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世界のありかた

 タマキはライトと一緒に近くの町に来ていた。二人は城壁のない町の入口で立ち止まり、町の様子を見ていた。


「けっこう大きい町だな」

「はい、島にある町ではここが一番大きいんです」

「あんまり人が出歩いてないんだな」

「それには事情があるんです。こっちです」


 ライトはタマキの先に立って歩き出した。タマキもそれについて行きながら、周囲を見回している。家は大抵二階建てまでで、あまり大きな建物はなく、それほど綺麗な建物はない。そして、屋外に人が少ないのがやはり妙だった。


 そして、小さな平屋の前に来るとライトは足を止める。


「ここです」


 ライトは鍵を取り出してドアを開けた。中に入ると、軽く埃が積もっていて、あまり大したものは見当たらない。


「ここもいざという時のための場所なのか」

「はい。僕が昔住んでた家なんですけどね」


 ライトはそう言いながら、部屋の隅にあった椅子を持ってきた。タマキも薄く埃をかぶったテーブルを部屋の中心に置いた。


 それから二人は椅子に座って向かい合う。


「すみません、何もなくて」

「それは仕方ないだろ、それより、俺をここに連れてきた理由を教えてくれ」

「あの小屋では不便ですし、それにタマキさんにこの町を見て欲しかったんです。この町はおおむね平和といえばそうかもしれませんが、自由も活気もありません」

「確かに、空気が淀んでるというか、まるで動きがない感じだな。どこもかしかもこんなふうにしようってことなのか」

「いえ、ここもまだ完成されてるわけではないんです。抑圧されていても、まだこの町の人達にはまだ自分の意思があります。それも危険な状況ですが」

「なるほどな、まずはここをなんとかできないと、どうにもならないか」

「はい、それでも相手にはタマキさんの力が必要ですから、命まで奪われることがないのが数少ない有利なことです」


 タマキは自分の腹に手を当てる。


「こいつか。力を取り戻す方法はないのか?」

「今のタマキさんの右腕なら、相手の力を消すことはできるはずです。でも、それではタマキさんに力は戻りません。まずは十二の刻印全てを消す必要があります」

「そうなのか、それでも相手の数は減らしていけるんだな。だんだんこの腕も馴染んできたし、やってやれなくもないか」

「それについては僕もわかってないことは多いんです。そこまで完璧な腕に一瞬で変化したのは予想外でしたし、それに、かなり深くつながってるみたいですね」

「ああ」


 タマキは自分の黄金の右腕を持ち上げ、そこから血管のようなものが伸び、盛り上がっている自分の右目の周囲を撫でた。


「確かに、もうまるで自分の腕みたいだし、こうやって神経が繋がってるっていうのかな、そのおかげで力も沸いてきた。でも、どうもこの腕だと魔法は使えない感じだな」

「そうなんですか、それより、魔法が使えるんですか?」

「一発くらいなら大丈夫だな。まあ、いざという時以外には使わないけど。他にも使えるものはあるからな」

「あの手から炎を出したものですね」

「そうだ。俺がこうして生きてられるのもこの力のおかげなんだよ。それに、これは俺にとって大事なものだ。まあ、ああやって使うのは久しぶりなんだけどな」


 それからタマキは立ち上がった。


「ここでこれ以上話しててもしょうがないよな。ちょっと町を案内してくれよ」

「はい、わかりました」


 ライトも立ち上がり、二人は外に出て行った。


 その頃、町のある場所では、道に倒れている中年の女に若い男が駆け寄っていた。


「おい、大丈夫かよおばさん」

「あんた、駄目だよ放っておかないと」

「ちっ、そんなわけにはいかないだろ」


 若い男は中年の女を起こそうとしたが、突然その肩が切れて、血が噴出した。


「うあっ!」


 うめき声を上げて若い男は肩を押さえる。その背後から、甲高い声が響いてきた。


「おいおい、困るじゃないか。勝手にそんなことしてもらっちゃあ」


 若い男が振り返ると、そこには派手な格好をした中年の男がいた。その男は満面に笑みを浮かべ、若い男に近づいていく。


「まだ若いんだから、余計なことをするもんじゃないよなあ。わかるだろ」


 中年の男が若い男の無傷の肩に手をかけると、その肩を強く握った。


「う、うあ、やめてくれええええええ!」


 若い男は悲鳴を上げたが、中年の男は握力でその身体を無理矢理持ち上げて立たせた。


「やめてください! お願いします」


 中年の女は満足に動けないにもかかわらず、中年の男の足にすがりついた。だが、すがりつかれた男はその女を蹴り飛ばす。


「あのなあ、あんたが余計なことをしてるから、この若者がこんな目に会うんだよ。わかるか? 目障りなんだよねえ」

「はい、なんでもいたしますから、どうかその子は放してください!」

「ほう」


 中年の男は若い男を放り投げ、足にまとわりつく女を蹴り飛ばした。


「調子にのらないほうがいいよなあ。まったく、この町でもまだこれじゃあ参るねえ。始末したほうがいいかもな」


 中年の男は指を立てると、そこに風をまとわせた。だが、そこに一つの石が飛来し、その腰に当たった。


「おや、これは?」


 中年の男がその石が飛んできた方向に顔を向けると、そこにはタマキとライトがいた。


「石を投げたのはお前だな。それにそっちのは、ああそういうことか。お前が話に聞いてた奴だな」


 中年の男は一人で納得したようで、指にまとわせていた風をタマキに向けて飛ばした。それはタマキの頬をかすり、切り傷を作る。


「ほう、いい度胸だなあ。確かこれを殺すのはまずかったんだったか」


 タマキは無言のまま足を踏み出した。


「俺はタマキだ、あんたの名前は」

「私は十二使徒の一人、リール。お見知りおきを」


 リールと名乗った男はわざとらしい礼をしてみせた。タマキはそれを無視して、倒れている中年の女と若い男に目をやる。


「ライト、あの二人を頼む。そこの鬱陶しいおっさんは俺が相手をするから」

「わかりました、気をつけてください」


 ライトに軽く手を上げてから、タマキは地面を蹴ってリールに迫った。


「直線的だねえ、そんなことじゃ」


 リールが指をならすと、そこから風の刃が走った。だが、タマキはそれを右腕で弾くと、そのまま突進する。


「おっと」


 だが、リールは高く飛び上がって、近くの家の屋根に乗った。そして対峙する二人の後ろをライトが走り、倒れている二人に駆け寄った。タマキは一瞬だけそれを見ると、すぐにリールに視線を戻した。


「なんであんなことをやってたのか理由があったら聞かせてもらおうか」


 タマキの問いにリールはあからさまに嘲りの表情を浮かべた。


「我らの理想のためには、この町にいるものが勝手な行動をすることは許すことはできないんだなあ」

「そうか、思ったよりもくだらない理由だな」


 タマキはため息を一つつくと、右腕で手招きをした。


「好き勝手したいなら、まずは俺を倒してみろよ。楽しませてやるぜ」

「なるほど、それなら適当に相手をしてあげようじゃないか」


 リールは屋根から飛び降り、タマキと向かい合った。

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