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湖の竜

「変身!」


 まもるはすぐに変身をして、竜を見上げた。要一も次元の鉄槌を構えている。


「あれって敵ですかね!」

「わからないけど、敵じゃなくてもやばいでしょあれは!」


 その言葉通り、長い身体を持った竜が湖面に着水すると、そこから大きな波が生まれ、まもると要一に迫った。


「ほらね!」


 まもるはすぐに要一を抱えてその場からジャンプをしてそれを飛び越えた。そして着地すると要一を放して湖面に注目する。


「また来るんじゃないの」

「どうします?」

「逃げたほうがいいでしょ、これは」


 だが、二人の背後に空まで届くほどの水の壁が出現した。


「これは」

「あの竜の仕業じゃないの。敵だと思ったほうがよさそうってこと! アームドフォーム!」


 光と同時にまもるの姿は強化された装甲とミニガン、ロケットポッドを装備していた。


「要一君は下がってて!」


 まもるはミニガンを構え、竜の出現を待ち構える。そして湖面が荒れ始めると同時にまもるはミニガンの引金を引いた。そのまま湖面を掃射したが、竜はそれにかまわず湖から飛び出してきた。


 今度は竜は全長五十メートルはありそうなその全身を現し、湖の上空で静止してみせる。


「まったく、嫌になるほどのでかさってやつ?」


 まもるはミニガンを上空の竜に向けた。そして再び引金を引いて竜に銃弾を浴びせかける。竜が身体を震わせると、その全身から小さな水の弾丸が飛び散り、ミニガンの銃弾を叩き落した。それだけではなく、水の弾丸はまもると要一に迫ってくる。


「フォーム! シールド!」


 要一は鉄槌を盾に変えそれを構え、まもるはロケット弾を一斉に発射した。ロケット弾は空中で爆発し、水の弾丸を散らせた。


 竜はそれから甲高い雄たけびを上げると、今度はまもるに向けて口から巨大な水の弾を吐き出した。


「フォーム! 次元の鉄槌! 十倍だ!」


 要一の盾が次元の鉄槌に変化し、さらにそれが巨大化した。要一はそれを巨大な水の弾に叩きつけ、粉砕する。それから次元の鉄槌はすぐに元のサイズに戻り、要一の手に収まった。


「ナイスサポート!」 


 まもるは叫んでから、ミニガンを思い切り頭上に放り投げた。


「ストライクモード!」


 声と同時にミニガンが光になり、その形は異常に長いライフルになった。まもるはそれを片手で受け止めると、立ったまま竜に狙いをつけ、引金を引いた。ライフルが火を噴き、そこから放たれた弾丸が一瞬で竜に吸い込まれていった。


 その弾丸は竜の身体を貫き、大きな声をあげさせた。だが、巨体にはその程度の傷では大きなダメージは与えられている様子はない。


 竜はすぐにまもるに狙いを定めると、立て続けに口と全身から大小の水の弾丸をそこに発射した。


「そんなもの!」


 まもるは大きな水の弾丸はライフルで撃ち落とし、細かい水の弾丸にはロケット弾を撃つ。だが、竜はさらに尾を大きく動かすと、それを振り下ろして湖を打って縦方向に大きな水の刃のようなものを作り出した。


「ちょっと、これは無理だって!」


 まもるはすぐにブースターを吹かして高速移動をすると、地面を削るその軌道からなんとか逃れた。だが、竜はさらに尾を湖面に打ち付けて同じように大きな水の刃のようなものをさらに作り出す。


