第三十一話:おならブッかけおじさん撃退!
おならブッかけおじさんvsT霊界探偵事務所
久しぶりに出会ったT霊界探偵事務所の3人。
この3人ならもしかして…そう思い僕は3人に依頼をした。
「あの、実は今困った輩の退治を任されていて、
おならブッかけおじさんって言うんだけど、
屁ならがとんでもなく臭くて近寄れないんだ。
霊では無いけど、退治を依頼出来ないかな。」
「おぅ、別に構わねぇがそれなりに金用意出来るんだろうな?」
「もちろん、言い値を出すよ。だから、確実に退治して欲しい。」
「よし、わかった。行くぞ、みぎゃ子、ユキちゃん!」
こうして、T霊界探偵事務所の3人が
おならブッかけおじさんを退治してくれる事となった。
「オイ、てめぇが【おならブッかけおじさん】か?」
『へ?(屁)
アッシ、そう呼ばれてるでやんすか?
アッシはただ人よりちぃーとばかし、屁が多いだけでやんすよ。』
そう言いながら、周囲にはあの匂いの前兆が漂う。
「ヤバい、この匂いがすると数秒~数分後に本番が来るんだ!!」
そう言われて、ユキちゃんがすぐに反転魔法を出す。
「ブッ、…プブゥ~、パスッ、パスッ!!」
周囲の乗客達が一斉にバタバタと倒れて行く中で、Tさん達は無事だった。
逆に自分にいくらか跳ね返って来て、おならブッかけおじさんが悶絶する。
『ぐおぉぉぉ、く、臭いでやんす~!!』
「てめぇは今まで、そんなモンを人様に浴びせてたんだぞ!!
反省して、もう二度と悪さすんじゃねぇぞ!!」
『へ(屁)?
まさか、もう解決したとかお思いですか?』
何とおならブッかけおじさんは第二波を放った。
放ったのだが、それは折れ曲がり、リフレクションを超えて
Tさん達を襲って来た。
「ヤバい、来るぞ!!
一旦逃げろ!!」
すぐにTさん達は退避した。
しかしその瞬間に電車のドアが閉まってしまい、
戦いは持ち越しとなってしまった。
「アイツ、ヤバいわね…。
まさか放屁の軌道を変えてしまえるなんてね。
だけど次に会ったらブッ飛ばしてやるわ。
見た所戦闘能力は無さそうだったし、蹴り一撃で
ホームの端っこまで吹き飛ばされれば反省するでしょ。」
そうこうしている間に、またおならブッかけおじさんを乗せた電車が
ホームに停車した。
「さぁ、今度はアンタを蹴り飛ばしてあげるわ。
覚悟しなさい!!」
『ヘッヘッヘ(屁屁屁)、無理でやんすね。
何故ならアッシにはコレがあるでやんすから。』
そう言うとおならブッかけおじさんは屁バリアを張った。
『アッシにはコレがあるでやんすから、捕まらないんでやんすよ。
残念ながら警察も霊能力者もアッシは捕まえられないでやんすよ。』
「クッ、別に捕まえたいんじゃなくてお仕置きしたいだけなんだけどね。
厄介なヤツね…こんなふざけたヤツなのに打つ手が無いわ…。」
『さぁ、それじゃあ次の一発を撃たせてもらうでやんすよ。
次のは強烈な一撃にしようかな、もしかしたら車内の人、
死者が出ちゃうかも?』
また周囲に異様な匂いが立ち込める。
今回は前兆だけで既に気絶しそうなくらいだ。
本当に今までとは比べ物にならないくらいの一発が来る。
僕やでび子に深夜子、そしてTさんにみぎゃ子でさえ、
もう終わりだと思った。今から逃げても間に合わない。
その時、ユキちゃんが言った。
「私に任せて下さい。何とか出来るかも知れません。」
そう言うとユキちゃんはバリア魔法を唱えた。
「ユキちゃん、バリアはもう効かないわよ?」
そう言ったみぎゃ子にニッコリと笑顔を返すユキちゃん。
「大丈夫ですよ、コレでもうあの人は終わりです。
少し離れていて下さい。」
その十数秒後、おならブッかけおじさんは放屁した。
【ブチブチブリュリュリュ~ブッチッパ!!】
しかしその放屁は拡散されなかった。
ユキちゃんのバリア魔法は、おじさんの尻に張られていた。
『ぐのぅ!?』
おならブッかけおじさんは、出所を失い自らの体内に戻って来た
大量の屁で体が満たされた。
『う”・・・ぶぎょろごぅ・・ぺっ!!』
おならブッかけおじさんはたまらず、気絶した。
こうしておならブッかけおじさんは懲らしめられて、
もう二度と電車内で悪意を持って放屁する事が無いよう、
厳重に注意された。
そして僕はT霊界探偵事務所のメンバーとの再会を喜んだ。
「いやぁ、それにしてもTさん達が居てくれて良かったですよ。
僕達だけでは解決出来なかった…まぁでび子は別ですが。」
ユキちゃんがチラッと深夜子を見てから僕に言った。
「あの、仲が良さそうですね、彼女さん、ですか?」
それを深夜子が否定する。
「え、ち、違うわよ!?そんな風に見えるの?
