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Project BLUE LADY  作者: 宇佐視ひろし
第二章 FLIGHT
19/26

第十二話 踊る訓練総隊会議

ま、間に合った……。

 訓練総隊にとって一番忙しいのはいつか。

 それは間違いなく年度始まりの秋口だろう。前の月にOJT教育課程である第九九戦術飛行隊(VF099)が解散し、最上級の四年度課程の訓練生が卒業し、それぞれの任地に赴任。入れ替わりに新入生を迎える。

 しかも行事が多い。新四年度課程生が新たにVF099を編制するため、新しい訓練総隊長を決めなければならず、新体制に移行してすぐに戦科対抗戦。その次は、新三年度(ブルーレイディ)課程生のための新規組上げ主力戦闘機(ブルーレイディ)の受領式典が待っている。

 連合帝国空軍では、二人一組の前席後席(コクピット)ごとに新たに組上げられたブルーレイディを供与している。これは魔法戦闘機の宿命的問題で、戦闘機に施された刻印魔法は使用すればするほど術者に馴染み、性能を発揮するようになる。長期間に亘り高度な運用を続ければ、精霊体と呼ばれる一種の擬似人格を宿し、カタログスペックを上回ることすらあるのだ。

 それ故に、ブルーレイディ現役機三百五十機体制を維持するため、帝国空軍は退役、破損機の再生ならびに新規生産を併せて三十機前後の機体を毎年ヴォンデルランドに納入している。

 この受領式典とその準備には当然、多大な労力を必要とし、はっきり言えば戦科対抗戦より忙しい。今年は二十八機のブルーレイディが一度に納入されるのだから、滑走路と駐機場(エプロン)は満杯になる。しかも、機体を輸送する超大型戦略輸送機(ホワイトストーク)が着陸できるのは、四千二百メートルの第一滑走路だけなので、そこから第三滑走路まで機体を移動させなければならないため、戦略科、伝視科、兵站科、打撃科の演習は全て中止されるという状況になる。整備を含めた地上要員には多大な労力を強いることになるだろう。

 それなのに、四年はVF099への引越し直後のため、お手伝い程度。二年は編制された訓練小隊でのイーグレット実機演習開始時期で戦力外。教官達は新入生の訓練小隊編制を中心に新年度開始業務に忙殺。実質、当事者で主役であるはずの三年だけで式典とその準備を進めなければならない。人手は毎年かつかつである。


 ユリスタン・シュタンジットはまだ暑い日の続く初秋の昼下がり、第三八八期第一訓練小隊の面々とともに食堂の片隅で大量の書類仕事をこなしていた。近くには同期の第四、第六小隊、そして四年の先輩達も同じように書類仕事に精を出している。

 年度初めは毎度こんなものだ。組織の体制や使用備品が変わったり、予算編成をしたりと各個人に襲い掛かる書類の山。航空機搭乗員の宿命だ。

 訓練生は暑い中、訓練、演習、講義でくたくたになった身体を押して、空き時間を利用して、空きスペースで書類をこなす。

 その中でユリスタンは早々に自分の作業を終え、相棒や仲間達の作業を待ちながら訓練総隊の日程を改めて確認していた。別に相棒のアイザック・ジュピタスに小隊業務を押し付けているから、彼の作業が少ないのではない。彼個人と訓練総隊の業務は合わせれば小隊員の誰よりも総量は多いのだが、恐るべき正確性と処理能力であっという間に終わってしまうのだ。当然、小隊長を待たせないために仲間達も全力で事に当たるため、書類の速さでは比類ない力を持つ第一小隊。

 今年の納入は二十八機。改めてその数字は感慨深い。

 ヴォンデルランドは慈善事業ではない。毎年、訓練に付いて行けない者、体調を崩す者、家庭の事情など様々な理由で退行していく者がいる。もちろん、事故もある。

 ブルーレイディ課程に一緒に行けるのは、二十八組五十六名。うち、五名は、相棒をなんらかの事情で失った先輩。一緒に入校した七十二名中退校十七名。同期入校のうち四名は新たな相棒を求めて、二年度課程に編入されている。幸い同期に亡くなった者はいない。

 それでも多くの者が去る。その現実が数字となって現れている。

「ユリ。これでいいか?」

「ユリと呼ぶな」

 アイザックに軽く悪態を吐きながらも、書類はきちんと受け取りチェックするユリスタン。問題は無い。

 それを皮切りに続々と仲間達から書類を手渡されているうちに、いつの間にか第四、第六小隊の書類まで目を通していた。

 ん?いつの間に?と思ったが、どうせあとで確認するのだからついでにやってしまえと、それすらさらりとこなす。

 そんな彼の耳に、手隙になった訓練生達の会話が耳に入る。

「なあ、聞いたか?」

「例の噂?」

「わたしも聞いた」

「だとすると、やっぱりアレだよな」

「ああ、総隊長は……」

 ちらりと視線を向ける。第六小隊の男子二名と女子二名が話の中心のようだ。ちらほらとユリスタンの名や、第三小隊の面々の名前も出ている。その内容には釈然としない何かを感じた。

 気になった彼だったが、急に勢い良く立ち上がったアイザックに驚かされる。

「おい。まだ作業している奴がいるんだから、騒いで邪魔するな」

 珍しく棘のある彼の注意に、訝しく感じたユリスタンは気付いたら口を開いていた。

「待て」

 去ろうとしていた訓練生達が立ち止まる。呼び止めたユリスタンの手は、自分と小隊分の書類をブリーフケースにまとめている。

 それを見て天を仰ぐ、アイザックを含めた第一小隊の何名か。

「その話、詳しく聞いてもいいか?」

 ユリスタンの問いに訓練生の一人が頷く。

「アイザック。あとは任せていいか?」

「ああ、その……、なんだ……」

 露骨に歯切れの悪い相棒。

「なんだ?無理か?」

「そんなことはないんだが……」

 やっぱり歯切れが悪い。どうやら、この件は自分に聞かせたくない類の話らしい。ユリスタンは苦笑した。

「心配するな。念のための情報収集だ」


 彼は忘れていた。

 食堂を出て休憩スペースの一つで訓練生達の話を聞き出したユリスタンは、ある意味重要なことを思い出していた。思春期という奴は、どうしても特定の病にかかりやすいということを。

「貴様ら、そんな話本気で信じているのか?」

 なかば、いや九割九分呆れたユリスタンの問い。話を教えてくれた男女四人は、そんな彼に戸惑っているようだ。

「だって普通不思議に思うだろ?」

「個人成績三位で訓練総隊長に聞いたことないぜ」

「そうよ。シュタンジットの方が相応しいわ」

「みんなおかしいと思ってるよ」

 口々に放たれたのは、第三訓練小隊長に対する醜聞。

「それは首席なのに総隊長になれないのは、前代未聞だと言いたいのか?」

 冷笑を浮かべ皮肉を口にするユリスタン。

 四人は気まずそうに目を逸らした。

 いじめるのはこれくらいにしよう。

「冗談だ。……それで、不正を働いているはずだと言いたいんだな?カルランザが」

 自分の冗談が冗談だと受け入れられ難いということを、あまり理解していないユリスタンは、四人が四人とも萎縮してしまっているのに首を傾げた。

「別に異常というほどのものじゃない。私とカルランザの成績に大きな差があるわけじゃない。一番の異常はフルセクターだろう。あの特殊事例に比べれば、カルランザは常識の範疇内だ」

