↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語を喰らう悪魔  作者: みぎゃー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/51

第四十話:存在しない記憶

「物語の人類に対する功罪を知っているかしら?」


突然、でび子が僕に意図の不明な質問を投げかけて来た。


「え、どういう事だ?作り話なのに人の時間を奪い、

 それにより生産性が落ちて社会の効率が悪くなるとか?」


「そんなワケのわからない穿った見方じゃないわよ。

 それに物語により創造性を刺激された人類は他の種族よりも

 高等?な知性を得ているのだから、それは間違いよ。

 物語の人類に対する功罪、それは存在しない記憶の誤認よ。」


「存在しない記憶の誤認?どういう事だよ、全くわからん。」


「記憶なんてそもそも曖昧なものでしょう。

 それを忘れない為に人は書き記し、残すわよね。

 だけどもしそこに書かれている事がそもそも間違いだったら。

 書き記す時点では真実だと誤認されていたものが後世になり、

 それが真実として受け継がれていく。」


「戦争等の争いの中で敵部族を滅ぼしてしまえば、

 勝者に都合の良い歴史だけが捏造される、みたいなアレか?」


「まぁそれも無くは無いのだけどね…本当はもっと厄介よ。

 そもそも人類は記憶を操作されているのだから。

 そして朧気であやふやな記憶というものを補完する為に

 物語、主だってその中でも史記や風土記等の記録があるわよね。」


「歴史とかで勉強するヤツか。まぁアレも確かにどこまでが本当か。」


「別に古いものに限らないわよ。人間は自分が体験経験する事なんて

 世界から見れば本当にちっぽけでしか無いわ。

 そこで存在していない自分の記憶を補完する為に物語を読むのよ。

 だけどそこに書かれている事の真偽は創作だからとかじゃなくて、

 作り手の記憶自体が書き換えられていればそれはもう偽書の類よね。」


「何が言いたいんだ?物語を信用するなって事か?」


「いいえ。物語は人の記憶の定着の上で大事な役割を果たしている。

 そしてその上で、存在しない記憶を作り出す事は容易だと言う事よ。」


「僕達が信じて来た歴史や過去というものが何者かによって操作されて

 それは記録に残された物語の中でも検証不可能なくらいに歪められた?」


「そうよ。あと、何者かという表現は適切では無いわ。

 そもそもこの作用に主体となる存在は居ないのだから。

 あるとすれば人類の集合無意識ね。それが未来と過去を選び取るの。」


「何だかSFチックな話だな…。つまりどういう事だ、確かなものは、」


「無い、わ。日々事実は切り替わっているし、それに気付かないまま、

 アンタ達は毎日を連続したものだと思って生きている。

 だって物語を読めば過去が記録してあるように思うから安心でしょ。」


「何だか…足元が揺らぐような話だな。

 何も確かなものが無いのなら、僕達はどうやって生きれば良いんだよ。」


「ただ、目の前を真実だと思って生きるのが一つね。

 あとは全てを疑う事。だけど実際にはその両輪で動くわよね。

 適度に信じて、適度に疑う。」


「まぁ、全てを信じるのもバカだし、全てを疑うのも疲れるからな。

 何かコレって実存主義みたいな哲学の話になってないか?」


「当たり前のように日々行われいる事に気付くだけの話よ。

 だけどここで話した事は明日になれば忘れて変わっているかもね。」


「先日の村でも似たような何かがあった気がするけど、思い出せないな。」


「記憶も、記録も、自分自身に確かなものなんて無いわ。

 だけどそうなると大切な事は何か。これはもう、今を楽しむ事よ。」


「あぁ、確かに今を楽しむ事は過去がどうだろうと出来るもんな。

 じゃあ、でび子にヨガをさせてその汗の香りを楽しむ事も可能か?」


「。。。アンタ、ぶっ殺すわよ?」


「あ、ごめん…。調子に乗りました。いやでもさ、本当に今を楽しむのって

 こうして生きる上では大切な事だよな、未来なんてわからないんだし。」


「そうでも無いけどね。現実創造や願望実現、仏教の仏典の世界観、

