二つの力
「まったく、こう霧が濃いと視界が狭くてしょうがない」
まもるは高速飛行をしながらも必死にカレンの言っていたものを探していた。フルドライブモードの高速飛行のおかげで霧につかまることはないが、濃霧で目当てのものはなかなか見つからない。
「こうなったら」
まもるは銃を取り出しそれをてきとうに乱射した。だが、手応えはまるでない。
「これじゃ駄目か。たくっ!」
悪態をつくがそれで事態がよくなるわけでもなく、まもるはとにかく高度をとって上から霧を操っているものを探すことにした。
一方、その下ではカレン、要一とエドルの戦いが始まっていた。
「ヨウイチさん、霧は私がなんとかします。あのエドルという男をお願いできますか」
「え、俺がですか?」
「はい。どうやらあの男は特殊な道具は持っているようですが、能力は単純なものだと思います。単純な力の勝負ならばヨウイチさんが負ける要素はありません」
「わかりました、やってみます」
要一は鉄槌を構えて地面を蹴った。その道はカレンが振るった剣で作られている。
「フォーム! チェーンアンドスピア!」
鉄槌を鎖が繋がった槍に変え、要一はそれを真っ直ぐエドルに向かって投げつけた。だが、エドルは腰から大振りなナイフを手に取ると、その槍を弾く。要一はそれにすぐに反応して、チェーンを直接叩きつけるように操作した。
「面白い技を使うな」
エドルはそれを避けると、地面に下りて低い姿勢で要一目がけて突進してきた。
「フォーム! ソードアンドシールド!」
だが、要一はすぐに槍と鎖を長い剣と大きい盾に変化させると、盾でその突進を受け止めた。
「くそ!」
エドルの突進を止めた要一はなんとか踏み出して剣を振ったが、それは空振りになる。
「動きが鈍いな」
宙に舞っていたエドルはそのまま上から要一に襲いかかった。要一はそれに向けて盾を投げつけ、エドルはそれを空いた手で払おうとした。だがその瞬間。
「フォーム! ネット!」
盾が網に変化し、エドルを捕らえようと一気に広がった。エドルが素早くベルトの背後に手を当てると、その身体が浮かび上がってその網をかわした。
「なに!」
しかし、その直後にエドルが手を当てた部分に投げナイフが直撃して、小さな爆発を起こした。それと同時にエドルの身体は地面に落ちていく。
「これは?」
要一は何が起こったかわからずに、一瞬足を止めた。
「ヨウイチさん! それでおそらくその男は飛べません」
霧を相手にしているカレンからの声が飛び、要一は我に返った。
「ありがとうございます! フォーム! シールド!」
要一は網を再び盾に変えると、それを手にとって地面に落ちたエドルに突進した。そのまま盾ごと体当たりをしたが、エドルは額の刻印を光らせ、それを正面から受け止めた。要一の突進はすぐに止められ、盾ごと振り回されてしまう。
「うわっ!」
要一はそのまま放り投げられて背中から地面に落ちた。そこにエドルが跳びかかって、ナイフを突きたてようとしてきた。だが、要一は盾を手放すとなんとか横に転がってそれをかわして立ち上がった。
そこにエドルの足が突き出され、要一は無防備にそれを受けてしまったが、なんとか倒れずに踏みとどまり、剣を構えた。
「それだけか!」
そこにエドルのナイフが振り下ろされ、要一はなんとかそれを剣で防いだ。そしてその体勢のまま左手を剣から放す。
「フォーム! モーニングスター!」
地面の盾が光ると、それが要一の手に収まり、棘のついた鉄球が鎖でつながったものになった。それを勢いよく振るったが、エドルは後ろに下がってその一撃をかわした。
それから二人はその間合いで睨みあいになる。要一は剣とモーニングスターをぶらつかせているが、エドルはそれを大して気にしている様子はない。
「手から放れていても自由に姿を変えられる武器とは、厄介な代物だ」
要一はそれに答えはせず、黙って二つの武器を構えた。
「ふん!」
エドルは地面を蹴り、正面からナイフで切りかかった。しかし、要一は避ける様子を見せずに、それに突っ込んだ。
「フォーム! アーマー!」
二つの武器が光ると、それが要一の全身を包む鎧に変化した。
「うおおおおおおおお!」
要一は気合と共に全身でエドルにぶつかり、そのままそれをがっちりとつかんでジャンプすると、自分もろとも地面に落ちた。
「くそ! なにを!」
「このままおとなしくしてもらうぞ!」
しばらくそうしてもみ合っているうちに、カレンがその近くに降り立った。
「ヨウイチさん、そのまま動かないでください」
その声と共にサモンの入った剣を振り下ろしエドルの刻印を消した。続けてその顎を蹴ってエドルの意識を刈り取る。
「ありがとうございます」
要一はそう言うと立ち上がり、鎧を鉄槌に戻した。そして周囲を見回すが、霧はまだ晴れてはいない。
「まもるさんはまだみたいですね」
「待ちましょう。大丈夫なはずです」
カレンは霧の先にある空を見上げた。
「ああ、まだるっこしい!」
空中のまもるはベルトの左側からとったものをバックルに装着した。
「ブレードフォーム!」
手に持ったブレードが青い刀身を持った巨大な剣になった。まもるがそれを構えると、その剣が青い炎をまとった。
「超烈火剣! 蒼炎斬!」
剣が振るわれると、それがまとっていた炎が下方の霧に向かって一斉に拡散して放たれた。そして、一箇所だけ何かに当たったのが見えた。
「そこだ! 一刀両断!」
まもるは一気に降下し、その場所に剣を振り下ろした。確かな手応えがあり、まもるがそのまま地表に勢いよく到達すると、霧はすぐに消えていった。
それからまもるはベルトを外して変身を解除し、要一とカレンの姿を見つけると、そこに向かって歩いていった。
「そっちも終わったみたいですね」
「まもるさん、大丈夫でしたか」
「もちろん、ちょっとてこずったけどね。で、のびてる奴の力って結局なんだったの?」
「色々と特殊な道具を持っていたようです。能力は単純な身体能力の強化だったようですね」
カレンの答えに、まもるは少しがっかりしたようだった。
「じゃあ、カレンさんがあっさり倒してたんですか?」
「いえ、私は霧のほうを相手にしていました。ヨウイチさんに戦っていただいたので、だいぶ楽でしたよ」
「へえ、要一君もやるじゃん。それで、次の世界に通じる場所は?」
「それはまだ、いや、ちょっと待ってください」
要一は頭に手を当てて、次元の管理人と会話をしているようだった。それからカレンとまもるの顔を交互に見る。
「ここから歩いて一日くらい場所だそうです」
「そういうことでしたら、とりあえずこの男を預けたらすぐに出発しましょう」
カレンは鎖で縛り上げられているエドルをつかんだ。
「はい、すぐに連絡します」
要一が再び頭に手を当てると、数秒後にエドルの姿は消えた。
「じゃあ、次の世界に出発!」
三人はまもるを先頭に歩き出した。