 彼らの緊張をほぐす為に発した言葉は、意外にも効果があったようだ。

「そういうことじゃないわ。カルランザが不正……。いいえ、不正なんてものじゃないわ。教官を誑し込んでいる可能性すらあるのよ」

 思わずといった調子で声が大きくなる女子訓練生を、ユリスタンは睨み付けた。

「静かに。それが事実だったとしても、その発言は自分の立場を悪くするぞ。分かっているのか?」

 ことの重大さに気付いたのか、しきりに辺りを窺う四人。だが、誑し込むという不穏当な発言をした彼女――第四小隊のユタ・ニルサークだったか――は不満そうだ。

「事実だったら、なおさら問題になるだけじゃない。教官と男女の仲になれば訓練総隊長になれるなんて不潔よ。あり得ないわ」

 確かにあり得ないが、彼女自身の問題はその潔癖症か。女子ならば往々にしてあることとはいえ、それが第三小隊全体を下に見るということになってはいないだろうか。

 第四小隊も第六小隊も、どちらかというと第一小隊同様成績優秀者の集まりである。そして、ユリスタンのように総隊長候補ぐらいにしか分からないことだが、純粋な志願者というのはこのヴォンデルランドで実は限られた層なのだ。家庭の事情、社会的地位など一種の強制力を伴なって入校する者は多い。第三小隊は顕著で、純粋な志願者はユリスタンのお気楽な幼馴染くらいだろう。

 一方、第四、第六小隊は基本的に志願者で構成されている。当然、士気も成績も良好だが、それが間違った方向に――第三小隊と彼らを中心とした訓練生達を不当に蔑む空気になってはいないだろうか。

「貴様が嫌うのは、カルランザか?それとも第三小隊か?」

 ユリスタンの問いかけに、ニルサークは眉を顰めた。

「そこに何か違いがあるの?」

 つまり、士気が低く、素行も成績も決していいとはいえない人間の集まりから、戦術科訓練生の顔とも言える訓練総隊長が選ばれることが気に食わないのだろう。

 去年までのユリスタンなら同意するだろう。しかし、最低の士気ながら最高の魔法師であるレクス・キャロイの活躍や、環月祭での幼馴染の努力など、色々な出来事に直接触れてきた者としては素直には受け入れられない考えだ。方向性が間違っていたり、常軌を逸していたりするが、彼らの努力は間違いなく本物だ。

「貴様らは、第三小隊は不要な存在だと考えているのか?」

 男子二人は微妙な表情を見せて、ほっとしたのもつかの間、ニルサークともう一人の女子――第六小隊のミリューゼ・コミネは頷いた。

「その通りよ」

「そうです」

「では、その理由を聞こうか?」

 ユリスタンは平静を保ったまま問い返した。

「シュタンジットは彼らが必要だと思ってるの?」

「私はまず貴様らの意見を聞いているんだ」

 逆に問い返され、にべもなく淡々と切り返すユリスタン。

 一瞬不満顔を見せたニルサークだが、はっきりと意見を口にした。

「第三小隊が、周りの士気を下げているのは事実だわ。才能があるからという理由だけで、成績にかかわらず評価されるなんて納得いかないわ。他にも努力している人がいるわ。彼らに対する評価は不当だわ」

「評価が不当だという根拠はなんだ?」

「第三小隊は問題を起こしても、処分が軽い。これはみんな疑問に思っているはずよ」

 なるほど一理ある。第三小隊は入校以来、問題を度々起こしていることで有名だ。キリハラの暴行事件は三回、キリハラとリンデルそしてマリが絡んだ整備中隊との諍い、キャロイの殺傷魔法行使未遂、そして環月祭の展示飛行小隊乱闘事件。よくもまあこれだけの事件を起こすものだと思うほどだが、いずれも軽い処分で済んでいる。

「なるほど。ならば、何故事件の時にそれを意見具申しなかったのか?」

「いちいち他人の処分なんて気にしません。でも、訓練総隊長の選任が近付いたら気になったんです」

 返答したのはコミネだったが、なるほどこれも一理ある。だが、ユリスタンはアイザックから総隊長になるなら気にしておけと言われており、年上の相棒をそれなりに尊敬している彼はその通りに実行してきた。

「そうか。だが、少し前提が間違っている。まず、キリハラの暴行事件はいずれも訓練小隊編制の前のことだ。これは調べればすぐ分かる。処分が軽かったのは、いずれも正当防衛が認められた。知ってたか?」

「正当防衛?」

「ああ。詳しくは教官に聞け。ま、ひとつは一年の時のニックに対するいじめを、力ずくでやめさせたことだな。これには、今の私には感謝するしかない。整備中隊の件は幸い誰も怪我もしてなければ、損害も出ていない。キャロイの件は、あれも私絡みだが、後輩を複数人相手から守るために威嚇として詠唱を行なった。怪我をしたのはむしろ殴られたキャロイだ。まだ、あったか?」

「つまり、全部正当な理由がある行為ですか?」

「概ねそのように私は理解している」

「納得できないわ。都合がよすぎる」

 苦笑いのユリスタン。女子は不満そうだが、男子は微妙な表情を見せた。

「だが、私の手に入れた情報ではこんな感じだな」

「シュタンジットはカルランザが総隊長になった方がいいと考えてるのか?」

 第四小隊のデルタ・カルナスだった。

「いや、そういうことじゃない。訓練総隊長を選ぶということをそう短絡的にして欲しくはないということだ。いらない騒動は起こすもんじゃない」

「じゃ、カルランザとディータ中尉の件も根拠がないということですか?」

 女子二人は、とことんカルランザを追い落としたいらしい。何が彼女らをそこまでさせるのだろうか。

「何度も言わせるな。あまり大きな声を出すな。貴様は中尉を退官に追いやりたいのか?」

 一番刺激的な問いかけで、切り返すユリスタン。人が通らないわけではないこんな場所で、滅多なことは言わない方がいい。

 牽制が効いたのか、四人は一斉に口を結んだ。どうやら、尊敬する中尉を破滅に導くつもりはないらしいので安心するユリスタン。

「なら、カルランザを放校に追い込みたいのか?その場合も放校理由は明記されるから、中尉の経歴に傷が付く。今後のキャリアは終わりだな。そのリリースボタンを押す覚悟はあるか?」

 比較的緩和したつもりだったが、四人とも顔を青くしている。どうやら、そこまで考えが至ってなかったらしい。

「なら、カルランザの総隊長選任をやめさせたいんだな?なら、きちんとした状況を提示するべきじゃないのか?誹謗中傷は、言った方も傷付くことを覚えていたほうがいい」

 後半は完全にアイザックの受け売りだが、ユリスタンも同感だ。

「でも、事実なら……」

 ニルサークはまだ言ってる。

「正直言うと、それは無いと思う。カルランザは毎日激務だ」

 冷静に考えれば分かる。ユリスタンでさえ驚くほどハヤト・カルランザという男は勤勉だ。たぶん才能というものは彼の幼馴染ほど持ち合わせていないし、ユリスタンのような実務能力も持ち合わせていない。しかし、遊ぶ暇も無く職務と努力を続けている。そんな奴がどうやって上官と関係を持つというのか。

