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物語を喰らう悪魔  作者: みぎゃー


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第三十二話:自己満足は高尚な趣味

挿絵(By みてみん)

ヨガをする暗部深夜子



「ハァ、結局読んでもらえないんじゃ、単なる自己満足じゃないか…」


僕は自身の作品の伸びないPV数に頭を抱えていた。


「あら、別に良いじゃない。

 アンタ自身はそれで楽しめてるんでしょ?」


でび子があっけらかんと言った。


「まぁ、それなりにね。だけど作品として世に出す以上は、

 評価されてこそだろ?いっそ炎上するような過激な作品を書いて、

 悪評もまた評のうち、みたいな感じで捉えてみようかな。」


「そんな事する必要ないわよ。

 そもそも、他者と関わる事で他者に迷惑をかけてる人がどれだけいるか、

 アンタは知らないでしょうけどね、暇をしてすぐに寂しくなって

 外に誰か、何かを求めに行って、そこで他者に迷惑ばかりかけるなら

 自分一人で創作してそれで満足しているのは高尚とも言えるわよ。」


「どういう事だよ?

 大体、他者に迷惑って…世の中、そんなに迷惑かける人ばかりじゃない。

 お前の見方が穿ってるだけじゃないのか?」


「あら、そうかしら?細かな部分で言えば、用事も無いのに電車に乗ったり

 車に乗って外に出る。それによりエネルギーを無駄に使うし、混雑も。

 一つ一つは小さくても、自分で省エネで出来る事をしている事に比べたら

 少しの迷惑はかけてるわよ。別にそれがダメとは言わないけどね、

 同じ時間を使って自分を慰めるのなら、自己満足は省エネでね。」


「…そんな事言ったら、スポーツなんて激しく呼吸して二酸化炭素出して、

 自然環境に迷惑かけてるとか言いたいのか?」


「別に、多方面にケンカを売りたいわけじゃないわよ。

 ただ、自分で自分の機嫌を取るために作品を世に出して、

 そしてそれは書籍・ネット、どんな形であれ残り続ける。

 それはいつか人の目に留まるかも知れないでしょう?

 世の中に価値を生み出しているのよ、どんな内容であれね。」


「自己満足、か…。まぁ、ランキングとかで比較されれば敗者は出るし、

 そもそも一人でも読んでくれるだけでありがたいって事か…。」


「当たり前でしょ。特に今の時代は無限にあらゆる娯楽が溢れてる。

 昔のゲームを遊ぶ事も出来るし、最新のゲームもある。

 そこに来て、昔には無かったような遊び方もたくさんあるわ。

 音楽・配信ライブ・映画・スポーツ・車…。

 あらゆる自由時間の選択肢の中から選んで貰える事は本当に

 『有難い』と言う時代なのよ。」


「まぁ、それはわかるよ...。無料で遊べる方法もたくさんあるしな。」


「そう思えば、執筆、創作に対して後ろめたさなんて感じる必要は無いわ。

 先ずは自分の気持ちを整える事。そしてそれを誰かが目を通してくれれば

 それはとても有難い事。それで良いじゃない。稼ぐ事がそんなに大切?」


いや、そうじゃない。確かに夢としては創作で稼げればと思っても、

本当に求めているのはそれじゃないはずだ。

まだこの世の中に無い感情を、感動を、価値を創造したい。

大げさに言ってしまえばそんな気持ちから書いている。


「色んな登場人物を考えて、それらの関係性やエピソードを作って。

 楽しいじゃない?そういうのって。

 それに旅費のかかる旅行や体験・経験も良いけれど、

 無限の想像の世界の中に浸りながらそれを形にする事も

 とてもエコで省エネな価値創造のプロセスだと思うわよ。」


そこへ、暗部深夜子がやって来た。


「室内でウジウジしている事に自己嫌悪してる先輩の為に、

 ヨガしに来てあげましたよ!」


突然の訪問と、ワケのわからない申し出。

いや、そもそも深夜子の僕に対しての呼び方は『みぎゃーさん』

だったはずだと思うんだが、何だその『先輩』って言うのは。


「あー、やっぱり疑ってますね?

 不思議の国の住人の私からすれば先輩の事はお見通しなんですよ。

 『お兄ちゃん』も良いかと思ったけれど、先輩呼び好きでしょ?

