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神というもの

「つまり、そのライトという少年がタマキさんを手助けしていたんですね」

「そういうことだ。この右腕もライトのおかげだ」

「しかし、まだ話していないことがありそうですね」

「それは終わってから聞けばいいんじゃないか」


 カレンはそう言うタマキの目を見ると、ライトに向かってうなずいた。


「わかりました。そういうことでしたら、今はこれ以上聞きません。それより、十二使徒の刻印は全て消えたはずですが、タマキさんの力はまだ戻っていないのはなぜでしょうか」

「それは、僕の知らないところでさらにもう一つの刻印があるのかもしれません」

「そうですか。ではタマキさん、これを」


 カレンは首から下げていたアミュレットと、サモンが入っている剣をタマキに渡した。タマキがそれを受け取ると、剣から虚無の塊が出現し、タマキの胸に吸い込まれていった。それからアミュレットを首にかけると、すぐにそれが動き出す。


「妙なものを身に付けたようだな」

「ああ、仲良くしろよ、サモン」

「まあよかろう」


 それからタマキは剣をカレンに返し、自分の左手を握りしめた。


「これならいけそうだな。じゃあ、早速敵の本拠地に挨拶しにいくか」


 タマキが先頭に立って歩き出した。カレンとライトがすぐその後に続き、殿はまもると要一という並びだった。


「いやー、恋人の再会っていいもんだねえ」

「まもるさん、あんまりそうやって茶化すもんじゃないですよ」

「茶化してないって、うらやましいってだけ。要一君はそう思わないの?」

「いや、まあ」

「まったく、まだまだお子様だねえ」


 そうしている間に、一向はタマキが壁を破った場所に到着していた。


「さすがに、まだ修理なんて無理だよな。まあそれでいいんだけど」


 まずタマキは穴を潜って中に入ると、あとの四人もそれに続き、まもると要一はその光景に驚いた様子だった。


「すごい、これって大都会風じゃない」

「本当にそうですね。場違いというか、なんというか」


 まもるは盛り上がっていて、要一は困惑している様子だった。タマキはその様子を見て腕を組むと口を開く。


「ここに敵の親玉がいるはずなんだけど、場所はわからない。まあ馬鹿と煙はなんとやらだから、高いところにいそうな気もするけどな」

「でもタマキさん、最初のあの建物からは目を離さないほうがいいと思います」


 ライトの言葉にタマキはうなずいた。


「そうだな、わざわざ違う世界から持ってきたんだから、何か意味があるんだろう。あそこは押さえておくとして、やっぱりこの中は手分けして探さないといけないな」

「それでしたら、私とマモルさんが偵察に出るのがいいでしょう。その建物のことはお願いします。何かあれば私達もすぐに向かいますから」

「ああ、じゃあ行こうか」


 タマキがそう言うと、要一とライトはタマキについていき、残ったカレンとまもるは上を見上げた。


「ではまもるさんはあちらをお願いします。何か見つけたら合図をしますから、タマキさんが言っていた建物で落ち合いましょう」

「わかりました。それじゃ、変身!」


 まもるは変身して飛び去り、カレンも白銀の翼を広げると飛び立った。


 それからしばらくして、タマキ達三人は最初の建物に到着していた。


「ここがタマキさんの言ってた建物ですか」

「そうだ。まだ全部調べたわけじゃないんだよ」


 そう言ったタマキがドアに手をかけると、それはあっさりと開いた。三人は中に入ると、タマキが壊したテーブルが変わらずにそこにあった。


「さて、今度どこから調べるか」


 タマキがそう言った瞬間、轟音が響き、玄関にシャッターが下りた。三人が反応すると、窓にも次々にシャッターが下りて建物が閉鎖されていった。要一はすぐに玄関に駆け寄って確かめたが、ドアは動かない。