「そうかしら?まあいいわ。少なくとも、私達はあなたが総隊長になることを望んでいるのよ」

「そうか。だが、私は正々堂々と総隊長になりたいので、そこのところは考えてくれ」

 四人はユリスタンの宣言に渋々頷いた。


 しばらくたって、ようやく解散となったが小隊のもとに戻るのも面倒になったユリスタンは、そのまま休憩スペースで自身の仕事をこなすことにした。次の講義まで少し時間がある。今のうちに、片付けられることは片付けておきたい。

 ふと届いた近付いてくる聞き覚えのある声に、ユリスタンは立ち上がった。

「お疲れ様です。先輩方」

 ちょうど休憩スペースに辿り着いた、BDU姿の女性二人。ユリスタンが挨拶すると、虚を突かれてぽかんとする。

「驚かすな、シュタンジット。こんなところで何してるんだ?」

 きらきら輝く肩までの金髪をゴムで一つに束ねた、ロアシーズ・フェルクライン准尉は苦笑を浮かべている。ロアシーズ達は今月から第九九戦術飛行隊所属扱いになっており、准尉に任官されていた。

「色々ありまして。ちょうど、今後の訓練総隊のスケジュールについて確認していました」

 その返答に彼女は笑みを深めた。

「明後日の総隊で詳細は詰める予定だろ?」

「いえ、念のためです」

「シュタンジット訓練生は予習を完璧にする主義か?復習の時間が無くなるぞ」

 自動販売機で飲み物を買う、ロアシーズ達から笑いが漏れる。

「予習を多くやっておけば、復習の効率は格段に上がります。事前に色々と想定しておくことで、事態の変化に対応しやすくなると思います」

 するともう一方の女性、戦術魔法師のアリア・ネルー准尉がからからと笑い声を上げた。ロアシーズ同様すらっとした長身で、艶のある真っ直ぐ伸ばされた赤毛を背中まで垂らした陽気な女性だ。

「ロアの言う通り、面白いねこの子」

「こ、こら。あんまりそういうことバラすな」

 心外だ。ユリスタンには面白いことを言った自覚は無い。そして、ロアシーズまでもが自分をそう思っていることには納得いかない。

「べ、別にそんなつもりじゃないんだが……」

 ロアシーズがしどろもどろになる。

「何がですか?」

 なんとなく思ったことを口にしてみたユリスタン。

 爆笑するアリア。

 実に心外だ。


「それで話というのは?」

 アリアとともにオレンジジュースを買ったロアシーズは、何故かシュタンジットと話があると言って休憩スペースに残り、彼にコーヒーを奢ってくれた。

 とは言っても、彼にはあまり時間が無いので自ら問いかけたわけだ。

「ああ、実はカルランザのことなんだが……」

 まさか、上級生まで噂が広がっているのか。

「……ディータ中尉と、その……」

 ユリスタンの危惧したとおりの話だった。言いづらそうにもじもじとしているのが、奇妙だ。

「そんなわけないじゃないですか」

 思わず呆れ口調になるユリスタン。

 途端、ぱっと破顔するロアシーズ。ユリスタンに満たされるのは違和感ばかり。目の前の女性は、こんなにも分かりやすい人柄だっただろうか。

「そ、そうだな。そんなわけがない。あんなに私が扱き使ってるのに、そんな暇があるわけがない」

 扱き使っている自覚はあったのか、と小さく嘆息するユリスタン。

「それで次の総隊長の件ですか?自分も当事者なのですが……」

 第三八八期の訓練総隊長候補は二人いる。間違っても本人の前でする話ではない。

「それはそうなんだが、やはり貴様はカルランザを傍でよく見ているだろ?」

「第三小隊ほどじゃありません」

「いや、違うな。小隊員は、たとえ彼らがどんな突飛な性質の持ち主であっても、小隊長として見るもの。貴様は、同格の立場でカルランザを見ている数少ない人間だろ?」

 さり気なく第三小隊の面々を扱き下ろしているのだが、なるほどその話は理解できた。

「羨ましいと思うぞ。私やヒューイにはそういう仲間は少なかったからな」

 と言って、ジュースを口にするロアシーズ。

「代わりにお互いがそういう関係なんですね」

 途端、ジュースに咽るロアシーズ。一体今日はどうしたのか、いつもの総隊長らしくない。

 仕方なく、咳きこむその背中を擦っていると、ロアシーズはユリスタンを涙目で睨み付けた。

「貴様はわざとやってるのか?」

「は?」

 意味が分からん。

 そんな彼の心情を見て取ったのか、ロアシーズの目尻がつり上がる。

「ああ、やめだやめだ。やはり貴様はカルランザの言うとおり、女の機微には疎いようだ。カルランザと中尉のことで何か知ってるかとおもったのだが、ほんっとうに役に立たん」

 急に立ち上がり、何故か怒り出し立ち去ってしまった。

 あまりのことに、呆然と彼女を見送ってしまったユリスタン。

「何してんだ、おまえ?」

 声に振り返ると、アイザックは心底呆れ果てている様子で自動販売機に寄りかかっていた。

「私にも……」

「ん?」

「さっぱり分からんのだが……」


 会議?

 なんでそんな面倒なものに出ないといけないの?

「成績上位者にも関係のあることだから、一応見に来いってことよ」

 口に出してもいないのに、レクス・キャロイの心情を酌んだエリナ・フルセクターは、切れ長の目で左隣の彼を一瞥した。

「エリナは分かるけど、なんで僕まで?」

「操縦技能と魔法は文句なしのトップじゃん。わたしの方が意味分かんないよ」

 答えが返ってきたのは、前を歩く長身の女子、マリ・コルリー。その褐色の頬が不満で少し膨れているのがレクスにも見て取れる。

「君も次の小隊長候補だからだよ。仲良くしようね」

 妙にさわやかに言い放つのは、リデル・スターン。何を考えているのかさっぱり分からない、無駄にさわやかな笑顔だが、ハヤトの相棒として充分に仕事をこなしているのは確かだ。

