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物語を喰らう悪魔  作者: みぎゃー


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第四十六話:テンプレ悪役令嬢を殴る

朝、起き出した僕は頭が混乱していた。


「あれ?

 確か僕は女体化して、それを解く為に研究所に向かってて…」


でび子がそれを軽くたしなめる。


「夢でも見てたんでしょ。

 大体女体化展開とか、ありきたり過ぎて平成通り越して昭和よ。」


「ま、まぁそうだよな…。

 今は令和、流行は転生モノとか悪役令嬢だよな?」


「それももう古いかも知れないけどね。

 二匹目のドジョウを狙った人達が似たような構造を突くのか、

 それともそうしたものが単純に好まれるのか。

 まぁ何にせよ、流行って一人の人がコレを流行らせましょう!

 みたいな単純な話じゃないからね。

 色んな複合的な要因が絡んで社会的な流れになってる。

 コレは人間の集合的無意識がその時代に適合して、

 自然に作られたものだとも言えるわね。

 まぁある程度の流れを読んでわざとそれに迎合してみたりだとか、

 明らかに意図的なものもあるけどね。」


「ふぅん、あまり興味無いな。

 皆が良いって言うものはそれなりに練られた設定だとか読み易さだとか

 まぁ舞台背景がシッカリしていたり?するんだと思うけどさ、

 読み始める理由が『流行ってるから』は何だか、ダサい気がするよな。」


「それも物語に出会う為の一つのキッカケだとは思うけどね。

 と言うより、多くの人はそうやって流行モノの中から選択を続けて

 気付けば自分が何を求めていたのかとかを子供時代に置き去りにするわ。

 言葉で言うほど簡単じゃ無いの、流行に流されないって言うのは。」


「ふぅん。

 じゃあ、転生してくる悪役令嬢達をひたすらに突き返す、

 って言う話はどうだろう。面白さって言うか、風刺みたいな感じで。」


「やってみれば良いんじゃないかしら?」


こうして僕は、冥界にやって来る悪役令嬢に転生する予定の魂達を

ただひたすらに追い返すという役割を担ってみる事にした。


~冥界にて~


『アラ、あなたが新人見習いのみぎゃーさんかしら?

 何でも、閻魔様曰く転生して来る魂を追い返したい、とか?』


冥界の受付案内人のような女性が僕に声をかけて来た。


「あぁ、はい。

 安易に流行に流されて人々を思考停止させるような流れに

 終止符を打ちたくてこの役割に志願したんです。」


『ハァ、そうですか。人間界の事はよくわかりませんが、

 まぁせいぜい頑張って下さいね。私は助けも邪魔もしませんから。』


何ともドライな反応だが、まぁ冥界ってこんな所なのか。


その時、ある一つの魂が転生先が決まったようで、

悪役令嬢の魂として生まれ変わってしまっていた。


『オーッホッホッホ、私は18世紀フランスの令嬢、

 アン123世ですわ。農民の男達を性奴隷にして、

 我が世の春を謳歌しますわ、オーッホッホホ!!』


とんでも無く面白く無さそうな、テンプレ悪役令嬢だ。

僕はそいつの元に行き、接触を試みた。


「おい、お前これから悪役令嬢として転生するのか?

 やめとけよ、ありきたり過ぎるだろ、そんな人生。」


『アラ、何を言っているのですか?

 ありきたりな人生、と言うのは農民とかの事を言うのよ。

 貴族令嬢なんて限られたほんの一握りしか居ない選ばれし者、

 全然ありきたりでも平凡でも無いわ。

 せっかくコレからの貴族人生を楽しもうとしているのに、

 邪魔しないで下さらないかしら?』


「あぁもう、そうするしか無い運命なんだもんな。

 じゃあ悪いけど、その転生キャンセルさせて貰うからな。」


そう言うと僕は悪役令嬢の魂を殴りつける。


「おりゃ!!」


単純に少し力を入れて悪役令嬢の魂を殴ると、向こうに吹っ飛んだ。


『キャア!!何をするんですの!?』


しかし後ろにあった岩盤に魂が衝突した途端、消滅した。


━スゥー。━


「消え…た。コレが魂の強制矯正力なのか、凄いな。

 しかし、あの悪役令嬢がやって来ない物語の世界は

 一体どんなものになってるんだろう。」


僕は悪役令嬢という主役を失った世界を覗いてみた。


本来であれば彼女が引っかき回す予定であった世界は、

ただ平和に回っていた。しかしそこには彼女が倒すべき、

ラスボスとしての敵国の国王が存在していた。


『全ての民は我の奴隷だ。働け、働け~!!』


いかにも、と言った感じのステレオタイプの敵キャラクターだ。

しかしその時、彼の圧政に立ち向かう男が現れた。


『やめろ、王様!オレが、このハーレム力を使って

 国中の魔法使いや戦士の女達をパーティーに招き入れる。

 そして冒険をしてお前を倒しに行くから、待っていろ!!』


これまた、以前に流行ったハーレムものの主人公だ。

つまりは、悪役令嬢の転生を防いだものの、この物語の世界には

今度はその抜けた穴を埋めるかの如く、テンプレ主人公が次々と

この物語の世界を進めようと生まれて来るのだ。

これがいわゆる運命力と言うやつなのだろうか。


僕は冥界を出て、自室へと戻った。


~自室にて~


「おかえり。どうだったかしら?悪役令嬢、消せたかしら?」


「あぁ、消したには消したんだけど…結局次はハーレム系の主役が

 なり代わって物語の主人公になっていたよ。」


「まぁ、そんなものよね。

 別に世界は特定の主人公を望んでいるわけじゃないのよ。

 ただ、存続する為にその舞台で暴れてくれる何者かを欲しているの。

 だから、世界ごと消さないと結局は似た役割の何者かが生まれるわ。」


「物語世界って、そんな構造になってるんだな。」


「まぁ、人間にはちょっと理解が難しいかも知れないけどね。

 概念世界がどんな風にして存続していて何を考えているのか。

 アンタ達はどうしても人間を主役として捉えがちだけど、

 世の中には物語の主体になり得る存在と言うのは無機物だってあるし

 空間や空気やあらゆる事象が物語の主役足り得るの。

 まぁ、ここら辺は話してもどうしようも無いからあえて何も言わない。」


「うん、そうだな。多分、話される途中で寝てしまいそうだよ。

 けどまぁ、本当あぁいうテンプレキャラクター達も本当は、

 もっと変わったステータスを持ったキャラクターになりたいのかもな。」


「与えられた設定で生きるしかないものね。

 アンタ達人間がこの現実世界でそうであるように、そのように生まれたら

 それ以外の生き方が出来ないようになってる。」


「中々どうして、人間って言うのも因果なものだな。」


「悪魔ほどじゃないわよ。」


こうして僕は流行テンプレ作品をディスるつもりで始めた行為が

いつの間にか物語の構造の話にまで発展していた。


人間もある意味で、物語と言う不思議な力に引き寄せられた者達が

自身の脳みそを介して書かされているだけの思考実験かも知れない。


そんな風にして世界を抽象的に理解していると途端に眠くなり、

僕はいつの間にか眠りに就いていた。


願うならせめてこの夢が幸せなハーレムものであれば良い。

しかしそんな僕の淡い期待を裏切るように、ホモマッチョに追われるという

地獄のような夢をたっぷりと1時間半見たのだった。


挿絵(By みてみん)

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