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実力と形状変化

「どの程度のものなのか見てあげようか」


 リールは片手を軽く振って二つの風の刃を飛ばした。それはタマキの肩と膝を狙い、正確に飛来する。タマキは肩のほうを右腕で落とし、膝にきたものは足を動かすだけでかわした。


「ほう、なかなかいい動きじゃないか」


 そう言うと、リールはいきなり地面を蹴った。その勢いは瞬時に加速され、タマキはなにもできずに一撃をくらってよろめく。


「よく倒れないな、偉いもんだ」


 リールは、背後からよろめいたタマキが立ち直るまで立ったまま待った。タマキは追撃がこないのを確信していたのか、ゆっくりと振り返る。


「悪くない一撃だ。でも、この程度の威力の一発じゃな」

「一発で終わるわけがないじゃないか」


 リールがもう一度地面を蹴ると、再び加速した。タマキは再びそれを避けられず、顔面に一撃を食らう。今度はリールは止まらずに往復した。


「どうしたんだ? 何も出来てないじゃないか」


 その言葉通り、一見したところタマキはかわすのも防ぐこともできていなかった。だが、その体勢はそれほど崩れていない。


「何も? 自分の攻撃が効いてるかもわかってないらしいな」


 タマキは口の中を切ったらしく、その場に血を吐き捨てたが、平気な顔をしている。リールはそれを見て首をかしげた。


「おや、攻撃は当たったはずなのに」

「お前らはどうも、なんていうか、なってないなんだよな」

「言ってくれるねえ、それなら本気を出してあげようじゃないか」


 リールの二の腕にある刻印が光った。そして瞬時に今まで以上の加速をする。今度はタマキの身体は吹き飛ばされ宙に舞った。


「まだまだあ!」


 その身体にリールはさらに地面を蹴って追撃を加え、タマキの身体はさらに高く舞い上がり、地面に叩きつけられる。さらに、リールはそこに勢いよく足から落下していった。


「惜しいな」


 だが、タマキはその足をしっかりと両手で受け止めていた。そしてリールの背中に蹴りをいれて自分の上からどかせると素早く立ち上がった。


「やっぱりなってない」


 タマキはにやりと笑った。その姿はまるでダメージを負っているようには見えない。リールはその姿を見て、始めていらついた表情を見せた。


「生意気じゃないか、ああ、生意気だ」


 リールは今までの余裕のある表情を消し、その瞳に殺意を宿した。タマキはそれを見て、始めて身構える。


「やっと本気になったか」


 リールは無言で再び加速したが、その左の拳はタマキの右腕で受け止められていた。しかし、リールの力のほうが上で、タマキを押し込んでいく。


「その程度の力!」


 リールは空いた手で風の刃を作り、至近距離からタマキに放った。それはタマキの脇腹をかすって血を飛び散らせるが、タマキは逆に一歩踏み出し、左手をリールに突きつけた。


「バースト!」


 爆発が起こり、至近距離でそれを顎に受けたリールは派手に吹き飛ばされた。そのまま転がると、リールは動かなくなった。


「タマキさん! 大丈夫ですか!」


 そこにライトがすぐに駆け寄ってきた。タマキはまだ出血している脇腹をおさえながら軽く手を上げる。


「まあ、我慢でなんとかなるさ。それより、あいつの刻印をなんとかしないとな」


 それから二人が倒れているリールの側まで行くと、それは見事に気を失ってのびていた。タマキはその傍らにしゃがむと、袖を破って刻印を露出させた。


「それで、こいつをどうやって消せばいいんだ」

「今のタマキさんならその右腕をさらに違う形に変化させられるはずです。刻印を切れるようなものに変化させて、それを使えば刻印を消せるはずです」

「違う形か」


 タマキは自分の右腕を持ち上げて目をつぶった。数秒後、タマキは目を開けると左手を右手首にそえた。


「頼むぞ」


 言葉と同時にタマキの右手首から先が光った。そして、その手は普通の指ではなく、五本の鉤爪のようなものが生えている物騒な姿になっていた。


「こんなもんか」


 タマキはその鉤爪をガチャガチャ言わせ、左手でリールを押さえた。そして、鉤爪で刻印を軽くなぞるようにした。すると血が滲むと同時に刻印が光りになって消えていった。


「おお、消えたな。まあこれでこいつは用なしだ」


 タマキはすぐに鉤爪から元の手の形に戻し、立ち上がった。


「いいんですか、このままにしておいて」

「気絶してるだけだから大丈夫だろ。それに、こいつの仲間が回収にくるだろうから、俺達はさっさとここから離れよう」


 二人はその場から立ち去った。その途中、ライトは疑問を口にすることにした。


「タマキさん、僕から見ると、力の差のわりに相手を間単に倒しているように見えたんですけど」

「ああ、確かに単純な力なら今の俺よりあいつのほうが上だろうな。でも、あいつに限らず、その前の奴も力をうまく使えてないんだよ。無理矢理だから見た目は派手でも効果はいまいちっていうことだな」

「それでは、タマキさんが最後に使ったあれは」

「あれが魔法だよ。残ってる力じゃ、あれが限界だったんだけど、それでもあいつらの攻撃よりも上だな。それに、あいつらはそれ以外の攻撃も直線的で読みやすいんだ。経験の差ってやつだな」

「そうだったんですか。タマキさんはすごいんですね」

「いや、まあ時間が経てばあの連中も力に慣れてくるだろうし、簡単にはいかなくなるだろうな。そのぶん、俺もこの右腕に慣れるだろうから、一方的に不利ってわけでもない」


 タマキは自分の黄金の右腕をなで、ライトもそれをじっと見た。


「確かに、すごい進化の速度ですね」

「ああ、だんだんこいつの声も聞こえてくるような気がしてきたくらいだ。言うことは聞いてくれてるから、嫌われてはいなんだろうな」

「もし、完全に意思疎通できるようになったら、すごいことですよ。でも、今はとにかく家に戻って傷の手当てが先ですね」

「そうだな、これからのことはそれからだ」

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