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物語を喰らう悪魔  作者: みぎゃー


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第四十七話:運命論

「ハァ、何でこんな毎日毎日、冴えない日々を暮らしているんだ。

 せめてもう少しだけでも、華があっても良いんじゃないか?」


僕は部屋の中で一人、自分の人生に愚痴を言っていた。

すると悪魔のでび子が答えた。


「あら、幸不幸は考え方次第って、もうこの時代には相当、

 半分常識みたいにして刷り込まれてないかしら?

 無いものにばかりフォーカスしたら足りないだらけだけど、

 命がある、住む場所がある、眠る体力がある、食べる口がある。

 更には少なくても貯金があったり、まだ若さがあったり。

 意外と目に見えていない当たり前の中に『ある』ものよ。」


「いや、それは確かによく言うけどさ…。

 だけどやっぱり周りと比較した時に、自分の運命を呪いたくなるくらい

 足りていないと思う事は誰だってあるんじゃないかな…。」


「まぁ、そりゃ誰だってあるわよね。

 アンタ運命論は知ってるかしら?人間の人生の運命は先に決まっていて

 途中でどれだけ足掻いて努力しても変えられないって言うアレよ。」


「あぁ、知ってるよ…。一時期、それに囚われすぎて逆にもう

 何をしたって無駄なんだから何もしないでいようって思ったよ。」


「まぁ、行き過ぎるって言うか解釈次第ではそうなるわよね。

 でもね、コレは全てアンタが先に決めて来た人生だとしたらどう?」


「何だよそれ、こんな人生を僕が決めて来た?

 望んでも無いよ、こんな中途半端な人生…。どうせ不幸なら、

 もっとドラマチックな悲劇のヒーローを気取れるくらいに不幸な

 そんな劇的な人生を歩みたかったよ。」


「今世と言うか、今のアンタの意識が決めたワケじゃないわよ。

 もっと広い視野と経験と全てを持っている完全なアンタが

 生まれて来る前に人生のシナリオを決めて来たって言う話よ。」


「あー、何かそれっぽい話を聞いた事があるような…。

 確か、ハイヤーセルフだったっけ?守護霊と言うか…。」


「まぁ、呼び方は時代や文化によって色々とあるけどね、

 今のアンタがあるのはアンタだけじゃないのよ。

 もちろん物理的な血の繋がりとして親や先祖がいるけれど、

 それを超えて魂的な繋がりのある存在だっているのよ。」


「スピリチュアルな話だよな。嫌いじゃない、むしろ好きだけど、

 だったら僕の今世のテーマって何なのか、知りたいよ。

 こんな中途半端な人生を設計した僕の守護霊様は、

 一体何を考えてそうしたのか…。」


「んー、別に今のアンタと切り離した存在では無いのだけど…、

 まぁ良いわ。一度会って、話でも聞いてみる?」


「良いのか?確かこの世の中に生まれて来る時に、

 魂の世界での記憶を全部消してから来ているから、

 答え合わせにならないようにわざと思い出さないよう、

 会えないようになっているんじゃなかったか?」


「あら、詳しいのね。まぁ、これから見せるのはあくまで夢よ。

 だから、それが本物なのか単なる幻なのか、それを決めるのは

 あくまでアンタ次第なの。でも興味はあるでしょ?」


「あぁ、是非とも一度、僕のハイヤーセルフに会いたいな。」


「ふふ、特別だからね。ちなみにアンタ、自分のハイヤーセルフについて

 どういう感じか想像した事はあるのかしら?」


「んー、短髪でボーイッシュで、スパッツを履いていて常にちょっと

 蒸れてて、それがたまらなくエッチな感じの美少女、かな。」


「・・・・・・・・・・・・・・。

 うわぁ、アンタ、性癖をそこまで全開にするとさすがに引くわ。

 ドン引きよ。」


「え、いやだって、僕の本体みたいなモンなんだろ?

 だったら、もう僕の思った通りの存在で良いじゃないか。」


「まぁ、そもそも決まった定型は無いからそんな風になれない事も

 無いのだけれど、多分アンタの前に姿を現す時にはそんな感じの

 欲望煩悩塗れの感じじゃないと思うわよ。」


「何でも良いから、早く合わせてくれよ。」


「・・・何かアンタ、やっぱり期待してない?

