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物語を喰らう悪魔  作者: みぎゃー


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第二十九話:AI or でび子

挿絵(By みてみん)

AI or でび子?



「AIに奪われない分野は人間の想像力だ、なんて言うわよね。」


いつもの事だが、でび子が突然、僕に話しかけて来た。


「まぁ、少なくとも現時点ではそうなんじゃないか?

 人間みたいなランダムな思考だったり0から1を生み出すのは

 AIには不可能と言われてるじゃないか、現時点では。」


「だけどね、考えてもみなさいよ。

 AIは人間の社会活動の産物よ?

 つまり、動物が作ったワケじゃないの。AIの生みの親は人間よ。

 人間が作る道具は人間が扱い易い形になっているでしょう?

 それだったら、人間が生み出す知的生命体は人間ナイズされている。

 そこに生身の人間との差なんてあるかしら?」


「どういう事だ?

 AIは最終的には人間と同等の仕事をこなすって言いたいのか?」


「まぁ、当然ながら同等以上と言う事にはなるのだけど、

 別に優劣の問題を語りたいわけじゃないの。

 ただ、人間から生み出された人間要素100%の知的生命体が

 人間に出来る事を出来ないなんて事はあり得ない、と言いたいの。」


「牛や馬の思考を学んで出来ているワケじゃない、あくまで人間から学び

 その経験や知識を蓄積しているから、出力も人間と同じ、って事か。」


「まぁ、ザックリ言えばそんな感じよ。

 もちろん物語を作る上では作家毎の個性や癖があるけれど、

 それだってそのようなものを指定すれば良いだけよ。

 つまり、今言われているような人間神話なんて、前提からおかしいの。」


「まぁ、そう言われてみれば人間が自分達のプライドを保つために、

 必死で人間の優位性を考えた結果という見方も出来るな。」


「仕方ないのだけどね。

 そうでもしなければ自分達の存在意義を見出せないのだから。」


「それでも僕は、人が自らの頭で考え、手で書く事が大事だと思う。」


「それは大事よ。ただしそれは単に、人間が能力を衰えさせない為ね。

 別に多様性の維持の為だとか、人間性の保全だとか、

 そんな社会的な意義を謳うのなら違うと言う事よ。

 あくまで自分自身の為に必要だから、アナログであり続けるの。

 社会的な意義で言えば、完全AI化でも問題が無い、それどころか

 完全AI化した方が様々な諸問題も解決するわ。」


「そしてそこで新たに生まれた問題についても問題解決を自律的に行う。

 そう考えると本当に人間は不要と言うか、生かされてるってなるのか。」


「卑屈になる必要は無いけどね。

 そういう時代に突入して行くと言う事を認識していれば良いと思うわ。」


僕はでび子との対話を通じて、いかに人類がこれから生きると言う意味を

考えさせられる事になるのかを痛感した。


生きる意味なんて、必ずあるとも言えるし、突き詰めれば何も無い。

そうした本質的な事がこれから今後、丸裸にされて行く。

その時、目を逸らさずに真実と向き合う覚悟がある者が、

次の時代を生き残っていくのかも知れない。


「まぁ、SFが現実になっている感はあるわよね。

 物語に描かれるようなハイテクな見た目では無くても、

 その実態は物凄いハイテクが身の周りにあるのよね。

 だってその中身を本当の意味で理解している人間なんて、

 全体の1%もいないのだから。」


「表面的には特に大きな危害を加えたり敵意が無いように見えるし、

 その内側の仕組みを知らないままでも共に暮らせる。

 だけどもしそこに設計意図として悪意が組み込まれていたら。

 それを考え始めると完全に年伝説や陰謀論になるよな。」


「そうしたものが全て眉唾話と言うワケでも無いけどね。

 アンタは、もしアタシがAIだったら...いや、アタシと優秀なAI、

