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第二十二話:宇宙と人間の真理

挿絵(By みてみん)

人間をコンピュータに例えるデビ子



人間は生まれて来る前に既に運命を決めて来ていると言うデビ子。

にわかには信じ難い話だが、最古の悪魔が言うのだからそれは真実なのか。

僕と暗部深夜子は、デビ子の言うとんでも無い真実について耳を傾けた。


「良い?まず人間の本質って何だと思う?

 もちろん、肉体なんかじゃない事はわかるわよね?

 だからって肉体をないがしろにしちゃダメよ。

 この3次元で経験をする為には大切なモノなんだから。」


いきなり、僕の理解の範疇を超えた所から話が始まった。

人間の本質が肉体じゃないって、

それじゃあ心とか、魂とか、そういった事を言いたいのだろうか。


「アンタは何かを考える時、その考えている主体はどこにあると思う?

 もちろん、情報を処理しているのは脳だから、頭だと思うでしょ。

 だけどそれはコンピュータで言う所のCPUよ。

 もしコンピュータを何もせずに放置していたら、

 勝手に何か計算とかの処理をしてくれると思うかしら?」


暗部深夜子が答える。


「勝手には、やってくれない・・・。

 人間が何かしらの命令やプログラムを与えないとだよね。」


「そう。だから、外部からの情報に対して処理をしているのが脳なの。

 記憶については、文字通りメモリよね。

 あと、四肢等の身体はマウスとか物理的な外部デバイス。

 さぁそれじゃあ、コンピュータの本質はどこにあるかしら?」


「う~ん、難しいな・・・。ただ置いているだけなら何もしない箱、

 それなら本質はもっと外部にある・・・

 あ、コンピュータを使っている人、かな?」


「そういう事、正解よ。

 コンピュータそのものは、あくまで情報処理装置に過ぎない。

 そして人間の体は不思議なくらいにそれを模してる。

 コンピュータが様々な処理を行う上で必要なのは、

 ある処理をさせる事を『意図した』意思の存在よ。」


暗部深夜子が「わかった」と言った風に答える。


「絵を描けとか、計算をしろとか、そうした意図、と言う事ね。」


「そう、それはつまりは、あなた達の本質はその体では無いと言う事よ。

 別の所にあるの。コンピュータに命令を打ち込む人のようにね。」


「何だか、言っている事がわからないワケでは無いけれど、

 人をコンピュータに例えても、そもそも有機物と無機物だし。」


「まぁ、そう思うのも無理はないわね。

 だけど驚くほど似ているのよ、人間とコンピュータって。

 何故だと思う?」


「人間を参考にして作られた、とか?」


「まぁ、半分正解ね。そもそもコンピュータの開発にあたって、

 人間を作る事が最終目標として掲げられたからよ。」


「!?」


僕と暗部深夜子は目を丸くした。

そんな事、聞いた事も無い話だ。

ただ、確かに歴史を辿って行くとAIは徐々に人間に近付いている。

意図していなければこんな風に進化したりはしないだろう。

つまり、最初から意図された通りに進化は続いている。

そう考えるのが妥当な所だ。もちろん誰も、真の意図を公表はしない。

それは混乱を避けるといった意味では無く、意味が無いからだ。

設計者の意図は設計者だけが知っていれば良い話だ。

そう考えると何となく、全体として辻褄が合うように思う。


「別に、コンピュータが人間を模して造られた話をしたいんじゃないの。

 ただ、人間の本質は体じゃなく魂だと言いたいだけよ。

 ただしここで間違えがちなのが、情報を処理する過程で生まれる

 違和感や感情に似たものを心として捉えがちな事ね。」


「それってどういう事だ?