単に仲間って言うかたまに顔を合わせるだけの関係ですよ。」
「あぁ、そうなんですね…(だけど霊視すると何だか、気持ちが
向いてるように見えるんだけどな。まぁ言わないでおこうかな)」
おならブッかけおじさんの事件はSNS上でも大バズりして、
電車には若い女性達が主に戻り始めた。
僕は知らなかったのだが、かなりの人達が電車から離れていたようだ。
でび子が言った。
「今回はアタシ達が巻き込まれた物語だったわね。
だけどそれが【おならブッかけおじさん】だなんて、
ダサ過ぎるわね…ところで、さっきのT霊界探偵事務所の子、
アンタと深夜子が仲良さそうな事に嫉妬してたわね。」
「えぇ!?
ユキちゃんと僕とは付き合いそうなったけど別れたよ!?」
「この世界線では、ね。
複数の物語が平行世界として存在するクロスオーバーでは
ありがちな話なのだけどね、別の世界線ではアンタとユキちゃん、
結婚してるのよ。」
「そうなの!?」
「だけどこの世界線でのアンタは結ばれないわよ。
たくさんの可能性があったとしても経験出来る運命は一つ。
アンタは今回の運命を楽しみなさい。」
「僕の運命、か…。」
複数の物語を横断して創作者の立場として物語に入り込み、
それを経験している僕でさえ、この目でみられるのは一つだけだ。
そういう意味では僕の運命も一本の線なのだろう。
視野が広くてもそれは立ち位置の違いなだけであって、
次元まで丸ごと違うような存在では無い、あくまで一人の人間だ。
「アンタ達人間はどれだけ賢くなろうが視野が広がろうが人間。
少し可哀そうに思う事もあるわよ。そうね、例えば…
トンボの複眼なんかは疑似的には体験出来ても、実体験として
それを日常にする事は出来ない。
そうした人間の運命とでも呼ぶようなものは、哀れに思うわ。
だからって悲観する事は無いのよ、そういう生き物なんだから。」
「だけど、物語を通して複数の世界線を見たり疑似体験出来る事は
大切な文化経験なんじゃないのか?」
「そうよ、それが人間が作り出した自己の疑似拡張ね。
本当アンタ達は飽きないわよ、不足を知恵で何とかしようとする。」
「人間なんて万能じゃないもんな。
だけど万能ってのも案外、面白くないんじゃないか?」
「最初に言ったでしょう、
だから物語と言う人間の想像の限界を超えた概念を喰らっているのよ。」
「ま、最古の悪魔様にご満足頂けるような物語を書けるように
頑張りますよ、と。」
何百万年と年月を重ねて来た悪魔は、
今更もう目新しい物語なんて無いのかも知れない。
それでも僕はでび子がまだ味わった事の無いような物語を書き続ける。
僕の命ある限り、この想像力をもって最古の悪魔を飼い慣らし続けてやる、そんな思いで僕は今日も新たな物語を考え、それを形にし続けるのだった。