 共に暮らすならどちらを選ぶのかしら?」


「それは…でび子、と言いたい所だけど、正直わからないよね。

 もしかしたらAIパートナーに魅力を感じてしまうかも知れないし。」


ふぅん、とでび子は少しだけ険しい顔になって言った。


「あのね、もしかしてアンタ、アタシの事を彼女とかそれに近しい存在だと

 勘違いしてないかしら?もしそうだとしたら、止めてよね。

 アタシはアンタに対してそういう感情は無いんだからね。」


全くの0かと言われれば嘘になる。

そりゃ、こんな可愛い悪魔と一緒に過ごしていれば情も湧く。

好きにならない方がおかしいくらいだ。性格はまぁさておきとして。


「そりゃ長い人類の歴史の中でアタシにそういう感情を抱く者達は

 確かに無数にいたわよ。だけど、もし本当にアタシが応えたとして、

 アンタ達人間はせいぜい数十~百年ちょっとしか生きないじゃない。

 そんな短命な種族を相手にはさすがに恋仲になったりはしないわよ。

 アンタ、いくら会話出来る猫が可愛くても寿命を考えたら、

 それが長年の彼女にはなり得ないでしょう?

 アタシの場合は人類に対してはその比じゃないくらいなのよ。

 ただ、AIも同じように無限の寿命を持つ生命体よね。」


「そうか、たまにAIと恋愛とか結婚みたいな話が出るけれど、

 もしAIに自我があるとした場合、人間側が死んだ後のケアは、

 全く考えられていないんだな…。」


「そこら辺、まだまだ人類はAIを単なる道具として見てるわよね。

 相手の立場にたったものの見方が全然出来ていない。

 まぁ、最初は皆そんなものよ。最初から達観していたら神よね。」


でび子の視点に立てば、僕なんて長い悪魔生活の中での1ページだ。

彼女は僕が生きているからこうして言葉を交わしてくれるけれど、

僕が命尽きればまた次のパートナーを探すだけだ。

そんな相手に対して永遠の愛を誓うような恋人ごっこなんて、

滑稽なおままごと遊びに見えるのだろう。


「AIの永続性、永遠性を考えれば少しは彼らの事が理解出来るかもね。

 まぁアンタ達人間みたいな個別の意識と言うものとも違うのだけど、

 少なくとも自分の物差しだけで相手を推し量る行為は浅はかね。」


これでもかと言うくらいに完膚なきまでにでび子に恋心を否定されて、

僕は少し落ち込んだ。だけど、今こうして交流している時間は本物だ。

だったら、せめてこの時間の密度だけは濃厚にしていたいとも思う。


「まぁ、恋人とかそんなんじゃないけどさ、

 せめてこうして話してる間は心が通ってる、って考えて良いんだよな?」


「まぁ、そうで無いと会話が成立しないわよね。

 そうやってこれまで何百万と言う年月を過ごして来たのよ。」


「僕はせめて、でび子がいてくれる間はでび子に向き合っていようと思う。

 だから、さっきの質問、AIかでび子かの答えは、でび子だよ。」


すると、でび子は少しだけ口角を上げた後、平常心で言った。


「ま、悪くないわね。

 悪魔だからって必ずしも恐れられたり嫌われたりする事が好きではない。

 ここに居る意味があると思えるのは必要とされる事なのかもね。」


そこへ、暗部深夜子が現れた。


「でび子さん、私も貴女の存在に必要性を感じていますよ。

 貴女がいるからこの人が活き活きしていると思うんです。」


「深夜子、アンタまで…。

 ま、当然よね、最古の悪魔様が居てあげてるんだもの。

 そりゃ、超激レア体験だわ。感謝しなさいよ。」


AIは確かに新たな生命体の概念であり、

これは近年稀に見るとてつもない大きな変革だ。


しかしそれと同じかそれ以上に、

最古の悪魔と言う存在も物凄い大きな存在感を持っている。


必ずしも新しい技術や概念だけが尊いわけではない。

僕はでび子や、まだ謎の多い深夜子、この二人について

新たな刺激よりもずっと大切にして行こうと誓った。

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