六つ目の世界
次の世界は闇に閉ざされていた。
「カレンさん、要一君」
まもるは二人の姿を探したが、視界は悪く何も見えない。地面を踏みしめている感覚はあったが、手を動かしても何にも触れることはできなかった。まもるはとりあえず手探りでベルトを装着する。
「変身!」
そしてまもるはブレードを手に取ったが、振り回すことはせずに、とりあえず姿勢を低くして自分の周囲に意識を集中した。
だが、何も見えず、聞こえない状況ではまもるは動けない。
「なに!?」
いきなり背中に衝撃を受けたまもるはよろめいたが、踏みとどまって振り向く。しかし、そこには闇があるだけで、何の気配も感じられなかった。
「たくっ! こんな姑息なことをしてないで正面からかかってこいっての」
叫んでも、何も答えるものはない。まもるは舌打ちをして周囲を警戒した。そして、自分が移動しているような感覚を感じた。
一方、要一も闇の中で身動きができない状況だった。とりあえず鉄槌を鎧に変化させていたが、それ以外はどうにもできなかった。
次元の管理人に連絡を取ってみたが、狭い範囲の効果のようで、何もわからないということしかわからなかった。
「うわっ!」
要一は背後から足に衝撃を受けてよろめいた。そのまま数歩先に進んでから振り向いたが、やはり何も見えない。
だが、視界の隅に光が見えると、それが一気に広がって要一の周囲の闇を払った。
「大丈夫ですか」
白銀に輝く剣を持ったカレンが要一の前に立っていた。
「カレンさん、助かりました」
要一は鎧を鉄槌に戻すと、大きく息を吐き出した。
「大丈夫だったようですね、どうやらマモルさんはこことは違う場所に飛ばされたか、連れ去られたのかもしれません」
「じゃあ、すぐに探さないと」
「そうですね、すぐに追いましょう。しかし、この世界は少しタマキさんやヨウイチさん達の世界に似ているところがありますね」
そう言われて要一が周囲を見回すと、今立っている場所は荒野のようだったが、しっかりと舗装された道の上だった。
「確かにそうみたいですね。今までの世界とは全然違う雰囲気ですけど、でも、まもるさんはどこに行ったんでしょうか」
「大まかな方向ならわかります。しかし距離はあるようですから、とりあえず私が一人で行って来ることにしようと思いますが」
カレンがそう言うと要一はすぐにうなずいた。
「俺のほうは大丈夫ですから、すぐに行って来てください」
「できるだけこの場でじっとしていてください、すぐに戻るようにします」
それだけ言うとカレンはその場から飛び立っていった。それを見送った要一はとりあえず道の傍らに腰を下ろす。
「まあ、カレンさんならすぐに戻ってくるよな」
要一はそのまま座っていたが、十分ほど経った頃、空から轟音が響いてきた。要一がその方向に顔を向けると、小さな点が見え、それが見る間に大きくなってきた。
「おいおい」
要一の視界には人型をした全長十五メートルはありそうなものが三体ほどあった。それはあっという間に上空を通過していった。
「人型ロボットかよ。なんかとんでもなさそうな世界だな」
さらにそれから五分ほど経ってからカレンとまもるが戻ってきた。二人は要一のすぐ側に降りると、それぞれ元の状態に戻る。
「まもるさんも無事だったんですね」
「当然でしょ、ちょっと迷ったってくらいなもんなんだから」
「ヨウイチさん、変わったことはありませんでしたか?」
「変わったことと言うか、さっきすごいものが通過していきました」
要一は立ち上がると、さっきのロボットが飛んできた方角を指差した。
「あっちのほうから巨大なロボット、まあまもるさんのスーツが何倍にもなったものだと考えてくれればいいんですけど、そういうものが飛んできたんです」
「あの音はそれでしたか。しかし、襲われなかったということは、おそらくこの世界のものだったのでしょう」
「それよりも、今は私を閉じ込めてあんな離れた場所にまで飛ばした使徒って奴をなんとかしましょうよ」
まもるはいくらか焦ってる様子だった。要一はそれをたしなめようと考えたが、それよりも先にカレンが一歩前に出た。
「マモルさん、焦りは禁物です。ヨウイチさんの話からすると、この世界のことを無視するわけにもいきませんし、次の世界に通じる道を探すのが最優先です。あのサスという男もそうすれば姿を現すはずですから」
カレンにそう言われてから、まもるはなんとか気持ちを落ち着けたようだった。
「わかりました。でもどこから手をつけるんですか?」
「ヨウイチさんのほうではまだ何もわかっていませんか?」
「はい、まだ駄目みたいです」
「そういうことでしたら、まずはこの近くに町がないか確認しておきましょう。ですが」
カレンはいきなりナイフを取り出すと、それを背後の空中に投げつけた。それは空中に突きささり、そこから血が流れると同時に一人の男、サスの姿が現れた。
「あいつは!」
まもるはバックルを取り出したが、それより早くカレンは髪と瞳を白銀に染め、同じ色の翼を広げると、地面を蹴ってサスを剣の柄で打ち、地面に叩き落した。
それからサスの首をつかんで持ち上げたが、意識を失っているのを確認すると、手を放して地面に転がしてから、刻印を探してそれを消してから、元の姿に戻った。
「これで使徒のほうは大丈夫ですね」
あっという間の出来事にまもると要一はほとんど動く間もなかった。
「ヨウイチさん、とりあえずこの男をお願いします」
「はい」
要一は鉄槌を鎖に変えてサスを縛り上げてから、次元の管理人に連絡を取り、その身柄を預けた。
「まさかあんなところに隠れてたんですね」
「はい。かなりうまく隠れていましたが、少し前から気づいていましたが、行動を起こそうとして隙が出来たので簡単に済みました」
「それじゃあ、これから近くの町を探すんですか?」
「そうですね、まずはそこからです。それにこの世界の今までとの違いも気にはなりますから」
「違い、ですか?」
「今までは人が見当たらない世界でしたが、ここは違うようですから。何か意味があるのかもしれません」
カレンの言葉が終わると同時に、空が光り、爆音が響いた。三人がその方向に顔を向けると、さらに光と爆音が発生する。
「行ってみましょう」
カレンはその光と音のしてきた方角を真っ直ぐに見すえていた。




