抗う者
カレン達が案内されたのは、想像以上に広い地下の迷宮ともいえる場所だった。明かりは豊富ではなく、薄暗かったが、それでも歩くには十分といえた。
「ここは元々昔の遺跡でな、それを改造してシェルターにしてるんだ」
「一体どれくらいの広さなんですか」
まもるに聞かれるとケイランは天井を見上げた。
「正直この遺跡の全ては把握できてないんだ。だが、かなり遠くまで移動できるルートもあるのは確認してある」
「意外なところで冒険だ」
まもるがそうつぶやいて何か考えているうちに、四人は大きな食堂のような場所に到着していた。そこには老若男女様々な人がいて、入ってきた四人に注目が集まる。
「なんか注目されてる?」
「新顔は注目されるもんだ」
そして四人は食堂を注目されながら通過すると、あまり広いとは言えない会議室風の部屋に入った。
「座って待っててくれ、会わせたい人がいる」
それだけ言うとケイランは三人を残して部屋から出て行った。しばらくすると、一人の地味な雰囲気の中年の女性を伴って戻ってきた。
「俺達のリーダーだ」
「ケイトです。話はケイランから聞きました。とりあえず座って話しましょうか」
そして五人は向かい合って座ると、まずはケイトが口を開いた。
「あなた達は違う世界から来たということですが、目的を聞かせてもらえませんか?」
その質問にはカレンが口を開いた。
「私達の目的は人探しです。そのためにここまで旅をしてきました」
「なるほど、きっとその人というのは大事な人なんですね」
「はい」
カレンが深くうなずくと、ケイトは微笑んだ。
「そうですか。それでは、ここが目的地というわけではないわけですね」
「いえ、それはわかりません。ただ、ここは今までとは明らかに違うので、もしかすると目的地かもしれません」
ケイトはそれにうなずき、カレンは続けて口を開く。
「ですから、とりあえず拠点としてここを使わせていただけないでしょうか。もちろん、私達も全力であなた達の力になります」
「そういうことなら、私のほうからもお願いしたいところですね。ケイランの話では新しい敵の兵器も出現したようですし、大きな戦力が得られるのは大歓迎ですよ。それで、早速お願いがあります」
ケイトは立ち上がり、地図を取り出すと黒板に張り出した。
「今はちょうどこの地点になります」
地図の一点を指差し、さらにそこから離れた場所にその指を運ぶ。
「そしてここが、現在確認されている、この遺跡から通じている最も遠い場所になります。ここで陽動を行って欲しいんです」
ケイトが指を動かした先はかなり離れた場所だった。
「そんなに遠くまで行けるんですか」
まもるが驚きの声を上げると、ケイトは笑ってうなずく。
「そうです。移動手段も確保できているので安心してください」
「それならば、すぐに出発しましょう」
カレンが立ち上がったが、その瞬間、鈍い音と共に部屋が揺れた。
「これは、思ったよりも早く敵が来たようですね。とりあえずこれに対応すべきでしょうか」
カレンがそう言うと、ケイトはうなずきケイランを見た。
「ケイラン、カレンさん達の案内を頼みます。とりあえずは近い地点から奇襲をかけるのがいいですね」
「了解しました」
ケイランは返事をすると、カレン達三人にうなずいてみせた。
「では、ヨウイチさんはここに残っていただけますか? もしもの時でもヨウイチさんなら時間が稼げると思うので」
「わかりました」
要一がうなずき、カレン、まもる、ケイランの三人はその部屋を出た。そして三人が向かったのはさらに地下、そして、そこにあったのは、二十人ほどは余裕で乗れる、屋根のない車両だった。
「これって、地下鉄みたいなもん?」
まもるが言うと、ケイランは車両の運転席に乗り込んだ。
「それが何かはわからないが、こいつが移動手段だ。乗ってくれ」
カレンとまもるが車両に乗り込むと、ケイランはすぐにそれを出発させた。車両はゆっくりと動きだすと、瞬く間に速度を上げていった。
「おお、速い速い」
まもるが感心しながら、手を叩いていると、車両はわずか数分で停止した。
「着いたぞ」
ケイランはそう言うとすぐに車両から飛び降り、階段を上り始めた。三人はそれから、重い扉を開けて地表に出た。
「かなり激しい攻撃のようですね」
カレンはすぐに最初に入った入口付近に目を向けると、そこでは今でも空中から三体の巨大ロボットが爆撃をしていた。
「ああ、連中本気だな。どうするんだ?」
カレンはそれに答えず、黙って自分のショートソードを抜いた。
「ケイランさんはここで待っていてください。マモルさんは援護をお願いします」
そう言うと、カレンの瞳と髪と剣が白銀に染まり、身体は漆黒の鎧を身にまとう。
「片付けてきます」
白銀の翼が広がると、カレンは巨大ロボットに向かって飛んだ。まもるは出遅れたがすぐに変身をするとカレンを追った。
「頼むぞ」
ケイランはそれだけつぶやいて二人を見送った。
「攻撃中止、地表をスキャンしろ」
「了解、降下します」
巨大ロボットのパイロット達は無線で通信をとると、そのうちの一体が地面に下りていった。だが、一筋の光が閃き、そのロボットの腕が落とされた。
「どうした!」
「わかりません! レーダーにも何も! うわあ!」
もう一度光が閃くと、今度はそのロボットの足が爆発し、そのまま落ちていった。
「敵が近くにいる! 気をつけろ!」
そう叫ぶと同時に、その機体の肩に何かが被弾した。
「くっ、まだいるのか!」
機体の向きを急激に変えたが、すでに攻撃してきたものは移動したのか補足できない。
「くそっ、一体なんだというんだ! ぐっ!」
正面からの衝撃でパイロットはうめいた。コンソールを見ると、片足に大きなダメージを受けたようで、警告が出ている。
さらに、続けて背面から衝撃を受け、今度はその部分に警告が出る。
「ちっ、不時着するしかないか」
パイロットは悪態をついてなんとか着地しようとしたが、その間にももう一体のロボットが攻撃を受けて落ちるのが見えた。
「なんだっていうんだよ!」
さらに悪態をついてからパイロットはコンソールを叩き、通信を始める。
「こちらファイアチーム、現在何者かの襲撃を受けています。至急救援を願います!」
数秒間、何の反応もなく、今度は右腕に攻撃を受けた。
「応答願います!」
「そう慌てなさんな、今向かってる」
「イグシー様! 出撃されたのですか」
「そうだよ、変わった連中が現れたらしいからな。それに、もう着いた」
通信が終わると、はるか上空にまるで太陽のような輝きが現れた。
「あれは」
三体のロボットを沈黙させたカレンはその輝きを見つめた。
「マモルさん退いてください!」
「え? でも」
「いいから退いてください!」
カレンはそう叫ぶと、白銀の剣を構えた。そして上空の近づき、それが収まってくると、両肩から生々しい竜の頭のようなものを生やしたロボットが姿を現す。
「なるほど、あんたが十二使徒を倒してる奴か」
そのロボットから声が響く。
「そうです、あなたも十二使徒のようですね」
「そうだ、俺こそが十二使徒の最後の一人、イグシー!」
その声と同時に、ロボットの胴に巨大な刻印が現れ、それに十二の炎が灯った。
「行くぞ!」
ロボットが手に持つライフルを構えると同時に、カレンは地面を蹴った。