 そんなリデルに、マリはわざとらしく身体を震わせてみせる。

「うわ。寒気がした。あんたが言うと胡散臭さ半端無いわ」

「酷いな。僕は本気だよ」

「これでも、てわざわざことわりを入れるくらいには自覚あるんだ」

「嫌だな、言葉のアヤだよ」

「随分便利なアヤだ」

 と言い合いつつ、談笑している二人。

 なるほど隊長候補とはこういう人種を指すのか、とレクスは一人納得していた。大いに勘違いではあるが。

「そんなに嫌かしら?」

 エリナの問いかけに、レクスは首を傾げる。

「嫌っていうより、メンドい?ブルーレイディのこともっと調べたいし」

「めっずらしい。やる気じゃん、レクス」

 耳ざといマリ。

「実装されている重力魔法試してみたくない?五十フィートで音速出る流体制御とか、二十G旋回できる翼制御とか、他にも色々あるよ」

「最初からグラヴィティ使えるの、あんただけだってば……」

 苦笑しつつも、二機編隊(エレメント)を組む戦術魔法師のやる気に、少し嬉しそうなマリ。

 しかし、それを極寒の冷気を伴なって貫く視線が一組。

「エリナぁぁ。睨むなぁぁ」

 呆れたマリ。はっとして顔に手をやってるエリナ。

「私、睨んでいたかしら?」

「睨んでた、睨んでた」

 他の訓練生ならエリナの視線に恐れ戦くだけだが、今のマリは簡単にあしらう。

「マリに嫉妬するのは、時間の無駄だと思うよ」

 空気を敢えて逆読みするのは、リデルの得意技。

「確かにその通りだけど、あんたの言い方には九十九パーセントの悪意を感じるわ。わたし、絶対あんたより先に昇進して顎で使ってやる」

「さすが笑う悪魔ちゃん。恐いよね?レクス」

「僕に振らないでよ。本当に恐いんだから」

 思わずリデルに返答するレクス。

 その目の前で脳天を勢いよく叩かれるリデル。

「わたしをその名前で呼ぶな」

 返す刀で即座に翻る平手が向かう先は、レクス。

 やばい、と思ったときには頭上でぱしっと小気味いい音がしていた。だが、待ち構えていた衝撃は無い。見上げると、エリナの左手がマリの右手を受け止めている。

「レクスに手を出さないで」

「あんた、ほんとこいつのことになると見境無いわね」

 睨み合う二人。悪魔と殺人兵器のにらみ合いに、冷たいものがすっと伝うレクスの背筋。

 不意にマリが視線を外した。

「あ、リアじゃん。どうしたの?」

 思わず振り返るレクスとエリナ。マリがリアと呼ぶ相手は、ミリアナ・シュタンジット。二人にとっては因縁浅からぬ相手である。

 咄嗟に振り返ったレクスのみぞおちに衝撃。一瞬、呼吸が止まる。

「本人の前で恐いとか言うな」

 勝ち誇ったような満面の笑みを浮かべ、左拳をレクスにめり込ませているマリ。やはり笑う悪魔にしか見えない。

「……はい。ごめんなさい……」

「うん。よろしい」

「レクス!?」

 何処に行っても、誰がいようと騒がしいのがカルランザ小隊クオリティ。


「何これ?」

 戦術科訓練総隊の年一回の大会議のために用意された会議室に入った途端、マリは眉を顰めた。

「みんなやる気充分だね」

 右斜め上を行くリデルの発言が皮肉たっぷりであることは、さすがのレクスでも分かる。

 会議室中央にコの字型に卓が配され、中心の議長席付近でハヤトやユリスタンを含めた訓練総隊幹部達が既に着席し、打ち合わせを始めているがその様子はどこかぎこちない。左右の卓には三年と四年の小隊長が腰掛け、その後ろの何脚かの椅子には、二年以上の部門別優秀者や次期小隊長候補達。

 その雰囲気はお世辞にもいいものではない。

「なんか既視感(デジャヴュ)だ」

 心底嫌そうなマリ。

 レクスはそんな中見知った顔を見つけ、そちらに向かった。

 ざわつく会議室内。それは気になったが、それよりもこんなことになっている原因の方が彼には重要だった。

 レクスの顔を見てぎょっとする相手。

「人の顔を見て、そんな顔するなよ。アイザック」

 レクスの拗ねたような表情に、端正な顔を少し歪めて苦笑いの同期第一訓練小隊のアイザック・ジュピタス。

「わりぃ。お前がそういう奴だって忘れてた」

「なんだそれ?」

「何しに来たんだ、キャロイ。ここは貴様のいるべき場所じゃない」

 露骨に不機嫌な声は、アイザックの隣に座る銀髪の青年、シルヴァ・イラング・リーヴハン。切れ長の目が、彼の得意な刀を思わせる鋭さでレクスに差し向けられる。

 だが、レクスは意に介しない。

「いいじゃん。知り合いと話して何が悪いんだ?」

「今は貴様と我々は敵同士だ」

「はあ?」

 さすがのレクスもイラっとした。

「シルヴァ。あんまり話をややこしくするな」

 窘めるアイザック。だが、シルヴァは止まらない。

「状況も理解出来ないガキが。さっさとどこかに行け」

 言いがかりもいいところだ。レクスはこの険悪な空気の原因を知りたくて、先に着席していたアイザックに話を聞こうと思ったのだ。そのうえで、自分に何か出来ることがあるかもしれないと思っただけだ。

 そこに、このシルヴァの身に覚えの無い拒絶。

 レクスの中にすうっと広がる冷たいもの。

「リーヴハン……!」

「ふうん」

 いつの間にかそばにいたエリナが、シルヴァに食って掛かろうとした瞬間、レクスの口から零れた音。室内の多くの人間が二人のやり取りに注目していたせいで、その声はやけに大きく響いた。

「だから、戦争に負けるんだ」

 凍りつく会議室。静まり返る室内。ハヤトとエリナが目を見開き、ロアシーズとユリスタンが目を細め、リデルがニヤニヤし、マリとアイザックが天井を仰ぎ見る。直接言われたシルヴァと、他の訓練生はぽかんとしている。

 レクスが口にしたのは、この場では紛れもない禁句。ノウサウェイを奪われたとはいえ、未だ戦争は継続中である。勝敗は決してしない。政府と軍の見解を、なんでもないことのように否定したレクス。勝利のために訓練を受けているこの場全てを、彼は敵に回したといってもいい。

 痛いほどの沈黙――それを、解消するように咳払いひとつ。

 目を転じると、会議室の中央で打ち合わせしていたロアシーズ・フェルクライン現訓練総隊長が、努めて平静を保った様子でレクスを見つめていた。その目は決して冷静とは言えなかったが。

「貴様の発言は、戦場で戦っている者たちへの冒涜か?」

「いいえ。少なくとも、フェルクライン少将閣下が戦争中してくださったことには今でも感謝しています」

 返答して、ロアシーズに直接言ったことがなかったことに思い至るレクス。

 予想外の発言にぽかんとするロアシーズ。その隣でにやりとしているハヤト。レクスはその意味が今ひとつ分からなかった。

「そうか。なら、先ほどの発言について、ノウサウェイでの作戦と絡めた貴様の見解を聞こうか」

 会議室の入り口から放たれた落ち着いた声音。訓練生全員が慌てて立ち上がろうとするのを手で制し、声の主はレクスの前へと進み出た。

 青色の軍服を纏った壮年の将校、戦術科長ケネル・アトハウザー大佐はレクスの暴言を窘めるでも叱責するでもなく、卓の一つに腰掛けながら興味深そうに向き合った。

 さすがのレクスも、衆人環視の中――鬼の形相のカッツ大尉を含めた、到着したばかりの教官達もいる中、真正面から見つめられて動揺を隠せない。

 そんな彼に、大佐は諭すように語りかける。

「貴様の発言で多くの仲間達が動揺し、中には傷付いたり、憤ったりしている者もいる。ここにいるのは一介の訓練生ではない。訓練生の中でも特に高い資質を持った――そうだな、影響力を持った者達だ。それは貴様も含めてだ。なら、その発言には責任を持たなければいけない。分かるな?」