「駄目です。これじゃ力ずくでなんとかするしかなさそうですよ」

「いいや、外に出る前に中を調べよう。俺達を閉じ込めたんだから、狙いは分断だろ。それならそれに乗ってやるのも面白そうだ」

「僕もそれがいいと思います」


 ライトが賛成すると、タマキは軽く笑った。


「じゃあ行くか。何が起こるかわからないからちゃんと準備しておけよ、要一」

「はい」


 要一は鉄槌を出すと、先に歩き出したタマキに続いた。


 一方、カレンはビルの屋上に立って天井を確認していた。そこに映る空はまるで本物だったが、それ以外に特に変わったところもない。


 だが、下方の離れた場所から、光が発したのが見えた。カレンはすぐにビルから飛び降りると、真っ直ぐそこに向かった。


 そして、カレンの目の前には全ての窓が塞がれた状態になり、さらに屋上にドームができた建物があった。まもるもさっきの光に気づいたようで、少し遅れてカレンの側に降下してきた。


「カレンさん、この建物って」

「ええ、タマキさんが言っていた建物ですね」

「あからさまに何か起こってる感じですけど、どうします?」

「待ちましょう。何かあればタマキさんが報せてくれるはずです」

「じゃあ、それまで待機ですか?」


 だが、そこでカレンは自分のショートソードに手をかけた。それから数瞬遅れて、建物の壁にあの刻印が浮かび上がった。


「これって」


 まもるは銃を抜いたが、何も起こらない。ただ建物に刻印が浮かんでいるだけだった。


「何も起こりませんね」

「いいえ、あの刻印を中心に力が集中していっています。中で何かが始まったようですね」

「やっぱり待機ですか?」

「はい、外でも何が起こるかわかりません。それに、タマキさんなら大丈夫ですから。もちろん、準備はしておきますが」


 場面は再び変わり、建物内部。タマキ達の目の前には階段があるはずだったが、そこには何もなく、ただの吹き抜けになっていた。


「これがさっきの音の原因か。さて、どういうことなんだろうな」


 タマキがその吹き抜けの上下を覗き込んでいると、上から音がして、何かが降りてくるのが見えた。タマキがそれを見上げると、そこにはスクリーン越しに見た、大柄な男が浮かぶ足場に立っていた。


「直接会うのは初めてだな。というか、こんなところに居ていいのか? 世界を統べる場所とやらがお前の居場所じゃないのか?」

「わざわざ貴様の相手をするためにここまで来てやったのだ」

「それはありがたい話だな。そういえば、名前をまだ聞いてなかったよな」

「我が名はアレインツ。その小さい頭に刻み付けておけ、神となる存在をな」

「アレインツ。わかった、覚えておいてやるよ。どうせここで終わりだしな」


 それからタマキは右手を右目にあて、姿を変えると、左手でアミュレットを握った。


「いくぞ、サモン」


 その言葉と同時に、タマキの左肩から黒いオーラが吹き出し、それがマントのような形になった。それを見たアレインツは足場から飛び上がって上階に姿を消す。タマキはすぐにライトと要一を有無を言わさずに両脇に抱えると、それを追って飛び上がった。


 タマキはそのまま壁を蹴って上に向かうと、屋上に出た。そこはドームに覆われていて、タマキ達が着地すると、その吹き抜けはすぐに塞がった。


 そして、タマキの前には、今までにない力をその身にたたえたアレインツの姿があった。


「お前に刻んだ刻印は役に立った」

「どういうことですか! あれは力を移すだけのもののはずです」

「あれだけならばな」

「でも、あなたに刻印はない。いや、そうだ! この建物はそのためのものだったんですね」

「ほう、よく気がついたな」


 そこでライトの肩を要一が叩いた。


「一体どういう話なんだ?」

「タマキさんの力を分割して、それを一つにまとめた。そして、その力をこの建物にさらに集中させたんです。おそらくここそのものが、力をより研ぎ澄まし、増幅させる役割を持っていて、あの人に集中させるためのものです」

「ふーん、まわりくどいことをやるな。そこまでして俺の魔力が欲しいもんか」


 タマキがあきれた様子でそう言うと、アレインツは勢いよく腕を振った。


「貴様の力なぞどうでもいいことだ。ただ近くに都合がいいものがあったのを利用したに過ぎない」


 アレインツの言葉にタマキはにやりと笑う。


「そうか、俺に目をつけたのはあんたの不幸だったな。それを教えてやるよ」


 タマキは瞬時に加速してアレインツに迫った。

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