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五つ目の世界

 カレン達三人が五つ目の世界に足を踏み入れてから、すでに一日が経過していた。次の世界へ通じる場所はまだわかっていなかった。


「あの十二使徒っていうのもけっこう倒したし、そろそろ目的の世界についてもよさそうですよね」

「そうですね。ヨウイチさんのほうでは何も話はないのですか」

「まだありません。あのじいいさんもどうにかして探ろうとはしてるみたいなんですけど」

「では、とりあえずはこちらで次の世界への道を探し続けるしかありませんね」


 そしてカレンは今の世界を見回した。この世界は見える範囲では赤い大地が広がり、大きな生物の気配はないところだった。


「じゃあ、また私が見てきますよ。変身!」


 まもるは姿を変えると、すぐに飛び立って行った。カレンはその場でそれを見送ってから口を開く。


「マモルさんが戻るまではじっとしていましょう」

「はい。あのじいさんと連絡をとってます」


 三十分ほど後、まもるが戻ってきたが、首を横に振った。


「やっぱり特に変わったものは見当たりません。もっと遠くまで行ってみれば何か見つかるかもしれませんけど」

「いいえ、あまり長い時間の単独行動は控えるほうがいいでしょう。いつ敵の襲撃があるかもわかりません」

「確かにそうですね。あいつらいつも突然現れるし」

「はい、ですからすぐに合流できないような状況を作りたくありません。しかし、慎重になりすぎて時間をかけるのも避けたいですが」


 カレンはそれから少し考え込むような様子を見せたが、おもむろに顔を上げた。


「次の世界へ通じる場所を発見できるのはヨウイチさんだけですが、私ならそれを開くことができます。そしてこの周辺には生物はいないようですから、広範囲に攻撃をしても問題はないでしょう」

「そんなことができるんですか?」


 要一の問いに、カレンはサモンが宿っている剣を抜いた。


「これでできるはずです。サモン、力を貸してもらいますよ」

「いいだろう。使えるならばな」


 カレンはうなずき、要一に顔を向ける。


「ヨウイチさん、次の世界への道が開けば、感知は容易になりますね?」

「ちょっと待ってください。ああ、それならすぐにわかるみたいです」

「では、お二人とも少し下がっていてください」


 まもると要一がそれに従って後ろに下がると、カレンは剣を右手一本で左の腰のあたりに水平に構えた。そしてそこからなめらかに動き出すと、静かに、一瞬で剣を水平に一閃させた。


 まもると要一には何も見えなかったが、風が起こり、空間が切り裂かれていくのだけは感じることができた。数秒後、カレンは剣を鞘に収めて振り返る。


「ヨウイチさん、お願いします」

「はい」


 要一が次元の管理人と連絡を取り始めると、すぐに返事があったようだった。


「場所はわかったみたいです。ついてきて下さい」


 要一が歩き出すと、カレンと変身を解除したまもるはその後ろにつづいた。


 そして二時間も経過した頃、カレンが足を止めた。要一とまもるもそれに気がついて立ち止まる。


「どうしたんですか?」


 要一が聞くと、カレンは遠くを見つめて口を開く。


「どうやら、敵が動き出したようですね」

「じゃあ私が」

「いえ、まだ距離がありそうです。こちらに気がついて、罠を用意したと考えるべきでしょう。しかし、それはむしろ都合がいいと言えます」

「なにか作戦があるんですね」


 まもるは期待に目を輝かせた。


「作戦と言えるほどのものではありません。相手が待っているなら、それ以上の攻撃を加えるだけです」

「わかりました! さっそく変身!」


 まもるはすぐに変身をした。カレンも自分のショートソードを抜く。


「マモルさんはあのブレードフォームで空からお願いします。合図は私がするので、それまではあまり近づかないようにして、上空で待機していてください」

「はい」

「私は正面から相手に近づきますから、ヨウイチさんは側面から援護をお願いします。お二人とも、攻撃を受けたら無理はせずにすぐに下がってください」

「了解!」


 まもるは勢いよく返事をして飛び立っていき、要一も歩いて出発した。二人を見送ったカレンは力を感じた方向を見すえると、その姿を白銀と漆黒に染めた。そして、地面を蹴るとそのまま高速で走りだす。


 しばらく走ると、前方にそれなりに大きな黒いドームのようなものが見えてきた。そして、そこからカレンに向けて黒く巨大な弾丸が放たれる。


 カレンはそれを剣では受けずにかわすと、スピードを上げて黒いドームに向かって突進した。そのまま続けて放たれた黒い弾丸を同じようにかわすと、黒いドームを白銀の剣で切りつけた。


 そしてカレンはその真上に上昇して、そこから黒いドームを見ると、剣で切りつけた部分からそれは崩れ始めた。


 だが、それが半分ほど崩れた時、ドーム全体が煙のようになると、一気に周囲に広がった。それは信じられない速度と量で広がり、あっという間にカレンを包み込んだ。


「これは」


 カレンは動かずに自分を包み込んだ闇をよく観察していた。それは質量のある霧のようで、徐々にカレンの体に巻きついてきていた。


「一気に吹き飛ばすべきですね」


 カレンは左手に光を集中させ、それを腰のあたりに構えた。


「シャイニング! バースト!」


 光が派手に炸裂し、闇は一気に消し飛ばされた。カレンはそのまま動かずに黒いドームがあった中心を見ると、そこには一人の男が立っていた。カレンは空中にとどまったまま、その男に剣を向ける。


「今のはあなたの仕業のようですが、せっかくですから名前を聞かせてもらいましょうか」


 男は若干逃げ腰だったが、なんとか気を取り直したようで、カレンを見上げた。


「私は十二使徒の一人、サスだ」

「そうですか、今からでもおとなしく通して頂ければ、あまり手荒なことはしませんが」


 サスはカレンの言葉に答えず、両手から黒い弾を発生させた。


「抵抗するというなら、仕方ありませんね」


 カレンが剣を構えると、サスはすぐに足元に黒い弾を叩きつけた。そこから一気に闇が広がると、サスの姿を隠す。


 カレンはそこに急降下すると、それを剣の圧力で吹き飛ばした。しかし、そこにはすでにサスの姿はなかった。


「逃がしましたか」


 カレンはそうつぶやいてから元の姿に戻ると、ショートソードを鞘に収めた。


「大丈夫ですか、カレンさん!」


 そこにまもるが降下してきた。カレンはそれに軽く手を振る。


「問題はありませんでしたが、十二使徒の一人には逃げられてしまいました。すみませんが、ヨウイチさんを呼んできて頂けますか?」

「はい、すぐに行ってきます!」


 それからしばらくして、まもるが要一を抱えて戻ってくると、三人は次の世界に通じる場所の前に立った。


「敵が簡単に退いたということは、この先に罠があるのは確実です。注意してください」


 まもると要一はその言葉にうなずき、まずはカレンが次の世界に足を踏み入れた。

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