「こうなったら」


 まもるはベルト背面の四角いものを取ると、今バックルに装着しているものと素早く入れ替えた。そこに水の刃が襲いかかるが、それはまもるの目の前で砕けた。


 水が散り、視界がなくなったが、それが全て地面に落ちると、そこに立っていたのは今までよりも二倍のサイズの巨人とでも言うべき、ずんぐりとした姿になったまもるだった。


 それは頭がなく装甲は全身を分厚く覆い、右のアームは三本指、左はドリルになっている。さらにその右肩にはクレーンのアームのようなものがあった。


「これが最後の一つ! パワードフォーム!」


 竜はその姿を見ると、雄叫びを上げて直接まもるに襲いかかってきた。


「甘い!」


 まもるは右肩のクレーンアームを伸ばすと、それを横殴りに振って竜を打った。その一撃で突進の軌道がずらされ、勢いが殺される。


 そして、まもるは脚部と背面のブースターを全開にすると左のドリルを回転させながら竜に突っ込んで行った。


 そのドリルは竜の鱗を削り取りながら、突き進んでいく。そして竜の身体の三分の一程度を削るとまもるは止まり、竜はさすがにかなりのダメージを負ったようで、地面に落ちた。


 すると、まもると要一を閉じ込めていた水の壁が崩れ去った。


「終わったんですか?」


 要一がまもるの隣に駆け寄ってきた。まもるはパワードフォームから基本のフォームに戻り、落ちた竜を眺める。


「そうみたいだけど、なんであんなに暴れてたのかね」


 まもるは竜の頭のあたりに近づき、それをよく観察した。すると、その目の後ろのあたりに小さく光るものがあった。


「これは?」


 まもるはそれに手を伸ばして引き抜く。それは大きな針のようなもので、すぐにまもるの手の中で砕けてしまった。そして、上空から拍手が響いてきた。


「よくやったよくやった」


 まもると要一がその声のした方に顔を向けると、そこには宙に浮いた一人の若い男がいた。


「誰だ!」


 まもるが鋭く叫ぶと、その男はもったいぶった調子で礼をする。


「俺は十二使徒の一人、エドルだ。よくその蛇を倒したな、褒めてやるよ」

「なるほど、私達を分断して始末するつもりでしたか」


 そこでカレンの声が響いた。カレンはカロミーアの首根っこをつかんでそれを引きずっている。


「おや、思ったよりもたなかったみたいだな、使えない」

「カレンさん! 大丈夫でしたか!?」

「問題ありませんよ、マモルさん。それより、お二人とも怪我もないようでほっとしました」


 そしてカレンはカロミーアから手を放すと、エドルを見る。


「あなたもこうなりますか?」

「それは遠慮しとこう。じゃあな」


 エドルはそれだけ言うと空間の歪みに姿を消した。


「行きましたか。まあとりあえずいいですかね」


 カレンはもう一度カロミーアの首根っこをつかむと、それを要一の前まで運んだ。


「すでに刻印は消してありますから、あとはお願いします、ヨウイチさん」

「わかりました、いや、ちょっと待ってください」


 要一とりあえず鉄槌をチェーンに変えてカロミーアを縛り上げてから、自分の頭に手を当て、何回かうなずいた。それがすむと竜に歩み寄り、その頭に手を置く。数秒後、その手を放すと、竜は頭をゆっくりと持ち上げた。


「すまなかった。何かに操られていたようだ」


 竜の口からは空気を大きく動かす声が響いてきた。まもるはそれに驚いたようだったが、危険はないと判断して変身を解除した。


「操られてたって、さっき抜いたやつのこと?」

「そうだ。あの呪縛から開放してくれたおかげでこうしていられる、礼を言おう」

「ええっと、どういたしまして」


 まもるは頭をかいて軽く頭を下げた。そこでカレンが一歩踏み出す。


「あなたはこの湖の主でしょうか」

「そうだ、お前達は異世界の者のようだが、何の目的があってこの世界に来たのだ?」

「この世界のどこかに、違う世界に通じる次元の歪みがあるはずなので、それを探しに来たのです」

「歪み? それならば心当たりがある」


 そう言った竜はやっと全身を起こした。そしてゆっくりと宙に浮かぶ。


「案内しよう。ついて来るがいい」

「あっと、じいさん、こいつよろしく」


 要一がそう言うとカロミーアの姿が消えた。そして竜は空中を泳ぐように移動し始め、三人はそれの後について歩き出した。

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