 レクスは即座に踵を合わせ、姿勢を正した。

「僭越ながら、アレクザルト・キャロイ訓練生、発言させていただきます」

 アトハウザーは静かに頷いた。

「自分は、自分の故郷と……姉であるエイリシーナ・キャロイ……少佐がどういった戦争に巻き込まれたのか知りたくて、戦闘詳報や当時の行政資料新聞等で閲覧できる限り調べてみました」

 ざわつく室内。そこにあったのはあの(・・)劣等生であるレクスがそんな資料に目を通していたことへの感嘆。そして、戦闘中に行方不明(MIA)とされ、二階級特進となったキャロイ大佐(・・)を最終階級で呼んだことへの驚嘆。

「奇襲と、その陽動でサウズアイル諸島は占領されましたけど、フェルクライン少将の、情報工作と自分達占領された住民への支援は効果を発揮していました。イグドラシル連邦の進軍は確かに止まりましたから。それに自分達は見捨てられていないと感じることが出来たので、頑張ることが出来ました」

 視界の隅でハヤトが頷いている。

「貴様らをイグドラシルが弾圧することはなかったのか?」

「イグドラシルは戦略の目を持っていなかったのではないでしょうか。島の特殊部隊は情報収集だけをしていました。その情報を元に空軍の攻撃がされていたと戦闘詳報にありました。鳥人(バード)達はその情報が島から漏れていることに気付かなかったのでは?」

「なるほど、それで敵は空軍の相手にかかりっきりで住民の相手をしている暇はなかったと。だが、いつかは敵部隊のフラストレーションが溜まって爆発するのではないか?」

「はい。自分の考えでは、フェルクライン閣下はタイミングを計っていたのでは、と思います」

「タイミングとは?」

「サウズアイル奪還のタイミングです。フラストレーションの爆発と併せることで、大打撃を与えられると思いますけど……」

「そうだな。少将ならそこまで計算に入れるだろう。しかし、それは実行されなかった。何故だと思う?」

「はい。第三〇三戦術飛行隊(VF303)の配置転換です」

 多くの訓練生が首を傾げる中、ハヤトは黙って成り行きを見守り、ロアシーズが顔を顰めた。教官達も一斉に表情を曇らせた。カッツ大尉ですら。

 アトハウザー大佐がゆっくりと頷くのを見て、自分が事実に近付いたと認識したレクス。

「VF303はそれまで対イグドラシル戦闘鳥(グリフィン)部隊戦で圧倒的な戦果を挙げてきました。総撃墜数四万七千。これは他の戦術飛行隊の一.五倍だそうです。当然、サウズアイル奪還の中核になるはずです。ですが、作戦開始の二日前、いきなり配置転換になって、代わりに第二〇二戦術飛行隊(VF202)が派遣されました」

「VF202では役者が足りなかったか?」

 VF202は、帝国本土東メーンラント方面隊に属するブルーレイディ部隊だ。最前線ではないが、帝都防空を担う錬度では最高峰の部隊だ。

「いいえ。しかし、それまでノウサウェイ方面隊は戦略科、兵站科を除けば自分達の戦力を中心に作戦をしていましたから、突然の配置転換は混乱を招いたのではないでしょうか?」

「その根拠は?」

「作戦決行が四日遅延しました。VF202のサウソールド基地の到着前後、多数のフライトがキャンセルされています。それらのフライトが再び行なわれたのはだいた四日後です」

 大佐は満足そうに頷いた。

「諸君らは理解していると思うが、四日の作戦遅延は相当な痛手だ。軍は存在しているだけで物資を消耗するし、敵の守りは強固になる時間を与えることになるだろう。作戦中のローテーション計画にも当然狂いが生じる。では、何故このような事態になったのだろうな?」

 最後に向けられた問いかけに、口を開くレクス。

「名目はVF303の連続作戦時間の超過でした」

 連続作戦時間は搭乗員の損耗を抑えるため、連合帝国空軍ではとりわけ厳しく設定されている。具体的には各搭乗員平均で月四十時間、三ヶ月で百時間となっている。

「当時のVF303は平均で月七十時間超。キャロイ少佐機では百五時間だったそうです」

 四年度課程の訓練生達が顔を顰めた。VF099の飛行時間は月二十二時間。それ以外の訓練小隊では月十八時間となっている。百五時間というのは想像したくない数字だろう。

「配置転換は妥当ではないかね?」

「そうですか?」

「どこに疑問があるのかね?」

「僕にはよく分からないんですけど、戦いには流れがあるのではないでしょうか。それまで流れの中心にいたのはVF303です。ノウサウェイ方面隊と東メーンラント方面隊が協力してローテーションを考えれば、VF303の負担を減らすことは出来たのでは?」

「一理あるが、空港施設は無限にあるわけではない。どうする?」

「地上施設は二、三日なら超過稼動できませんか?」

「不可能ではない。一週間以上は難しいが」

「なら、それとメーンラントからの直接攻撃を組み合わせるというのはどうですか?」

「現地での行動時間は限られるが、可能ではある」

「もし、VF303の作戦時間が問題なら、そして本当に戦争に勝ちたいなら、いくらでもやり方はあったと思うんです」

 それまでアトハウザー大佐を見て話していたレクスが、会議室内の訓練生を見回す。レクスの話を真剣に聞く者、笑みを浮かべる者、目を逸らす者。それぞれの反応。

 レクスが語った内容に、見え隠れするもの。戦争に勝つことではなく、その後の力関係に注意が行くあまり肝心の戦争に負けた。それは政治の力学。

「戦争に勝ちたいなら、くだらないことをしていないで本気で取り組むべきです。戦術科訓練総隊もそうであるべきです」

 劣等生と言われたレクスから放たれた、疑いようのない正論。訓練総隊長を決める場で要らぬ騒動を起こそうという者達への痛烈な批判。

 それを聞いて、顰め面で腕を組むアトハウザー大佐。

「不合格だな」

 大佐の断言に会議室内がざわつく。

「そうですか」

 評価に興味が無かったレクスに、僅かに苦笑する大佐。

「論は甘く隙だらけ。根拠もまだまだ薄い。結論もあいまいで意味を成さない」

 ぼろくその評価に、エリナが髪を逆立てんばかり形相をしているのを見て、レクスは苦笑した。

「ただ、問題提起としては充分だな。諸君も知っての通り、サウズアイル奪還は失敗した。その後、イグドラシル本国とサウズアイル双方からの侵攻でノウサウェイ本島まで陥落した。順調に推移していたはずの戦争が何故か後退する羽目になった実例といえるだろう。諸君も肝に銘じておけ。――フェルクライン総隊長」

 大佐がロアシーズを呼ぶ。

「はっ」

「お母上の決断は立派だった。大挙して押し寄せるイグドラシルの軍勢を前に、ノウサウェイ州の全住民の退去を実行し、陸空の戦力をほぼ温存したまま後退し、新たな防衛線を築いた。凡庸な将校には決して出来ることではないと、私は思っている」

