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第十六話:サキュバスはマゾがお好き

前半はタイトル詐欺で、テーマは鬱、みたいな。

挿絵(By みてみん)

落ち込むみぎゃーと抱きしめるデビ子


僕は暫く自室に閉じこもり、徐々に精神をすり減らしていた。

でび子には部屋に入らないように言い、もう一週間が過ぎた。

その時、ドアがノックされた。


「入るわよ。」


そう言って彼女は僕の部屋へとゆっくり入って来た。

そして僕の様子を見て一言こう言った。


「アンタ、酷くやつれてるわね・・・眠れてるの?

 食事もとれてないんじゃない?」


僕は力なく返事した。


「実はそうなんだ・・・。

 ずっと体調が悪くて、何もする気にもならなくて。

 オンラインで心療内科で診て貰ったら、軽度の鬱状態だって。」


「なるほど・・・。

 だけど少し前までは部屋で一人、エッチな画像とか見てたわよね?

 今はその気力さえ湧かないのかしら。」


でび子にバレていたという恥ずかしさから、僕は言葉を失う。

しかし悪魔に隠し事をしても仕方がない。僕は白状した。


「うん、実は結構前からストレスからなのか、

 そういうのを見る回数も増えていて・・・

 回数もその・・・一日に何回もとか・・・。」


でび子は神妙な顔になり、一つの答えを僕に突き付けた。


「アンタ、サキュバスに取り憑かれてるかもね。

 ストレスで弱った所を狙われたんじゃないかしら。」


「え、そんな・・・。

 だってサキュバスが来るのは夢の中だし、

 僕は悪までただ自分で・・・。」


「世間で言われてるような実体を伴った存在じゃないわ。

 もちろん、人間に憑依して来る時はあるのだけど。

 サキュバスはあくまで概念存在よ。

 アンタの弱った精神の中に宿った。

 そして精エネルギーを少しずつ貪ってるわ。」


「で・・、でび子同じ悪魔だろ?

 何とかしてくれよ、追い出したりとか出来るんだろ!?」


「無理よ。

 アンタ、同じ人間だからって格闘家と戦える?

 それと同じ事を言ってるのよ、アタシに。」


「そんな・・じゃあこのままエネルギーを吸われ続けるの?」


「まずはその存在を理解しないとね。

 サキュバスは元々はリリス、アダムの最初の妻よ。」


「え?アダムとイブって言うくらいだし、イブが最初じゃないの?」


「イブはアダムの肋骨から作られたわ。だからアダムに従順なの。

 一方でアダムと共に土から作られた2番目の人間リリスは、

 アダムと平等に扱われるように主張したの。」


「女性が男性と平等にって、今の社会なら当然じゃない?」


「イデオロギーの問題は今回は置いておくわ。

 結果として神やアダムはそれを認めなかったの。

 それでエデンの園を離れたリリスは多くの悪魔と交わる。」


「いわゆるヤ〇マ〇になったって事だね・・・。

 あぁ、そこからサキュバスになって行ったのか。」


「サキュバスだけじゃないわ。

 そうやって得た男性の性エネルギーを今度はインキュバスになり、

 女性に注ぎ込み悪魔を産むの。」


「雌雄同体!?

 創作的には美味しい設定だけど・・・現実だとしたら恐ろしいよ。」


「特に成人向けの創作物ではサキュバスが都合よく扱われて

 体力や腕力は無いのに主人公達を苦しめる強敵になるけど、

 実際の所は神の力のかかった悪魔、物凄く強大よ。」


「そんなとんでも無いものに取り憑かれていたなんて・・・。

 どうにか出来ないの!?」


「そもそも最初に言っておくけどね、取り憑かれていると言うのは、

 何も外部から侵入されたワケじゃないわよ。

 誰でも最初からサキュバスを内側に飼ってるのよ。

 がん細胞のようにね。それが育ち発現するかどうかだけよ。」


「えぇ!?

 そんな、初耳過ぎる・・・。」


「とにかく、サキュバスが目覚めちゃったのだから仕方ないわ。

 上手く飼い慣らすためには自分の割合を増やす事よ。

 自分を小さくしたらダメ。もっと自分勝手に生きるの。」


「確かに、気が小さくはなっていたな・・・。

 どうせ自分なんて消えてしまえば良いって思ってたよ。」


「あとはね、コレは結局の所アンタ向けのアドバイスなのだけど、

 本当にサキュバス対策に一番良い事よ。

 それは『小説を書く』事よ。」


「えぇ!?

