣れた声が聞こえて来た。
「みぎゃーさん、大丈夫ですか!?
タイムログに大きな変化が…って、わぁ!でび子さんが!?
なるほど、これは相当に大きな事件が起きていますね…。」
それは、暗部深夜子だった。
未だに目的のわからない、不思議の国の住人。
しかし深夜子は戦闘能力など無い。
どうせ無駄死にするだけなのに何故ここに来たのか。
僕は絶望の中で深夜子を睨みつけて、逃げるように促した。
しかし彼女は逃げる気は一切無いようだった。




