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全てに打ち勝つ力

 要一は巨大な盾でライトと自分の身を戦闘の衝撃から守りながら、戦いを見ていた。


「あの二人すごすぎるんじゃないか?」

「これでタマキさんは全力ではないんですか?」

「あの人の全力なんてあんまり想像したくないって、うわっ!」


 大きな衝撃が走り、沈黙が訪れたので要一が盾から顔を出してみると、タマキとアレインツは動きを止めて対峙していた。


「お前のその右腕がそこまで進化するとはな」

「これか。お前なら詳しいことも知ってるんだよな。せっかくだから教えてくれよ」

「それは失敗作だ。いや、そのはずだったのだがな」

「失敗作ではありませんよ。ただ、それにふさわしい者がいなかっただけです」


 ライトの言葉にアレインツは顔をしかめた。そしてライトは言葉を続ける。


「意識がある生命体ですから、ふさわしい者に力を与えるんです。失敗に見えたのはただ、あなたが認められなかっただけです」

「戯言を」


 アレインツがそう言うと、その手の中に一振りの剣が現れた。そしてそれをライトに向ける。


「見ていれば間違いかわかるだろう」


 タマキはそれを聞いて軽く首をすくめると、右手をアレインツに向けた。


「なら、さっさと証明してみせてくれよ」

「ほざくな、人間ごときが」


 アレインツの姿が消え、タマキの頭上に現れると、そこから剣を振り下ろした。だが、タマキがそれを右手で受け止めると、左肩の黒いマントがひるがえった。


 それはアレインツの目の前に広がりタマキの姿を隠すと、タマキ自身はその上に飛び上がっていた。そこから右腕を振り下ろしたが、それはアレインツの剣で受け止められる。タマキはそこから左足を振り回し、一撃を加えようとする。


 しかし、アレインツはそれを身をかがめて避けると、下方から剣を突き上げた。その剣が黒いマントで包まれると、それと同時にアレインツは手を放し、両手に光の球を発生させた。


 タマキはそれで攻撃されるよりも早く、再び黒いマントをその場に広げた。アレインツは全く躊躇せずにそこに光の球を二発投げ込むが、それはマントに吸い込まれて不発だった。


「なるほど、言うだけのことはあるようだな」


 アレインツは瞬時に天井付近に移動していた。それから手を胸に当てると、そこに急激に力が集中していった。だが、それはすぐに中断されてしまう。


「そこまでです」


 ライトの声が響いた。アレインツはすぐに顔を動かすと、そこには地面に何かを刻んだライトの姿があった。


「タマキさん! 刻印に傷を付けてください!」


 タマキは迷わず右手で自分の刻印に十字に傷を刻んだ。すると、ライトが地面に刻んだものが光り、それと同時にタマキの刻印、そして建物全体が光りだした。


「なんだ、これは! 力が!」


 場の力の流れが変わった。今までアレインツに流れていた力がタマキに向かって流れ出し、その身に吸収されていった。


「馬鹿な! これだけの力を取り込めるはずが!?」


 アレインツの言葉とは裏腹に、タマキはどんどん力を取り込んでいく。アレインツはそこに光の球を放ったが、それはタマキに到達せずに霧散した。それを見たアレインツは今度はライトに向かって二発の光の球を放つ。


「危ない!」


 要一が盾を構えて前に出るが、光の球の着弾で二人は吹き飛ばされてしまった。アレインツはさらに追撃をしようとして、今度はレーザーのようなものを放った。


 だが、それはいつの間にかその間に入っていたタマキの右手で握りつぶされる。


「なるほどな、力が戻ったというより、前よりも増えてるくらいだ」


 タマキはそれから左手で右腕を一撫でした。すると、金色だった右腕は生身に戻り、タマキの顔も何もなかった元の状態に戻った。それからタマキは左手を掲げる。


「メテオストライク!」


 声と同時に外から何か巨大なものが落ちてくる低い音が響いてきた。アレインツは上を見ると、その場から姿を消して退避していった。タマキもライトと要一の側に移動すると、二人を抱える。


「しっかりつかまれよ」


 そのままタマキはドームを破って外に飛び出した。


「離れるぞ!」

「マモルさん!」


 タマキの声の前にカレンは動いていて、声をかけられたまもるもすぐにそれを追う。それから数秒後、空が破れ、燃え盛る巨大な岩が姿を現した。


 それは真っ直ぐタマキ達がいた建物に直撃し、それを押し潰していった。衝撃波と爆炎が周囲に拡散して、それが収まる頃には建物は一階の半分くらいだけを残して消えてなくなっていた。


「計算通り、ほどほどで済んだな」


 タマキは建物の残骸の前に戻ると、のんきな調子で言った。カレンもすぐにその横に戻ると、タマキのことを見る。


「なぜ残したんですか?」

「いや、まだ地下に転がってる奴がいるかもしれなかったからな」

「そうですか。それより、その右腕は」

「ああ、魔力が戻ったから本物っぽくしてみた。見た目だけだからどうってこともないんだけどな。まあそれよりも」

「はい、先にやることがありますね」


 タマキとカレンが同時に上を見上げると、破壊された天井の近くに浮遊するアレインツの姿があった。


「マモルさんには少し離れた場所で待っていてもらっています」

「俺のほうも要一とライトはあっちのほうに置いてきた。ここからは」

「私達の仕事ですね」


 カレンは剣を二本抜き、髪と瞳を黒く染めた。タマキはそれを見ると少し眉を上げる。


「使ったんだな。大丈夫か」

「問題ありません」

「じゃあ、俺もせっかくだから新しいことに挑戦するかな。一気に決めるために」


 だが、タマキが何かする前に、アレインツから二人に向かって太い光線が放たれた。それは小さいが凄まじい光の爆発を起こし、周囲の建物を照らした。


 カレンはその中を自分の周囲に浮かぶ黒い円盤を蹴って、不規則な動きでアレインツに向かって上昇していく。アレインツはそこに向かって無数の細い光線を放ったが、それはカレンにかすりもしない。


 いらついたらしいアレインツが両手を広げると、その背中から全方位に光線が撃たれ、急激に曲がると全てがカレンに降り注いだ。


 カレンがそれに向かって右の剣を少し動かすと、その前に黒い円盤が現れ、高速で移動しながら光線を全て受けきった。カレン自身は何事もなかったかのように勢いを増してアレインツに迫り、一際大きな黒い円盤を蹴ると、さらに勢いをつけてそこに突進した。


 アレインツはそれをかわしたように見えたが、カレンは空中に出現させた黒い円盤を蹴って急激に方向を変え、右手のショートソードを横薙ぎに振るった。


 それはかわされるが、カレンはそのまま身体を回転させて左手の剣をアレインツに叩きつける。その一撃はかわしきれず、アレインツの身体は切り裂かれはしなかったものの、衝撃で流れた。


「さあ、いくぞ」


 その背後から声が響いた。アレインツが振り返ると、そこには背中から左右両側に、上半分が半分が金色、そしてグラデーションになって下が漆黒という翼が生えているタマキの姿があった。


 そしてタマキが構えた両腕に力が集中し、爆発的に開放された。アレインツは瞬時に地面まで落ちていった。それを見たタマキとカレンは、互いの顔を見ることもなく、タマキは左手、カレンは右手を伸ばして、その手をつないだ。


「眠れ」


 二人の声が響くと、その体から溢れた白と黒の光があふれ出し、二人の空いた手が振り下ろされると同時に、地面のアレインツに向かってその白と黒の光が降り注いだ。

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