#砂時計の砂が落ちきる前に(30)
〜あらすじ〜
空は澄んだ色をし太陽が砂時計とカラビナウォッチを照らし出す。時が経っても変わらぬ時計。
彼女の人生は砂時計から始まることになる。砂時計とカラビナウォッチ…
2つそれぞれの時計の意味は何か…
彼女の幼年期から青年期を経て、成長し恋をしていく。
早めに学校へ向かった彼女の足は図書室へ向かっていた。
"消しゴム…アレ…無い…どこ行っちゃったかなぁ…”
昨日座ってた場所、移動した場所を探す彼女。
机の下に潜り込み探す。
『探してるのは、コレでしょ?』
ビクッとし頭を机にぶつけた。
『痛っ!』
ぶつけた頭を手で押さえ、机の下から出て来て声がする方を見た彼女はおもわず声を上げて言った。
『あーっ!!水上光!!』
ニコッと微笑む彼が、使い始めたばかりの消しゴムを持っていた。
『ピンポーン!大正解!水上光だよ!来ると思ったんだぁ!』ルンルンと話をする彼。
彼女は彼に手のひらを出しながら向かって歩き言った。
『返して下さい。』
『いいよー!返してあげる。じゃ、キミの名前教えて。』
"何この人!消しゴム返すのに条件出すのかよ!”
『若葉美月です。』
『可愛い名前だね!初めて後輩からフルネームで呼ばれたよ!美月ちゃん面白いね!』
目を細めイラッとする彼女。
『消しゴム返して下さい。』
彼女をいじり始める彼。まるで、子犬と遊んでいるかの様だった。
『毎日勉強してるけど、美月ちゃんは将来、看護師になるの?医者になるの?因みに俺はね、医者になるよ!一緒の病院で働けたらハッピーだねー!』
"この人なに!?こっちが聞いてもいないのに自分から話すの!?”
『あの、名前言ったので消しゴム返してもらってもいいですか!?』
『ちょっとイラついてるでしょー?イラついてる美月ちゃんも可愛い!』足をジタバタさせる彼。
彼の態度に彼女は出していた手のひらを下ろし声を低くして言った。
『返してくれないなら、もぅ結構です!』
図書室を出た彼女。
"朝から最悪だ…これって嫌がらせだよね?“
昨夜、ガチガチコチンコチンに固くなった体と心を少しほぐしたのに、また彼女の体と心はガチガチコチンコチンに固くなる。
"消しゴムどうしよう…新しいのを買ってもらったばかりなのに…絶対怒られる…”
教室に向かう足取りは重たかった。
授業中は隣の席の生徒に借りてその場をしのんだ。
終会が終わる。
廊下を出ると壁にもたれ掛かる彼の姿があった。そして首には一眼レフのカメラをぶら下げていた。
『消しゴム返してあげるから、ついて来て。』朝とは雰囲気がまるで違う彼。
彼の後ろをついて行く彼女。
着いた場所は写真部の教室だった。
"写真部なんてあったんだ。”
子ども達の無邪気な顔が写し出されている写真。真剣な眼差しで走る陸上部員の写真。体育祭で応援している生徒の写真。花の写真。空の写真。色々な写真が壁中に飾られていた。
『はい。コレ、消しゴム。』
無言で受取る彼女。
彼は、現像された写真を一枚一枚見ている。
『あの、写真部なんですか?』
彼女に、笑顔で明るく話し出す彼。
『そうだよ!部員は俺だけー!美月ちゃん、入部する!?』
『しません。』断固として言う彼女の姿に笑い始めた彼。
『冗談だよー!看護師目指して頑張って勉強してねー!』
『ありがとうございます。あの、一つお願いしてもいいですか?』
ビックリする彼は彼女に近寄り目線を合わせニッコリと微笑み頷いた。まるで子犬のみたいな彼。
彼女は、話し出した。
『勉強で分からないところがあったら教えて下さい。』
『いいよー!じゃ、その代わり…』
"また出た!!条件!!”
『美月ちゃんの写真撮っていい?』
"何!?その条件!変態か!?”
『あーっ!今、美月ちゃん俺のこと変態って思ったでしょ!?』笑いながら話す彼。
"なんだ!?この人は!?エスパーか!?”
目線を合わせていた彼は立ち上がり真面目に話しす。
『別に変態って思われてもいいけど、美月ちゃんは他の人と違うんだよねー!あっ!変わってるって事じゃないよ!表情が他の人と全く違うんだよ!だから、美月ちゃんを撮りたいんだ!』
"やっぱ変態じゃん。”
『考えておきます。』
彼女は一言だけ言い教室を後にした。
彼女が教室の扉を閉める。
彼女が閉めた扉を見ながら、彼はウェーブがかかった様な髪に手を当てニコッと微笑みながら髪を掻いた。
いつも通りに図書室へ向かう彼女。
"事故“の事はすっかり頭から抜けていた。
黙々と勉強する彼女。
静まりかえった学校。
彼女は片付けをする。
《作品を実際に観たい人が居たら正面玄関ホールに飾られているから、観に行って来なさい。》教師が言った言葉を思い出した彼女は、彼の作品がある玄関ホールへと向かった。
写真の前で立ち止まる彼女。
【作品目"恋”】
彼女は言葉を失った。
壁に飾られていた写真は、セピア色で、夕陽が照らし出されて頬に手を当てながら勉強している"若葉美月”の姿だった。
"えっ…私だ…“
『えーーーーーーーーーーっ!!』
彼女の声は静まりかえった、玄関ホールを中心とし一階全体に響き渡る。
驚き職員室から飛び出してくる教師達。
『どうした!?何があったか!?』
心配そうに彼女に話しかける担任教師。
『あっ…すいません。絵に見惚れててー』
『見惚れてそんな声を上げるやつは誰も居ないだろー。お前、だ、け、だ!』
ポンと彼女の頭の上に手を置く教師。
『すいませんでした!』深々と頭を下げる彼女。
謝る彼女の姿を遠くから、微笑みながら水上光が見ていた。
つづく。