「ありがとうございます。大佐」

 直立不動のロアシーズ。その姿は沈着冷静さを保ってはいるものの、どこか誇らしげな空気も漂わせていた。

 それを確認すると、アトハウザー大佐は卓から腰を下ろし言い放った。

「では、時間は決して無限ではない。戦術科訓練総隊会議を始めたまえ」


 年度始めに開催される訓練総隊会議には、いくつかの重要案件がある。

 一つは予算。昨年度の予算報告と今年度の予算計画の発表、そして三年度、四年度の各訓練小隊の予算計画である。三年度の小隊長といえども、ハヤトとユリスタン以外は初めての参加であり、先輩や教官から鋭い質問や指摘があり、今後二年かけて様々な公式書類作成のノウハウを学ばされることになる。そのガイダンスも兼ねている。

 二つ目は訓練総隊の内規に関するもの。空軍に関する法令の類は常日頃確認されていることであるが、訓練総隊内部のルールである内規の変更に関しては、この機会に報告される。しかし今年度は、寮の管理や訓練施設の使用に関する規定など細かな点に限られているように、毎年たいした問題ではない。

 三つ目が、来月に開催される戦科対抗戦出場選手の決定だが、これは次の最重要案件の後である。

 そして第四の案件が新戦術科訓練総隊長の選出である。レクスの暴言とアトハウザー大佐の戒めが効いたのか、話し合い自体は冷静に推移し、ハヤトとユリスタンの二人が候補となったところまでは予定調和といえた。

 だが、二人に対する質疑応答で放たれた一つの質問が、再び場の空気を悪化させたのだ。

「この場において不適当な発言かもしれませんが、不適当と思われるからこそ、はっきりさせておきたいと愚考いたします」

 三年度課程第四訓練小隊長、セキア・ナリタはそう前置きした途端、何人かが顔を引き攣らせたのを見て、首を傾げるレクス。まるで、後に続く質問を知っているかのようだと思ったのだ。

「カルランザ小隊長が教官と不適切な関係にあるという噂が隊内に流れていますが、その件について、カルランザ小隊長に釈明していただきたい」

 非常に勇気のある発言だった。戦術科長をはじめ戦術科と整備補給部門の教官も臨席する訓練総隊会議である。上官に対する侮辱と取られかねない。

 しんと静まり返った会議室内に木霊する、カッツ主任教官が鳴らした椅子の音。どうやら大尉はご立腹のようだ。

「不適切な関係?」

「レクスにはまだ早い話」

 重く固くなった雰囲気の中交わされた、レクスとエリナの空気を読まない会話。隣のシルヴァを始め、何人かが二人を睨みつける。

 だが、当の本人ハヤトは静かにナリタを見つめていた。

「カルランザ?」

 何も言わないハヤトに、進行役のロアシーズが戸惑い気味に声をかける。

「いえ、なんでもありません」

 そう返したハヤトの声は、どこか固い。

 怒ってる?ハヤトの淡々とした様子に気付いたレクス。十年以上の付き合いだ。彼の機嫌ぐらいは分かる。だが、その理由がいまひとつ分からない。

 ハヤトは全員の注目を浴びたまま立ち上がり、

「時間は無限じゃない。そう大佐が仰られたのだから、抽象的な質問で無駄にしないでいただこう」

 まさかの回答拒否。ざわつく会議室。第三小隊では恐怖政治を執ることもあるハヤトだが、隊外では公明正大な小隊長とされている。そのハヤトに齎された暴挙に、慣れてない者達がざわつき始める。

 ハヤトはさっさと着席してしまう。

 あちゃあ、というマリの呟き。

「そりゃダメでしょ」

 常識的なマリの感想。対するニヤニヤ笑いのリデル。

「いいんじゃん?面白くなってきたよ」

「ま、確かにね。ハヤトのお手並み拝見」

「手並も何も、自爆でしょう」

 笑ってる二人に鼻を鳴らすのは、シルヴァ。それらを全て見て呆れ返ってるのか、小さくかぶりを振るアイザック。

「まあね。自爆戦術はうちの十八番だからね」

 マリが清々しいまでの笑顔で言い放ち、小さく舌打ちするシルヴァ。

 誤解を招く会話だと思ったレクスは、思わず口を開いていた。

「別に死にたいわけじゃないよ」

 両目と口を見開くシルヴァ。銀髪の美青年の驚愕の様子は珍しい。そして、レクスを睨みつけるのだが、数瞬ももたず溜息とともに頭を抱えた。

 その肩をアイザックがぽんぽんと宥めるように叩く。

 片目でウィンクしながらサムズアップのマリ。まるで、撃墜を誉めるかのような仕草。

 一人、意味の分からないレクス。

「静粛に」

 議場中央で声を張り上げたロアシーズ。よく通る声が瞬く間に広がり、まるでひとつの整然とした波が、他の細波を呑み込んでいくように静まり返る。

 それからハヤトを見やった。その目に込められた、責めるような圧力。

「カルランザ小隊長。さすがにその態度は問題ではないか」

「自分は先ほどの悪意を以ってなされた抽象表現は、皇帝陛下の臣たる連合空軍士官には相応しくないと判断しました。徒に非のない方々を誹謗中傷して、会議の進行を混乱させるような言い方は間違っているでしょう。我が軍の士官たらんとするならば、正々堂々と発言すべきであります。違いますか?」

 窘められたはずのハヤトの、理路整然とした拒絶宣言。立ち上がりもしない。

 ぴくっと頬を動かしただけのロアシーズ。

「……という事らしいが、いかがかなナリタ小隊長?」

 どうやら現総隊長は議長に徹する気らしい。

 ナリタは幾分表情を引き攣らせたが、気を取り直して口を開いた。

「そういう意図があったわけではありません。不快に思われた方々にお詫びします。では、改めて質問致します。カルランザ小隊長が教官と男女の関係にあり、それゆえに訓練総隊長の候補になったという噂です」

 先ほどよりも大きく鳴り響く椅子の音。見ると、カッツ大尉が憤怒の表情で腰を浮かせているが、隣のディータ中尉に押し留められている。

「教官って中尉のこと?」

「そうでしょうね」

 身を寄せて出来る限り声を潜めるレクスとエリナ。

「ふうん。……あの二人ならお似合いだと思うけどな」

「そう?……そうかもしれないわね」

 美しく凛とした古刀のような妙齢の女性と、若いながらも酸いも甘いも知っているかのような老獪さを持ち合わせている雰囲気の青年。うん。ぴったりだ。

 二人で納得しているレクスとエリナに、周囲の者達はぎょっとした。

 ハヤトはそんな二人に小さく苦笑を浮かべてから、立ち上がってナリタに身体ごと向かった。

「つまり、質問の論点は、自分が不正を働いてこの場にいるのではないか、ということか?」

「そ、そういうことになるな」

 ハヤトの気迫の押されたのか、しどろもどろのナリタ。

「その問いに答えるのは難しい」

 再びの回答拒否かと思われたが、ハヤトは続けた。

「何故なら、教官達の意向を一介の訓練生が把握できるはずがない。違うか?」

 訓練総隊長は将来の中隊長、果ては司令官候補である。第三八八期の総隊長といえど、主任教官以下の担当教官だけで候補を絞り込めるわけがない。ヴォンデルランドの他の戦科の教官の影響もある。その意向を知るのは不可能だとハヤトは言った。

