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物語を喰らう悪魔  作者: みぎゃー


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第三十六話:元通りには戻らない

「さぁて、コイツ(みぎゃー)の意識は今、どんな風なのかしら?

 何らかの象徴的な夢みたいな世界にいるのかしら。

 ドロドロに溶けてしまう時の絶望感、そしてその後の自我が無い中での

 奇跡にも近い復活劇。まぁコレをコイツは達成出来ないと思うわ。」


「どうして、これまで一緒に過ごして来て物語を食べさせてもらって、

 そこまで冷酷になれるんですか!?結局、悪魔だから、で終わりですか?

 ・・・私にはとてもそんな事出来ません。」


「ふふ、簡単に言ってしまえば、別に最初から何とも思ってないからよ。

 アンタみたいな人間は人間相手だと情が移るものねぇ。

 悪魔はそもそも人間と感情的な交流をしない。

 ただしより高等な生物…概念だからこそ、交流しているフリをする。

 コイツは途中までは随分とアタシに懐きかけていた。

 そこへアンタが来て、コイツの気持ちはアンタに傾いた。」


「その為に来ましたからね。

 単なる創作者と最古の悪魔とではあまりに力量が違い過ぎる。

 コチラ側は私が付いてもまだ不利なくらいですよ。」


「ふふ、おっと。そろそろ繭が動きを止め始めたわよ。

 これは繭の中でドロドロに溶け始めてるわね。」


「みぎゃーさん…どうか、生き返って。」


「15%に賭ける、か…。

 まぁあり得ない確率では無いからね。

 ただしアイツの意思の力と言うのは…アンタの汗の匂い?

 そんなもので本当に生き返る原動力になると思う?」


「だ、だって!私が提供出来るのはそれくらいで…」


「アタシはアイツに疑似性交を差し出したわよ。

 結局受け取らなかったけれど。それなのにアンタは

 汗の匂い?ふざけてんじゃないわよ。そんな中途半端な

 安全圏のフェチズムなんかで生き返るキッカケにはならないわよ。」


(どうしよう、本当に何だか、足りない気がして来た…。

 今更だけど、ゴム有りなら一回だけOkとかにしておけば良かったかな)


「まぁどちらにしても、もう後悔しても遅いわよ。

 後はアイツが0の境地から何をキッカケにして這い上がれるか。

 それはもうアンタがどうこう出来る問題じゃない。

 待ちましょう。生き返るのか、死か。」


こうして、でび子と深夜子はみぎゃーの羽化の成否を待つ為に

部屋の中で腰を落としてゆっくりと呼吸をし始めた。

静かな部屋に二人の息をする呼吸だけが聞こえる。

そして静寂の蛹は全く動きを見せず、30分が経過した。


「全然動かないわね。やっぱりもう、死ぬんじゃない?コイツ。」


「まだ、わかりませんよ…。明確に失敗と言えるまでは待ちましょう。

 蛹が黒ずんで来たら、羽化失敗と見て良いと思います…。」


それから更に30分が経過した。


「・・・もう無理なんじゃないかしら?さすがに。」


「みぎゃーさん…やっぱり、ダメだったんですか…。

 これだけ待っても動き一つ無いなんて…。

 残念だけど私達の負けですね…。

 でび子さん、この蛹を焼き払って下さい。

 もう見たくもありません。みぎゃーさんは….死にました。」


「ふふ、早く目の前から消したそうね。

 そんなに自分の罪を直視するのが怖いのかしら?

 だったら、アンタの手でコレを潰しなさいよ。

 ホラ、悪魔の鎌をあげるから、コレで一思いに切りなさい。」


でび子から鎌を渡されて、深夜子はそれで蛹を刈る事を強要される。


(うぅ...みぎゃーさん、ごめんなさい…まさか本当に失敗するなんて。)


深夜子は思い鎌を振り上げた。

そしてそれをコントロール出来ないまま、一気に振り下げる!!


