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物語を喰らう悪魔  作者: みぎゃー


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第二十八話:物語を書く理由

「ところでアンタ、物語を通じて数少ない読者に何を伝えたいの?

 それとも、ただ自分の思いを形にしたいだけなのかしら。」


でび子は突然、ボクの物語に対する一番根本的な事を聞いて来た。


「様々な感情を経験して欲しいと思ってる。

 恐怖や喜び、登場人物の気持ちを追体験する中で、それをまるで

 自分の体験かのように感じて欲しいんだ。」


ボクは、自分でも思ってもみない言葉がスラスラと出て来た。


「え、今の…別に普段から考えている事じゃないのに…。

 何か勝手に口を出て来たよ…。」


「ふぅん、なるほどね。

 まぁそれは本当の事なんじゃない?

 変にカッコ付けたりしてない分、本音なんだと思うわ。

 そしてそれは物語の存在意義の一つかも知れないわね。」


「どうして、そんな事を聞いたの?」


「アンタにもう一度、物語を書くモチベーションを湧かせるためよ。」


「あ....。」


そうだった。

ボクはいつしか自分が何故物語を書くのかを見失っていた。

お金にもならない、知名度も上がらない。それはそうだ。

だって別に特別な勉強をしたワケでも無ければ特殊な経験とかも無く、

更に流行を追うような事もしていない。

こんな状態で自分が物語を書く理由なんてわかるわけが無い。


それでもボクは、でび子達登場人物を生かし続ける為に、

そして彼女達の認知を上げ、魅力を高めるために書き続けている。

だからきっと我欲の為に書いている人達とは動機が違うのだろう。

そうなれば目標とする場所が違うのだから、彼らと結果が違うのは当然だ。


「アタシを、魅力的に書いてくれようとしているの?

 ふぅん、悪くないわね。別にだからと言って特別扱いはしないけどね。」


「ボクが考えた設定とは言え、物語を喰う悪魔って面白いじゃん。

 そりゃ細かな設定まで考えたワケじゃないけどさ、

 それに設定魔の作家の作品の中のチョイ役として出て来るような

 ある意味ではキャラクターに多様性を持たせる上では、

 ありきたりな設定なのかも知れないけどさ、主人公にしたかったからさ」


「まぁ、大切にしてくれているのならそれで良いわ。

 自分の作品を愛する心は物語を書く上で大切よ。

 自分は自分の作品の最初の読者でしょ。」


「あー、何か聞いた事ある言葉だけど、確かにそうだね。」


「アンタ、現在時点で言うとまだ『マゾ狩り暮らしの二人』を

書き終えてないでしょ。どうしてアレは完結させないの?