「そもそも、自分はここにいるシュタンジットやフェルクライン総隊長と違い、もともと訓練総隊長を志向していたわけじゃない。友人を守るために強くなりたかっただけだ」

 へえ、そうだったんだ。レクスがそんな風に感心していると、第三小隊の面々のみならず、アイザックとシルヴァまでもががっくりと項垂れた。無自覚とはかくも恐ろしい。

 そんな彼らの様子に気付いたのか、深められるハヤトの笑み。

「入隊してから、多くの仲間、先輩方と出会って色々な経験をした。まだまだ未熟なところだらけだと思う。誰かが死ぬのを見るのはやっぱりご免なんだ。皆の生き抜くための力になれるのならば……。そう思って、俺は(・・)ここにいる。セキアもそう思って小隊長をやってるんじゃないか?」

 いつの間にか変化していたハヤトの口調。時折、彼が見せる諭す相手を慮る姿。

「あ、ああ。そうだと思う」

 ナリタが呟くように言った時、柔らかく微笑むハヤト。それを境に会議室内の空気が解れるのを、レクスは感じた。この場にいる誰もが、ハヤト・カルランザという男の度量に触れた。

 確かに、ハヤトとユリスタンの実力は拮抗している。それでも誰もが、ハヤトの器の大きさを感じたことだろう。対抗馬であるはずのユリスタンですら、その目を瞑り何かを受け入れているようであった。

 だが、会議は終わらない。

「さすがハヤト!女の人を庇うのが巧いね!」

 爽やかな笑顔を撒き散らす、まさかの裏切者。第三小隊一番機CFO、リデル・スターン――つまりはハヤトの相棒が放った衝撃。

 ロアシーズとユリスタンが目を剥き、ハヤトが音がしそうなほど凍り付いた。

「しっ!し、ししし、失礼しましたっ!」

 裏切の次は裏返りか?などとくだらない現実逃避をしていたレクスの隣で、素っ頓狂に叫んだのはマリ。

 一瞬でリデルのネクタイと襟を絞めると、もがき苦しむ現行犯(リデル)を引きずって会議室を全力で後にした。その後をアイザックも追って行く。

「こちらは我々で対処します。申し訳ございませんでした。失礼します」

 矢継ぎ早に謝辞を並べると、彼もぴしゃりとドアの向こうに消えた。

 残されたのは重い沈黙。リデルの落とした爆弾は大きい。傾きかけた天秤を逆側に押すのはいい。だが、彼がしたのは天秤をいたずらに吹っ飛ばしただけだった。ハヤトが、意図的に教官との個人的な関係について言及を避けたという事実を置き去りにして。

 誰も言葉を発していない。発していないのに空気がざわついている。落ち着きなく周囲を窺う者、イライラと身体を揺らす者、事態の収拾を求めて総隊長や教官達に必死に眼で訴える者。そんな彼らの息遣いと微かな衣擦れが、ざわざわと蠢く。

 不意に広がる波紋。小さなそれが笑い声だと、その場にいた者達が気付くのに時間は要らなかった。何故なら、注目の中心たるハヤトのすぐ隣でその笑いは起こっていたから。

「シュタンジット小隊長?」

 滅多に見られない彼の笑いに、ロアシーズも怪訝だ。

「失礼。つくづくカルランザは苦労すると思いまして」

 ざわめきが引いていく。この場に似つかわしくない凶悪で不敵な笑み。それはユリスタン・シュタンジットが擡げた顔に浮かんでいたもの。こんな場で、こんな時に浮かべるとは誰も思わなかったもの。

「カルランザ。私から質問していいか?」

 誰も口を開いたり、身動ぎしたり出来ない重苦しい空気の中、ユリスタンだけが言葉を発する。見たことの無い凶相に気圧されたのか、小刻みに頷くハヤト。

 それを確認して、ふっと小さく笑うユリスタン。

「実際どうなんだ?貴様は中尉をどう思ってるんだ?」

 瞬間、まさに瞬きの間、誰にも知覚できない速さで、ユリスタンの襟首を掴んでいたハヤトの左手。

 反射的な行動だったのか、自身の左手とユリスタンの笑みを交互に見やって困惑顔のハヤト。レクスに、子供の頃のハヤトを思い出させる仕草。あの無鉄砲な悪ガキ時代。

 そんなハヤトを、侮蔑とも取れるような冷たい笑みで眺めているユリスタン。

「で、どうなんだ?シャル・ディータのことをハヤトはどう思ってい……」

「貴様っ!」

 激昂。同時に響く、罵声と肉を打ち据える鈍い音。

 反射的に立ち上がったレクス。すぐそばで立ち上がる影。シルヴァだ。互いに気付き、同時に臨戦態勢に。第一(シュタンジット)小隊と第三(カルランザ)小隊の高速魔法の使い手同士が自らの隊長を守ろうと、互いに牽制し合う。

 そんな二人を諌めるように、すっと右手を横にすっと伸ばすユリスタン。襟首を掴まれて吊るされ、左頬を殴られた格好のまま、その目は激昂して、しかし自分の行動にやはり戸惑っているハヤトに冷たく向けられている。

