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#砂時計の砂が落ちきる前に  作者: 海底の真珠
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#砂時計の砂が落ちきるまえに(36)

〜あらすじ〜

空は澄んだ色をし太陽が砂時計とカラビナウォッチを照らし出す。時が経っても変わらぬ時計。

彼女の人生は砂時計から始まることになる。砂時計とカラビナウォッチ…

2つそれぞれの時計の意味は何か…

彼女の幼年期から青年期を経て、成長し恋をしていく。

伯父さんが来る日を迎えた。


昨日、高校の資料をもらった封筒から中身を出す。

何度読み返しただろうか。


午後2時半。伯父がやって来た。

伯父の声に反応しすぐさま茶の間へ向かう彼女。

"伯父さんがお酒を飲む前にちゃんと話さなきゃ!"


伯父に話しかける。

『伯父さん!いらっしゃい!お久しぶりです!伯父さん!話があるの!』

仏壇に手を合わせる伯父は、振り返り彼女の話を聴く体制をとった。

『どうした?何か欲しい物あるの?大っきくなったからバックとか靴とか?オシャレさんの時期だからなぁー』

『違うの!オシャレとかじゃなくて、ちゃんと話聴いて!』

大人びた彼女の発言にびっくりする伯父。

母親が口を出してくる。

『遠くから来てくれて疲れてるんだから休ませてあげなさい!』


彼女の伯父は新潟県で個人病院で総合診療医をしている。

伯父は結婚していたが、子どもが居なく夫婦二人暮らしをしていた。

伯父はへき地医療に力を入れていて、地域の人の信頼が熱く、自分自身より患者を優先にしている素晴らしい医師だ。


『みっちゃん、話してごらん。』

伯父は話しかけた。


『伯父さん、私、看護師になりたいの。今の段階で推薦候補に挙げられてて。行きたい高校は『テンダー学園』看護科があって、国家試験合格率がトップレベルなの。そこで看護を学びたい!そして看護師になりたい!伯父さん、協力して欲しいです!』

精一杯話した。

伯父は彼女に問いかけた。

『何で看護師になりたいの?』

彼女は真っ直ぐな想いを伯父に伝える。

『患者さんの心を助けたい!病気や怪我は医療で医者しか治せない。だけど、看護師になって、病気や怪我で心が折れたり、折れかかっている患者さんの心を助けたい!私が、入院している時、心を助けてくれたのが看護師だった。ずっと、看護師が私の話を聴いてくれてた。毎日看護師と話していて心が楽になったの。初めての入院、初めての手術、いつ食べ物や飲み物が貰えるかわからない不安だった私を看護師が助けてくれた。いつも、傍で話を聴いてくれた。だから、私も看護師になりたいって思ったの。お爺ちゃんが亡くなってからも…初めての『死』が家族にとってどれだけの辛さか…まだ浅いけど色々な経験をしたから、少しでも患者さんに寄り添ってあげれると思った。医師にも家族にもなかなか言えない想いを私が聴いてあげたい!そして、体も心も良くなって退院して欲しい。だから、看護師になりたい!私は迷わない、前を向いて進みたい!』

伯父は黙って彼女の話を聴いてくれた。

そして、伯父は彼女の左拳の傷に気づき表情が変り話し出す。

『みっちゃんの気持ちはわかった。だけど、半端な気持ちでは看護師に慣れない。もちろん、看護師だけじゃない。医師も同じ。他の職種も同じ。

"十人十色“って四字熟語もある通り、一人一人考えも、好みも、性格も、全て違う。一人一人に合わせて心に寄り添い、心を助けてあげる度胸はあるかい!?』

"いつもの優しい伯父さんじゃない…"

キツく話す伯父は真剣な眼差しをしていた。

『生』と『死』が交差する現場。

助ける事が出来なかった『命』

助ける事が出来た『命』

伯父は全てを経験してきた。

だから、彼女に真剣に話をしたのだ。

彼女は口を開き言った。

『度胸もある!やってみせる!』

伯父も口を開き話した。

『学校の資料見せなさい。』

テンダー学園の資料を隅から隅まで読む伯父の表情は真剣だった。

そして再び伯父は口を開く。

『わかった。みっちゃんに先行投資する。』

喜ぶ彼女を横目に話し出す伯父。

伯父の発言にビックリする両親と妹。

『だけど、条件付きだよ。もし看護師の資格を採った伯父さんの病院で働いて欲しい。伯父さんの住んでいる所は雪国の中でも豪雪地帯だ。スーパーに行くのも冬は30分以上かかる。若者が少なく出生率も下がってきている中、高齢化社会になりつつある。県立病院も病床数も減らしてきている。若い医師もなかなか来ない。来たとしても、直ぐ都会へ戻る。もしくは週1での定期非常勤だ。

医師充足度も日本最下位。これは大変な事なんだよ。看護師も同じだ…これからは、県立も個人病院も大切だが、訪問看護と医師も訪問診療が必要になってくると思う。病気や怪我をしていてもなかなか病院へ行けない患者さんは増えていく。そして、その患者さんと家族は不安を抱える…医師と看護師を確保しなくてはならない状態なのに…このままだと最悪な事態になってしまう…みっちゃんにはまだわからない事かもしれないが…

…なぁ…みっちゃん、伯父さんの病院で一緒に患者さんの心を助けてくれないか?答えは来年の推薦時期でいいから。』

伯父の話が彼女の心に刺さった。

"私が知らない場所で、大変な事が起きてるなんて…全く知らなかった…伯父さんがいる県は医者も看護師も足りないなんて…初めて知った…“

彼女は伯父に話し始めた。

『わかった。その時に決める。伯父さん、話してくれてありがとう。あと、話を聴いてくれてありがとう。』

伯父は優しい表情に戻った。


湯船に浸かり両膝を抱えていた彼女は伯父に言われた言葉を思い出していた。

真剣に話してくれた伯父。

"私、今まで何してたんだろう…何浮かれてたんだろう…蓮くんとデートしたいから看護師になりたかったんじゃない。患者さんの心を助けてあげたいから、患者さんの笑顔を見たいから看護師になろうと思った。いけん!忘れてた。私は患者さんの心を助ける看護師になる為に頑張らなきゃ!”


翌日から地域医療や訪問看護の事を調べ始めた彼女。

そして、伯父が住んでいる雪国の事について調べていた。

"雪が4メートルも降るの!?病院が近くにないと患者さんは不安だよね…小さい子も具合が悪かったら直ぐ病院へ連れて行きたいのに…不安だらけだよね…救急車はちゃんと来るのかなぁ…?”

彼女は自分の事より患者の気持ちに寄り添っているかの様に考えていた。




つづく。

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