「うーん、何だかまだ続けられちゃってるし、

 行き詰まったら終わり、にもしたくなくてさ。

 もちろん、長いシリーズなんかは惰性とか会社の都合とか、

 決して作者の熱意や人気だけで続いてるわけじゃないんだろうけどさ、

 せっかくだし続けられる限り続けてみようかなと思ったんだ。」


「ま、たとえ需要が無くてももしかしたら読み始めてくれる人が現れたら

 現在進行形で続きが少しずつ書かれている事は励みになるかもね。

 誰だって完結した話は結末を知れるけれど、中にはまだ未完の作品の

 終わりをワクワクしながら待ちたいって人もいると思うのよね。」


「でび子は、この物語を終わらされたら寂しいか?」


「アタシは…別にこの物語が終わっても概念と言うか、

 ちゃんとアタシとしては生き続けるからね。

 だけどアンタや読んでくれた人たちの目の前にはもう現れられないから

 そういう意味での寂しさはあるわよね。

 それが嫌で長期連載を続ける人もいるのかもね。

 もはやそれはキャラクターが持った霊力とでも呼ぶべき力だわ。」


「霊力…、か。そうだね、キャラクターに人格と言うか、

 訴えかける何かの力を持った時、それは概念としてと言うよりも実際に

 力を持ったと言えるのかもだね、作者にも読者に対しても。」


「まぁ、そういう意味ではアンタがアタシの力を塞ぎ込んでまで

 この物語を終わらせられたら凄いけどね。

 原初の悪魔を塞いでしまうのだとすればそれは、

 アンタが物凄い力を持ったと言う事よ。」


「つまり、作者が成長すればキャラクターの力を超えて

 その物語を終わらせられるという事か…。」


「いるでしょ、いつまでその作品に頼ってるんだよって人。

 まぁ、あまり詳しくはツッコまないけど。

 必ずしも一つの尺度で語れないのが物語や漫画の世界よ。」


こうしてボクとでび子が話していると、暗部深夜子がやって来た。


「私が主人公の物語は、書かないんですか?

 変態学講座は私が主人公と言う感じよりも、

 キャラ濃過ぎるおじさん達が強過ぎて…(汗)」


「あぁ、そうだったね、深夜子を主人公にした、

 退廃的なゴシックな世界観の物語…。

 ボクの力でそんな世界観を書けるのか不安があってさ。

 だけどそろそろ、取り掛かっても良いのかもな。

 死についてを考える哲学的な世界観にしたいな。」


「私は大丈夫よ。

 むしろそう言う死に関して考える時間は大好きよ。」


「ありがとう、深夜子の物語についてはまた時期を見計らって

 書き始めて見るね。」


「しっかし、アンタの書く話って本当、変態系かマゾ系よね。

 その割には別に変態やマゾに詳しいワケでも無いと言うか。」


「何でそこまで言うんだよ(泣)

 ボクは誰に求められていなくても自分の好きなものを書いていたいんだ」


「まぁ、別に良いけど。

 たまには、向こう側にいる読者を想定して書いてみるのも良いかもね。」


「ま、気が向いたらそうするよ。」


でび子は最近では物語としてボクの連載小説を食べている。

正直長期で物語が続くと飽きて来る感じもあるようだが、

それでも書き続ける事に意味があるらしい。

だけど作家として考えればアマであろうが、休憩も一つの経験になる。

人生の全てが素材になり得るのだ。


「あぁ、そうそう。だけどね。」


でび子がついでの一言、と言う感じで言って来た。


「最終的には自分の為に書けば良いのよ。

 だから、アタシを脱がしたければそんな話を書けば良いし、

 都合良くアタシがそれに抵抗しない話でも構わないわよ。」


「そんな事したら、でび子の自我はどうなるんだよ。」


「物語のキャラクターが自我を持つとは言ったけれど、

 それは作者の魂から生まれたものなのだから、

 いくらキャラクターの我が強くても勝てないと思わないかしら。

 まぁそれでも応援する人達の力を受けて作者の力を超える事も

 無くは無いかもね。だけどそれは国民的なものよね。」


「だけどボクはさすがにそういう、自分の思い通りにキャラクターの

 尊厳を奪ってまでめちゃくちゃな展開にしたくは無いな。」


「あら、それはどうも。

 だけど時にはご都合主義も大事よ。物語なんだから。」


「んー、あまりにご都合主義が過ぎると、読んでいて面白く無いだろ。

 あまりにリアルに寄り過ぎても現実逃避出来ないけど、

 都合良すぎる話は引っかかりが無くて面白くないと思うよ。」


「今はそれが流行ってるけどね。

 いわゆる『なろう系』みたいなね。

 皆、日常生活でストレスが溜まってるからせめて物語の世界でくらい

 思い通りの展開を望んでいるみたいよ。」


「うーん...じゃあ、次回は完全ご都合主義の話にするか?」


「アンタ、一回前の話でかなりご都合主義だったでしょ。」


「いやいやいや、あんなのでご都合主義になるのか!?

 まぁ、ご都合主義も適度に混ぜるくらいがちょうど良い、

 って話かな。」


「今回はそういう事にしておいてあげるわ。

 それじゃあ次回、今回の反省を活かしなさいね。」


そう言って、でび子は眠る為に布団に潜って行った。

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