 何故かそれを認めた瞬間、かっと頭に上った血がすっと引いてくのを、レクスは感じた。

「なあ、ハヤト」

 信じられないくらい軽い調子で、笑みさえ浮かべるユリスタン。

「お前のその行動を見れば、だいたい分かるけど、そんなにあの女性(ひと)がいいか?」

「おま、え……。なに言ってんだ?」

「確かに、美人だ」

「おい」

「スタイルだって称賛に値する」

「やめろっ!」

「だけど……」

「やめろって言ってんだろ」

「いい年だぜ?」

 ユリスタンを視線で射殺しかねないほど睨みつけるハヤト。

「へえ。そんなによかったんだ(・・・・・・・・・・)?」

 軽薄な笑みを浮かべるユリスタン。誰の目にもそれがわざとだと分かる。

 だが、ハヤトだけは完全に我を忘れていた。

「貴様。それ以上中尉を愚弄すると殺すぞ」

 本気。おそらくレクス以外、いやレクスですら数年ぶりに見る、本物の殺意をユリスタンに向けている。

 そこにあるのは、上官に対する敬意以上の別の感情。

「それはそれは」

 ニヤニヤ笑みを浮かべるユリスタン。それを見て明らかに怒りのレベルを上げるハヤト。それでも挑発をやめないユリスタン。

「流石だな。中尉はそこまでお前を篭絡したか」

「本気で言ってるのか?」

「ああ、本気だ。俺にはさっぱり分からん。そこまでの女か?」

 ハヤトの表情が凍りついた。絶望に打ちひしがれた顔だ。戦争中に何度か見たことのある親友の顔。胸を締め付けられるようなレクス。

「貴様は中尉の何を見ているんだ?」

 そう問いかけたユリスタンの顔は、先ほどまでの軽薄なそれではない。

「みんなそれを知りたがってるようだ」

 はっと辺りを見回すハヤト。自分の中に隠していたものを曝け出されていたことに気付き、唖然としている。

 そんな親友の姿を見て、自然と頬が緩む。だけど、それを引き出すことが出来たのは、レクスではなくユリスタン。

 その意味が理解できないほどレクスは能天気ではない。さびしく思う彼の右膝を、優しく叩くエリナの左手が暖かかった。


 気付いた。気付いてしまった。気付くべきではなかった。いっそ正気を失ってしまいたかった。あるいは、頭に血が上りすぎて脳の血管を吹き飛ばしてしまいたかった。

 今は戦術科訓練総隊の真っ只中。間違いない。いくら訓練生主体の会議とはいえ、教官達もオブザーバーとして臨席している。

 さて、状況を改めて整理しよう。小さく息を吐くハヤト。

 取り敢えず、左手をユリスタンから離そう。

「すまない。殴ってしまった」

 そっとゆっくりとユリスタンの襟を放すハヤト。

「いや、計算通りだ」

 淡々と応えるユリスタン。

「アイザックの入れ知恵か?使い方を間違えるなよ」

「問題無い。マリよりは心得ている」

 ぷっと吹き出したのは、ロアシーズ。意表を突かれて可愛らしく笑っている姿を見てるとこちらも元気になるのだから、この人も不思議な人だ。

 改めて姿勢を正して、ハヤトは会議室を見回した。

 当然視線が集まってくる。VF099から十四名、三年から十八名、二年二名、教官八名――そこからマリとアイザックがリデルを連行して行ったので、三十九名。そこにあるのは好奇、侮蔑、ある者は嘲り、それでも大半の視線はハヤト・カルランザという人間を見極めようと射抜かれそうなほどの視線を向けて来る。

 ならば、まだ安心だった。

 ディータ中尉の方を見ない。見てはいけない。その心情を窺うような姿勢を見せてはいけない。ここで重要なのは、彼女の気持ちではない。自分自身――ハヤト・カルランザという男の姿なのだ。

「悪いか?」

 半ばヤケクソ、半ば計算の一言に、吹き出した者一名――レクスだった。にやりとした者数名。何故か四年の先輩に多い。残りは訝しげにハヤトを窺う。

 だから、重ねて宣言した。

「俺は、シャルバート・ディータという女性を愛している。それが悪いか?」

 訪れたのは痛いほどの沈黙。だが、それがどうした。この場で今更取り繕って何になる。全部洗いざらい出してしまえ。それで総隊長になれなかったからってなんだって言うんだ。ただの小隊長として働くだけだ。

「初めは凛とした佇まいや、美しい所作に惹かれた。だが、指導を受けて交流するうちに、その内に秘めた少女のような可憐さや可愛らしさ、どこか寂しがり屋な一面を見つけてしまった。そうだな……まさに名前どおり、シャルバート(甘くて蕩けそうな子)に見えた」

 二年と三年の出席者の半数が唖然としていた。だが、何故か残り出席者全員がニヤニヤ笑っていた。

 いや、だから何故だ?

 疑問に思うが、それでも言いたいことは言ってやる。

「これは俺の一方的な感情だ。彼女に伝えてすらいないものだ。貴様らにどうこう言われる筋合いは無い」

「それは、何も疚しい所が無いということかな?」

 先ほどからニヤニヤ笑いの筆頭、アリア・ネルー先輩の質問。

 くだらない質問だ。思わず鼻で笑ってしまう。今更、そんなことになんの意味がある。

「無論です。何度でも言いましょう。一体、なんの問題がある?訓練総隊長?軍での出世?もし、この感情のせいでどちらもダメになるって言うなら……」

 脳裏を過ぎるのはシャルと過ごした数少ないが、それだけに極上の時間。それが一体誰の、何の迷惑になるというんだ。

 総隊長が、そんな物だと言うなら……、

「そんなもんクソくらえだっ!」

 気付いたら、右拳で目の前の机をドンと殴りつけていた。

 終わっ……。

 途端、津波のような音がハヤトを顔面から殴り付けてきた。

 びくっとして顔を上げた彼の視界に映ったのは、歓声を上げて立ち上がり、拍手する四年と三年の半分。

「よく言ったっ!」

「それでこそ総隊長!」

「最高です!」

「カルランザに付いて行く!」

 口々に放たれるのは、ハヤトを称賛する歓声。そのまま会議室の中央に雪崩れ込みそうな勢い。あまりに騒がしいので、もはや何を言っているのかさっぱり分からない。

 ――はい……。はっきり言って意味不明です。

 唖然とするハヤトの前に飛び込んで来たのは、鮮やかな紅い髪をたなびかせたネルー先輩。

「おめでとう。カルランザ!」

「は?」

「VF099は全会一致で君を訓練総隊長に指名するよ!」

 どういうことだと振り返ったハヤトの前で、頭を抱えるロアシーズ。なんだろう、その仕草が妙に可愛らしい。

「私に聞くな。聞かないでくれ。こいつらみんなこうなんだ」

 その瞬間、何故第三八七期、今のVF099が結束しているのか理解したハヤト。揃いも揃ってロアシーズの凛として振舞っている姿と、割と頻繁に見せる可愛らしさのギャップに萌えているんだ。

「やっぱさ、俺達の看板はこういうキメるところはビシッと行く奴じゃないとな」

「そつなくこなすだけの奴じゃつまんねえよ」

「やっぱそうですよね?そうじゃないといけないっすよね?」

「カルランザはやっぱり一味も二味も違うぜ」

 そんな称賛の嵐も、物ともせずがたりと音を立てて立ち上がる人影一つ。さらさらの金髪に切れ長の碧眼。真っ直ぐ伸びた背筋ゆえに放たれる、辺りを睥睨する冷たい視線。

 自然と静まり返る会議室。

 冷然と佇むユリスタンに全員の視線が集まる。

「提案したい」

「なんだ?」

 唐突な彼の発言に、ロアシーズは議長としての役目になんとか復帰した。

「この新総隊長には補佐が必要だと思います。第一小隊ならびに私は、このハヤト・カルランザ訓練総隊長の補佐役を努めたいと思います。正直言って、彼らでは……」

 そう言って辺りを見回すユリスタン。

「心許無さ過ぎます」

「あ、ああ。たしかにな……」

「俺もそう思う」

 真面目に頷くロアシーズに続いて、苦笑のハヤト。その右手が真っ直ぐユリスタンに向かって差し出される。

「さっき殴った手で済まないな」

「問題無い」

「あとでカッツ大尉に殴られるからか?」

「そいつは入校以来だな」

 淡々と返すユリスタン。

 また吹き出すロアシーズ。

 テンションが上がる四年。いい加減、頭がおかしいのではないか、この人達は。

「とにかく、よろしく頼む」

「ああ、しっかりと手綱を引かせて貰おう」

 ハヤトの右手をしっかり握り締めるユリスタン。

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