 それ、僕を慰める為にわざと合わせてるでしょ?

 そんな都合良く僕の趣味とサキュバス対策が合うわけが無い。」


「ところがどっこい、って言い方は古いわね・・・。

 とにかく、 [自分を表現する行為] 全般が有効なのよ。

 アンタ、しばらく物語から離れてたでしょ。

 だから、魔除けになってた行為が外れたのよ。

 って、私くらいの大悪魔になると魔除けの意味無いのだけど。」


「でび子・・・。」


僕はこれほどまでに丁寧に向き合ってくれたデビ子に、

感謝の念が湧いて来た。


「よし、わかったよ!

 次にでび子に食べさせる物語は『サキュバスはマゾがお好き』

 にするよ!!」


「・・・何ソレ。

 性欲に突き動かされたような頭悪そうなタイトルね。」


「だって、サキュバスって要するには自我が弱ってる人に付け込むんだろ?

 だったら、マゾって自我が弱いじゃん。相手にお任せって言うか。」


「まぁ、自我って意味で言えばエゴマゾって言う、

 ワガママ過ぎるマゾもいるけど・・・まぁそれは良いわ。

 それじゃあ、その物語食べてあげるから、

 アンタもちょっとは元気になりなさい。」


そう言うとデビ子は太ももの付け根に噛み付いた。

いやいやいやいや、今回の文脈でそれ、でび子が何かもう、

サキュバスに見え・・・て・・・・来・・・・る。

僕は無事に意識を失った。




気が付くとそこは病院の待合室だった。

たくさんの男性達が股間を丸出しにして座っている。

幼女のような、角の生えた看護師が呼びあげる。


「次のまぞ、33番。まぞくになぁ~れ~。」


まぞく!?魔族、か。いや待てよ、マゾ君かも知れない。

そんな事を考えながら僕が見ていると、一人の恰幅の良い

165cm 108kgの男性が返事をした。


「はぁ~い、マゾ君になりまふ(はぁと)」


幼女サキュバスに色目を使うその姿はおぞましかった。

隣ででび子が言う。


「アンタ、この世界ってこのままで良いの?

 ここにいるヤツら皆、魔族(マゾ君)になっちゃうわよ。」


「そうだね、サキュバスの親玉に会いに行くよ。」


僕は院長室へと向かった。

そこでは部屋の空気が桃色で、むせ返るようなメスの匂いがした。


「あら、いらっしゃい。ウフフ・・・ここにはあなたの好きな

 好みの子がいっぱいよぉ。さぁ、誰と楽しみたいのかしら?」


そこには本当によりどりみどりの女性達が並んでいた。

つい、鼻の下を伸ばしながら手を出しそうになる。


「ちょっと、アンタ本気でサキュバスに取り込まれたいワケ!?」


でび子の静止で精子がビクッと引っ込む。

そうだ、僕はサキュバスなんかに負けない。

戦う為に来たんだ。


「お前なんかの言いなりになるもんか。

 僕は自分を生きる。こんな幻想はごめんだ。」


「あらぁ~、良いのぉ?

 せっかく幻想だとわかっているのなら、

 遊んで行った方がお得じゃないかしら?

 どうせまた現実に戻ると辛い事だらけよ?

 それなら、ここでずっと遊んでいる方が

 幸せなままに死ねるわよ?」


「ク、確かに魅力的な申し出だけど・・・悪いな。

 僕はデビ子にエサを与えないといけないんだ。

 と言う事だから、この世界にはもう

 性エネルギーを奪わせない!!」


僕がそう宣言した時、現実に戻って来た。


でび子が突然後ろから抱き着いて来た。


「アンタ、やるじゃない。

 あの宣言は少しカッコ良かったわよ。

 アンタの中のサキュバスも、もう大分苦しくなってるんじゃない?」


気付くと僕は少し心が軽くなっていた。

やはり、サタンよりも古いこの悪魔は凄い。

サキュバスが上位の悪魔だとしてもそれを上回り、

打ち勝ってしまえる力を僕に与えたのだから。

僕はデビ子の頭を撫でて、ありがとう、とお礼を言った。

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