 まぁ良いわ、その期待ごと、悉く崩してあげるわ。」


そう言うとでび子は手から黒いエネルギーの塊を出すと、

それを空間全体に向けて放り投げた。


━パァン!!━


と、それが弾けた音がすると、一気に空間の景色が変わった。

宇宙のような雰囲気の中に…僕のハイヤーセルフが現れた。


残念ながら、僕の想像した雰囲気では無かった。

メガネをかけた知的な雰囲気の女性、しかも巨乳。

アリかナシかで言えば行けるけど、別に好みじゃない。

そんな感じの雰囲気の女性だった。


『アラ、この姿じゃ不満かしら?

 ふふ、そうよね。だって無駄な欲情をさせないために

 あえてこうした格好をしたんだもの。

 初めまして、アチラの世界で生きる私。』


「あ、ども…その、失礼な事を考えてしまいすみません。」


『別に構わないわ。だって貴方は私自身なのですもの。』


そんな僕達のやり取りを見て、でび子が茶々を入れる。


「あら、良かったわね、女の人で。

 これでもしヒゲ面マッチョの男だったら、アンタ気を失ってたわよ。」


別にそれほど失礼な事はさすがにしないと思う。

だけど確かに、マッチョ男だったら…残念だったとは思う。


『姿については文句ないでしょう?

 今の貴方を女性化した場合を少し色を付けて再現したのだけど

 自己評価はもっと魅力的なはず、かしら?(笑)』


「あ、いや、そういうワケでは…。

 まぁ、見た目はとにかくとして、あの、僕の人生の意味、意義、

 何のために、何をして生きるのか、答えじゃなくても、せめて

 ヒントがあれば生き易いと思っていて…。」


『ふふ、そうだね。それは皆が思う事だよね。

 何の為に頼んでもいない現実世界に生まれたのか、

 全てが偶然だとするならせめて、何故他人のあの人じゃ無いのか、

 何故自分に生まれたのか、って思うよね。』


「そう、まさにそれです。

 僕にしか出来ない事なんて、こんな何も成し得ていない自分が

 世の中に何か意味があるなんて思えなくて…。」


『それぞれの個には必ず必然的な意味があるよ。

 だけどそれは漫画の主人公みたいな、一人で世界を丸ごと救うみたいな

 この力を超えたヒロイックなものじゃない、残念ながらね。

 だけどまぁ影響力の大小はあるけれど…。

 例えば今をときめくインフルエンサーなんて、キラキラして見える。

 だけど彼らが1000年後に名前を憶えられてはいないだろうね。』


「それはわかります。

 だけど、少なくとも僕のこの短い100年足らずの人生の中では、

 そうした羨ましいと思える他人がたくさん居て、その中で

 劣等感やプレッシャーに押しつぶされそうで…。」


『それでも、人間は生きて来たんだよ。いや、人間だけじゃない。

 あらゆる生き物、そして無機物達も、あらゆる魂がこれまで、

 本当に無数の個が全体に溶けて社会を世界を作って来た。』


「・・・。」


『意味を求めているから、あえて意味は【ある】と言ったけれど、

 本当は意味なんて無いんだよ。だってそれは貴方達の価値観だから。』


「・・・難しいです、正直。だけど何だか少しだけわかりました。

 つまりは自分の気持ちを超えて世界の摂理の中では全てが完璧で、

 何も心配する必要は無い、と。ただ自分を生きるだけで、

 生まれた役割は果たせていると、そういう事ですね。」


『まぁ、さすがは私と言った所かな、察しが良いね。

 答えはあげられないけれど、ヒントでさえもこんな概念的なもの。

 これで良いかな、答えられたかな?ふふ。』


「十分です。迷い悩む事も必要な事。無意味さえも意味であると。

 今日はそれが知れただけでも、とりあえず寝れそうです。」


『そうかい、また悩んだらここに来れば良い。

 貴方は私なのだから、常に戻って来ても良いのだからね。』


その瞬間、好みでは無かったはずの彼女が非常に魅力的に見えた。


「それじゃあ、また。さよなら。」


次の瞬間僕達は、いつもの自室へと戻っていた。


「ふぅ。何だかんだで案外、結構美人だったじゃない、アンタの魂。」


でび子は中立な目線に立って、そう言った。


「言われてみればまぁ、整っていたね。何より彼女は自分自身。

 僕と言う存在の裏付けがあるとわかっただけでも、

 これから先を生きるのに必要な心の栄養素を全て貰えたようだよ。」


「あら、それは連れて行った甲斐があるわね。

 さぁ、それじゃあまた何か、新しい物語を書いてくれるのかしら?」


部屋の外から夕日の光が部屋に差し込み、僕はその暖かくも厳しい光の中に

あのもう一人の自分がいた気がした。


挿絵(By みてみん)

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