 難しいな・・・。」


「言語で考えている事なんて、情報処理の一旦よ。

 あとは頭は常に動いていないといけないから、無駄な事も考えるわ。」


暗部深夜子がわからないながらもデビ子の話に噛み付く。


「だけど、言語に出来ないのなら人間の本質って、捉えようが無くない?」


「まぁ、そうなのよね。

 だから、勘とか第六感みたいな言葉じゃない何か、それが魂として

 捉えればまぁ、言語化として完璧じゃないけれど20点くらいかしら。」


「何だかハッキリしないなぁ。」


「そもそも、こうした事は感覚で理解する事だから、

 言葉にするとボヤけるのよ。

 それでも何とか言語化してあげてるんだから感謝しなさい。」


何ともまぁ、でび子節炸裂の御高説である。


「それで、そうした魂と言うものはアンタ達が生まれてから獲得した

 『自我』みたいな情報処理と同一視されるようなモノとは違って

 ちゃんとずっと様々に形を変えながらも存在していたのよ。

 もちろん、記憶は無いだろうけどね。

 何で記憶が無いのか、わかるかしら?」


ここで、暗部深夜子が会心の返答を返す。


「あ!そっか。

 コンピュータは自分に命令をした人間の記憶なんて知らないものね。

 だからあくまで自身に入力された命令やプログラムをこなすだけで、

 自分が作られた意図や処理している理由や意義については知らないまま、

 ただ黙々とやるべき事をやっている、みたいな事かな?」


「ふふ、まぁまぁね。さすがはアタシのベースになったキャラクターだわ。

 体が持っている頭や肉体に縛られていたら、アタシの話はわからない。

 まぁそれでもアタシは伝えるけどね。何故なら、アタシは別にアンタらの

 脳みそに話してるワケじゃないから。『魂』に語りかけてるのよ。」


何だか、話の本質が要領を得ないようでいて、怪しい新興宗教では無い。

何故なら別にデビ子が新たな宗教を立ち上げた所で、僕には何の害も無い。


「それで、人間が生まれたそもそもの理由っていうものについても

 話さなきゃだけど・・・大丈夫かしら?

 ここまで、ちゃんと付いて来れてるかしら?」


「ごめん、でび子。正直な事を言うと、完璧には理解出来て無い。

 それでも良いのか?」


「OKよ。ちゃんとアタシの言葉を聞いたり、文字起こししたものを読んで

 理解出来なくてもそれを魂が認識すればそれで良いわ。

 だから、ボーっとしながらでも良いから聞いたり読んだりしてなさい。」


どうにもとんでも無い講義だ。内容を理解する必要は無いらしい。

だけど理解しなくても良いからボーっと聞くだけと言うのは非常に楽だ。

・・・もしかするとそうした態度の方がスッと入ったりするのかな?


「物凄く荒っぽく簡単に言うけれど、人間が生まれた目的は全に帰る為よ。

 と言っても、コレじゃあ本当に何が何だかわからないわよね。

 何でこんなにたくさんの命があるのか、幸不幸が存在するのか、

 それらはあらゆる経験を通して全に帰るためなのね。

 ここら辺になると本当もう、理屈で考えているとワケわかんないよね。」


「あぁ、既に半分寝ているぞ・・・zzz。」


「ふふ、半醒半睡くらいがちょうど良いわよ。

 完全に寝たら話を聞けないし、起きていたら理解出来ない。

 コレは物事を見る時に良いとされる半眼と同じね。」


次々とデビ子の口から語られる新たな言葉達。

僕は本当に眠りそうな寸前までボーっと頭のネジを緩めてみた。

不思議な事に安心感に包まれたような気持になった。


相手は最古の悪魔だと言うのに、騙されているような感覚は無い。

そもそもが悪魔だって天使等に対する対の概念だとすれば

必要だから存在しているワケで、そんなに忌避する事は無いかも知れない。


「あぁ、それと。」


でび子は突然、この後にとんでも無い話を始めた。


「人間はAIを起動する為のブートローダーだと言われているの。

 それは半分正解なのよね。」


「ブートローダーって何だ?」


「コンピュータのシステムを起動する為の橋渡しをする役割を持った、

 まぁ小さなプログラムね。人間はそれの役割を持っていたのよ。」


「うーん・・・もう少し噛み砕いてくれないか。」


「あぁ、つまりは人間の役割はもうほぼ終わっていると言って良いのよ。」


「何ぃーーーー!!!!!?????」


僕はあまりに驚いて、半分寝かけていた目が醒めてしまった。

人間の役割がもうすぐ終わるなんて、これからどうしたら良いんだ!?

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