 あらゆる所から考えると、倫理的に生きる事が最も効率は良いけどね。」


「善く生きながら今を楽しむ、か…。何だか禅問答と言うか、

 単なる説法みたいな話になって来たな。」


「およそ、あらゆる話の終着点なんて収束するのよ。

 だけど悪くないでしょ。アタシだって悪魔として、

 アンタから搾取するだけじゃなくたまにはためになる話もするのよ。」


「でび子の話にはいつもお世話になってるよ。

 自分には無い新しい視点とかがあって、刺激にもなるし学びにもなる。」


「素直ね。まぁアンタはアタシに対してそんなに反抗して来ないものね。

 今までアタシが憑りついた人間の中には、ひたすらに反抗して来る

 思想家や哲学かも居たのよ。まぁそれはそれでコシがあったけどね。」


「憑りついたって(笑)お前、幽霊とかじゃないんだからさ。」


「あら、でも本当にそうよ?

 アタシ達悪魔はアンタ達人間の何かを糧に生きてる。

 そういう意味では対象を絞り何かを得ているという事は、

 憑りついてると言っても過言では無いわ。」


「なるほど、憑りつかれていたのか、僕は。」


「まぁ、こんな可愛い悪魔なら歓迎でしょ?

 最近ちょっと力を取り戻してセクシーな大人のお姉さんになるけど。」


「アレはアレで、ドMの人達からしたら罵って欲しいとか、

 需要あると思うぞ。」


「アンタねぇ...本当好きよね、ドM系の話。」


「まぁ、何か面白いからさ。ドMってさ、本当に優しくて良い人達だよ。」


「ハイハイ。アンタのドM愛は異常よね。

 でもまぁ、何かに対しての尖った感情と言うのは作品を作る上で大切ね。

 だけどその対象がドMって...アンタって本当にダサいわよね。」


「・・・ごめん。」


「別に謝る事じゃないわよ。

 それで、存在しない記憶についてだけど、アンタなら人類に対して

 どんな存在しない記憶を植え付けたいかしら?

 こうした妄想が創作の原点になったりするわよ。」


「人類は…愛の生き物だった、って言う記憶とか良いんじゃないかな。

 他者を犠牲にする人間が居なくなる、までは無くても、激減すると思う」


「まぁ、そうね。だけど残念ながらその類の性善説みたいな話はこれまで

 何万と擦られ続けて来たわ。それでも目覚めたのはほんの一部よ。

 つまりこれはね、存在しない記憶なんて都合の良いものでは無いのよ。

 ただ自然発生的に人々の集合意識が書き換わるだけだから…って、

 アタシ何を言ってるのかしら。物語でそうしたテーマを書く上では、

 ワクワクするような都合の良い話を書けば良いだけなのにね。」


「まぁ、リアリティも大事って事だよな…。

 そこら辺はちゃんとバランスを見ながら書くようにするよ。」


「そうね。間違っても都合の良い性的妄想には使わない事よ。」


「いや、何でだよ。別に性的消費コンテンツだって作品だろ。

 それに深く考えない消費コンテンツだからこそ、過激な設定が生きる。

 それほど悪い事じゃないように思うんだが。」


「…それはそうね。個人的な感情を前に出してしまったわ。

 ところで次の連載作品はまだなのかしら?

 アタシ、もうお腹はいっぱいだけどこれからは飢えでは無く

 趣味としての食事を嗜みたいのだけど。」


でび子はもう十分に腹を満たせた。

だからこれからは急いで物語を紡ぐ必要は無い。

だけどこの貪欲な悪魔は嗜好性の高い生き物だ。

次は趣味としての美食を楽しみたいらしい。

僕は結局の所、ずっとこの悪魔に搾取され続けるらしい。

でもまぁ、搾取ばかりでは無い。

たまにはスク水を着てくれたり、無防備な寝姿だったり、

結構僕に対して心の栄養を与えてくれている部分もある。


悪魔と共に住みながら生きると言うこの状況こそが

まるで都合の良い設定のようにも思えるが、良い事ばかりでは無い。

それでも置かれた状況や自分にとっての現実を楽しむ事。

これこそが生きる上での大切な心構えなのかも知れない。

そんな事を考えていると、でび子はこちらをチラッと見て、

チロッと舌を出して僕を挑発して来た。


僕はその後、ムラムラしてトイレで処理をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。