その時、蛹がピクリと動いた。


「ヤバ…もう避け切れない!!」


その時、でび子が自らの身体を割り込ませた。


「ぐあっ!!さすがは悪魔の鎌…コレ、アタシにも効くのね…」


でび子は見事に鎌に切られ、体から大量の出血が始まる。


「ぐ・・・本当にただ振り下ろしたものに当たっただけなのに、

とんでもない威力ね…自分の武器ながら甘く見ていたわ…。」


でび子は、フゥッと意識が薄れた。しかし彼女は死ななかった。

ただ、大人になった姿が再び少女へと戻ったのだ。


「…フン。結局また元に戻っちゃったじゃないの。」


一方、蛹の方はその動きを強めて行った。

この強い意思の力の源泉には、深夜子の汗を嗅ぎたいという

大変にフェチズムに溢れた欲求があるに違い無かった。


「…コイツ、本当にまさか深夜子の汗の匂いを嗅ぐ為に

 羽化しようと0から意識を生み出せるなんてね。

 結局は変態が勝ち組って事なの?嫌よ、そんなの。」


しかし、でび子が望むと望まざるとに関わらず、蛹は激しく動き始めた。

そして徐々に蛹の硬化した殻がピリピリと亀裂が出来始めた。


「わ、…みぎゃーさん、羽化しちゃうんですか!?」


「マジなのね、まぁコレが結果なら、受け入れるわよ。」


中からは、蛹に入る前のみぎゃーと寸分違わぬ姿が現れた。

しかし、尻周りの黒ずみだけは綺麗になっていた。


「でび子、深夜子…。」


みぎゃーは感無量と言った格好で、二人を見て涙ぐんだ。


「さぁ、深夜子。早速僕の部屋に来て、ヨガをやってくれ。

 そして存分に汗の匂いを嗅がせて貰うよ。」


深夜子は観念してみぎゃーの部屋に向かった。

そしてそこで、通常よりも強度の強いヨガを行った。


当然、エアコンは切ってある。

深夜子は汗がダクダクと流れた。

流れた汗の上を再び次の汗が洗い流す。

こうして大量に発汗した深夜子からは強い汗の匂いが漂った。


「こ…コレで良いですか?

 さすがにこれ以上はもう出来ませんよ?」


「あ、あぁ…。

 深夜子の汗の匂い、滅茶苦茶股間に来るな…。

 正直たまらないから、処理して来るよ。」


みぎゃーはおくびにも出さずに、サラッとトイレへと向かった。

そしてそこで自らのリビドーを射出した。


「…ふぅ。深夜子の汗の匂い、たまらなさ過ぎだろ。

 あんなに可愛いクセに普通に汗臭いとか、神か?」


スッキリした面持ちで戻ったみぎゃーに、でび子が言う。


「まぁ、正直アンタなら生き返るかもって思ってたわよ。

 ただ、そんな事を言ってしまえば逆になるんじゃないかと思ってね。

 何せアタシ、悪魔だから。天邪鬼だからね(笑)」


「まぁ何にせよ、でび子が元に戻って良かったよ。

 でび子的には残念なんだろうけどさ、やっぱりでび子の力は

 僕達人間には抗い難い凄い強い力だよ。」


「ふん、当然じゃない。そもそも最古の悪魔のアタシが、

 単なる一介の一般人のアンタと交流してる事自体、

 ありがたく思いなさい。普通じゃないのよ、これは。」


「あぁ、そうだね。ありがとうね、でび子。」


「….何よ、調子狂うじゃない。」


こうして、でび子の成長に端を発する一連の事態はカタが付いた。

それから一夜が明けた。


「何だか結局、全てが元通りになっちゃったな。

 だけど何も無いのが一番かもな。」


「何言ってるのよ。物語的には『何かある』方が美味しいでしょ。

 それと、本当の意味での元通りじゃないでしょ。」


「どういう事だ?」


「だって、アタシは成長出来たと言う実績が出来たし、アンタはアタシが

 成長出来ると言う事を知った。それにその能力の一旦についてもアタシは

 それを実際に試してみる事が出来たし、アンタはそれを見る事が出来た。

 元通りなんてあり得ないのよ。常に何かは前進してるの。

 まぁコレはアンタ達が言う、時間が一方向に進んでるとした場合の話ね」


「そうだな。

 それに深夜子のヨガストレッチがめちゃくちゃ汗をかく事も知った。」


「ちょ、ちょっと!

 みぎゃーさんまだそれを言ってるんですか!?

 忘れて下さいよ、汗のイメージとか付いて欲しくないんですけど!?」


「いやでも、不快な匂いじゃないよ。

 むしろ股間にド直球のとてもボルテージが上がる匂いだ。」


「あの…、だからそういう言い方はやめて下さいってば…!!」


深夜子の表情がかなり真剣に話題の停止を求めている。


「次そんな事言ったら、また今回みたいな事があった時、

 助けてあげませんからね!」


「あ、ごめん深夜子…謝るよ。だから、たまにはヨガストレッチで

 汗を嗅がせてくれ~」


「も~、まだ言ってる!しばらくココには来ませんからね!!」


こうして元通りでは無いものの、また束の間の平和な日常に戻る事が出来、

僕はその有り難さを噛みしめるのだった。



挿絵(By みてみん)

汗だくでヨガストレッチを行う深夜子と見守る二人

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