 ねぇ、先輩?」


ハイ。正直、好きです。

しかし深夜子は先輩呼びに限らず、まさかのヨガまでしてくれるなんて。

お誂え向きにでび子がエアコンを消した事で室内がむわっと湿度が上がる。


そして深夜子がヨガストレッチを始めたのだが、

見た目の割に運動量が多いようでうっすら汗ばんで来る。

すると深夜子がかいた汗の匂いが僕の鼻腔を刺激する。


(ちょ、ヤバ…コレ、興奮してしまうんだが。

 一体何なんだよ、このシチュエーションは!!)


そこへニヤニヤとしながらデビ子が言う。


「ふふ、良い顔してるじゃない。

 とろ~んととろけて惚けたバカみたいな顔しちゃって。

 室内も案外良いものでしょ?例え妄想だとしてもこの状況、

 かなり美味しいシチュエーションだと思わないかしら?」


当たり前だ。締め切った湿度の高い室内で美少女がヨガをしながら

汗ばんだ匂いが部屋に漂うという状況。かなりフェチ的だが

嫌いな人は居ないんじゃ無いだろうか。


「こうやって深夜子を自由にコントロールする事も出来るのよ。

 まぁ最も今回の場合は、ちゃんと深夜子の同意を得てるわよ。

 アタシからテレパシーで打診したのよ、アンタの部屋に来て、

 ヨガをして汗かいてそれで元気にしてやれないかってね。」


「え、そんな…。深夜子、何かごめんな。

 そりゃそうだよな、わざわざ他人の部屋に来てヨガストレッチ見せて

 それで興奮とかされたら気持ち悪いよな?マジでごめんな。」


「いえ、先輩になら別に良いですよ?

 だってどうせ手を出して来れないでしょ?でび子さん居るし。

 だったら、煽るだけ煽って悶々とさせて遊べますし。」


何と、深夜子は自覚的に僕を興奮させるだけ興奮させて、

手が出せない事を知った上で楽しんでいると言うのだ。


「ちょ、マジかよ…深夜子、コレ結構生殺しなんだが…」


「知りません。ご自身で処理なされてはいかがですか?

 先輩が自分で処理する事を私が認識していた方が、

 より興奮出来ますか?だとしたら、今から処理されますか?」


深夜子のからかい、煽りは更にエスカレートした。

僕はさすがに限界が来てしまい、一旦部屋を離れた。

心を落ち着ける為に外を歩こうとしただけだったが、

深夜子は多分処理しにトイレに行ったと勘違いをするのだろう。


僕はしばらく外を歩き、気が静まった所で再び部屋に戻った。


「先輩、おかえりなさい。コンビニのトイレにでも行かれましたか?

 別にご自身の家なのですから、トイレですれば良かったのに。」


「あのなぁ...信じてくれないかも知れないけれど、

 僕は別に処理なんてしてないぞ。

 気を静める為に散歩して来たんだ。」


「あら、そうですか。したいなら別にすれば良いのに。

 まぁ良いや。どうですか?悶々とした自己満足への嫌悪、

 多少は和らぎましたか?」


言われて見れば、先程までデビ子と問答をしていた件については

スッカリと忘れていた。

中々に衝撃的な深夜子のヨガストレッチと汗の匂いだったが、

一気に懸念が吹き飛んだ。


「またスッキリしたくなったらお申し付け下さい。」


もし他に誰かが聞いていたら確実に勘違いされる言葉を吐いて、

深夜子は帰って行った。


「…残り香嗅ぐ?変態のアンタにはピッタリだと思うけど。」


でび子が自分から提案しておきながらドン引きしながら言った。


「いや、嗅がないよ!大体、何なんだよ、その変態キャラ設定!」


「…ふふ。もうすっかり、気分が晴れたみたいね。

 新規臭い顔ばかりして創作意欲が削がれていては美味しい話も書けない。

 たまにはこうやって冗談でも言って遊びながらやるくらいの方が

 アンタも適度なストレス解消になるでしょ。」


でび子はでび子なりに、僕の心身を考えてくれているようだ。


「ま、まぁ…嬉しかったけどさ、やっぱりあの生殺しはやめてくれ。

 この匂いは結構、アレに来るんだよ…。」


「ホラ、やっぱり残り香嗅いでるじゃない。」


「いや、残ってるんだから仕方ないだろ!?

 嗅ぎたくて嗅いでるんじゃないよ!!(汗)」


「いや、嗅いでるじゃない(ドン引き)


こうして僕はでび子と深夜子のおかげで、

落ち込みかけていた気持ちが盛り上がった。


たまにはこうして創作へのモチベーションを回復しよう。

僕再びPCの前で創作活動を再開したのだった。

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