#砂時計の砂が落ちきる前に(26)
〜あらすじ〜
空は澄んだ色をし太陽が砂時計とカラビナウォッチを照らし出す。時が経っても変わらぬ時計。
彼女の人生は砂時計から始まることになる。砂時計とカラビナウォッチ…
2つそれぞれの時計の意味は何か…
彼女の幼年期から青年期を経て、成長し恋をしていく。
第三章 思春期
中学を入学し新たな学校生活を迎えた彼女。
『約束』
頭の中にはその言葉だけだった。
放課後、沢山ある部活へ見学しに行く彼女。
まず、足が向かった場所は『陸上部』
長距離、中距離、短距離、高跳び、幅跳び、色々な種目をしている先輩達。
"蓮くんは陸上部に入部するのかなぁ…”
そんな事を考えながら、ぼんやり見ていた。
次に足が向かった場所は…『サッカー部』
ボールを上手く使いこなす先輩達。上手くパスし、ゴールに向かって蹴る。
"蓮くんはサッカー部に入部するのかなぁ…”
ため息をしながらサッカー部を後にした。
この日、最後に向かった場所は…『バスケ部』
早いパス、相手をすり抜けゴールに向かって飛んでいきシュートを決める先輩達。男女問わずかっこよかった。
"蓮くんはバスケ部に入部するのかなぁ…”
彼の事が、ずっと頭から離れない彼女。
"今何してるのかなぁ…会いたいなぁ…住所も電話番号も聞き忘れちゃったし…大人になるまで会えないよね…てか、会える保証は無いし…”
大人(成人)になるまで8年もある。
彼女は胸が苦しくなっていた。
会いたいに会えない…
話したいのに話せない…
安心したいのに安心出来ない…
なんでこんなにも苦しくなるのだろうか…
早く時が経てばいいのに…
彼女は女性へと変わっていく。髪型はまだショートのままだったが、心と表情は変わっていた。
以前、妹に言われた言葉がずっと頭から離れずにいた。
"恋をすると綺麗になれる”
相手を好きになる気持ち、相手も自分も大切にしようとする気持ち。それが『恋』なのだと知った。
その事を知った今、彼女は彼を頭の中から離す事にした。彼から貰った時計は、そっと机の引き出しに入れ、封印するかの様に閉めた。
そして彼女は"看護師”に向かい勉学を励み始めた。
部活の入部期間が迫る中、彼女はずっと図書室で勉強をしていた。
彼女は部活どころではない。
なりたい夢に向かって必死だからだった。
『カシャ!カシャ、カシャ!』
どこからかカメラのシャッターを切る音がする。
シャーペンを置き、辺りを見渡すも誰も居ない。
気のせいだと思い再びシャーペンを持ち、勉強を進めた。
ふと気付き時計を見ると17時を回っていた。既に部活も終わっている学校内はとても静かだった。
帰る支度を始め、本を元の場所へ戻し、図書室を後にする彼女。
翌日も翌々日も、ずっと変わらず彼女は図書室へと向かう。
担任教師が話しかけてきた。
『若葉は部活入らないのか?』
部活の事すら忘れていた彼女。
『あっ…すみません。部活は入りません。今は勉強がしたいんです。失礼します。』
担任教師は頭を掻きながら、彼女の後ろ姿を見ていた。
"嘘の自分を出すな”
中学入学から、偽りの自分を出すことを辞めていた彼女は、無理をして笑う事なく、笑いた時に笑い、無理して自ら友達を作ることなく、自然と友達ができるようになった。そんな彼女は清々しい気持ちで毎日過ごしていた。彼の言葉があったから今の彼女がいるのだ。




