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使徒の力

 戦闘体制に入った三人を前にしても、ジャルリはまったく動じていなかった。その視線はカレンの姿をとらえている。


「それが混沌の力か。実に忌まわしいものだな」

「私の情報もそれなりに持っているようですね、それ以外の情報も、全て吐き出してもらいますよ」


 カレンは地面を蹴り、ジャルリに剣を振り下ろした。だが、ジャルリはそれを大槌で受け止め、カレンの勢いも殺してみせる。


 カレンはすぐに後方に飛び退くと、入れ違いに要一が次元の鉄槌で殴りかかる。


「おおお!」


 渾身の力で振り下ろされた次元の鉄槌は、ジャルリの大槌で受け止められた。


「この程度か!」


 要一は弾き飛ばされたが、なんとか着地する。


「要一君、正面から行っても駄目だって!」


 まもるは脚部ブースターを噴射して、ジャルリの上に出る。そして左大腿部に収納されていた銃を取り出して乱射した。ジャルリはそれを大槌振り回して防ぐ。


 まもるはそのままジャルリの背後に着地して銃を構える。だが、撃ちはせずにそのまま様子を見た。ジャルリは三人に包囲された形になったが、少しも慌てた様子はなく、大槌を肩に担ぐようにして構えなおした。


「確かになかなかの力のようですが、その程度ならば情報だけ吐き出しておくのをおすすめしますよ」


 カレンは挑発気味に言うが、ジャルリはそれを意に介した様子はない。


「我が主より与えられた力を見てもそのようなことが言えるかな?」


 ジャルリが右手を顔の前で握ると、その手の甲に円状の刻印が浮かびあがる。それが光ると、カレンは顔をしかめた。


「この力、タマキさんと同じ」


 そして次の瞬間にはジャルリは今までとは異質な力をまとっていた。


「注意してください!」


 カレンが叫ぶと同時にジャルリは地面を蹴って要一に迫った。


「フォーム! シールド!」


 要一はその突進に対し、咄嗟に次元の鉄槌を盾に変化させて防ぐ。だが、衝撃は殺せずに、要一は大きく吹き飛ばされた。カレンはすぐにその間に割り込み、ジャルリの攻撃を受け止める。


 ジャルリはすぐに後ろに飛び退いたが、そこにまもるが後ろからジャンプして急降下してきた。


「超振動ブレード!」


 右大腿部から取り出したものが伸び、一瞬で細い剣を形成し、まもるはそれをジャルリに振り下ろした。だが、そこにジャルリが振り向きざまに振った腕から一筋の雷が炸裂する。まもるはそれをもろに受け、吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。


「その力は、どこで手に入れたんですか」

「我が主からだと言っただろう」

「いいでしょう、とぼけるなら、剣で聞くまで」


 カレンはショートソードを構えると、一気に上昇し、そこからジャルリに向かって急降下した。ジャルリは再び雷を放ったが、カレンはそれをかわしてジャルリに突きかかった。


 ジャルリはそれを大槌で受けたが、カレンの勢いに体を後ろにもっていかれる。それでもなんとか踏ん張って勢いを止めるが、すでにカレンはその上にいて、ジャルリの頭を蹴り飛ばしていた。ジャルリはその衝撃に吹っ飛び、地面を転がった。


 カレンはさらにそこにショートソードを突きたてようとしたが、ジャルリは転がりながら大槌を地面に叩きつけ、その反動で跳び上がってなんとかそれをかわす。


 しかし、そこで体勢を立て直す前にカレンはさらに追撃をかける。その振り下ろしたショートソードはギリギリのタイミングで大槌で受け止められたが、カレンは間髪入れずにもう一撃ジャルリに蹴りを食らわせた。


 ジャルリは今度は体勢を立て直せずに倒れた。カレンはそこにショートソードを突きつけた。


「さて、そろそろあきらめましたか?」


 だがその状況でもジャルリは表情を変えない。そしてその前方から炎の矢が迫り、カレンがそれをショートソードで弾くと、その隙にジャルリは何とか距離をとった。


「まだいましたか」


 カレンの視線の先には細身で長身、長髪の女が立っていた。その女は指先に炎を宿してジャルリを見る。


「ざまあないじゃないか」

「お前こそ、遅かったな」

「あんたが突っ走るからだろ、それより、そいつが混沌の力を持つっていう奴か」

「そうだ、忌まわしい力だ」


 その会話はカレンが振った剣の音で遮られる。


「一人増えたようですが、その程度でどうになると思ってるんですか」

「そういえば自己紹介がまだだったか、私はカロミーア、以後お見知りおきを」


 カロミーアと名乗った女は大仰に礼をした。


「残念ですが次はありません」


 カレンはショートソードを構えたが、カロミーアはそれを見て笑みを浮かべた。


「そちらこそ残念、こっちはここで退かせてもらおうか」


 その言葉が終わる前にカロミーアとジャルリの背後に空間の歪みが現れ、二人はそこに姿を消していった。カレンはそれを追おうとしたが、すぐに無駄と悟り足を止める。


 そこに復帰した要一とまもるが駆け寄る。


「逃げられちゃいましたね」


 まもるはそう言いながらベルトのバックルを外して変身を解除した。だが、カレンはそれほど落ち込んだ様子はない。


「確かに逃がしましたが、あの使徒と名乗る者の主というのが何かの手段でタマキさんの力を奪ったのはわかりました。それに、逃げるのを追っていけば必ず目的の場所にたどり着けるはずです」

「それじゃあすぐに追わないと」


 要一が焦った様子で言ったが、元の状態に戻っていたカレンは首を横に振った。


「いえ、相手はおそらく罠を張っているでしょう。そこに無策で飛び込んでいくのは上策ではありません」


 カレンはショートソードを鞘に収めた。


「でも、どうすればいいんですか?」


 要一の疑問にまもるが頭をかく。


「相手が十二使徒っていうんなら、もっと数がいるわけだし、一気にかかってこられたらきついかもね」


 だがカレンの表情には余裕があった。


「いえ、むしろそうなってくれれば手間が省けます。問題はこちらが戦う時と場所を決められるようにすることと、相手を逃がさずに倒して、そこからタマキさんの手がかりを得るということですから」


 それを聞いたまもるは何か納得したような表情を浮かべる。


「今みたいに逃げられたら手がかりも得られないですもんね。でも、どうすればいいんでしょうか」

「とりあえずは、相手に隙を与えないように戦うのがいいでしょうね。そうしていけば、向こうの弱点もわかってくるでしょう。残念ながら、現状では情報が足りないので、理想的な対応というのはできるものではありません。なので、まずは私が先行して様子を見ます」

「カレンさん、一人で行くんですか?」


 要一が聞くとカレンはうなずいた。


「はい。要一さんとまもるさんはここで待機して管理人さんと連絡をとっていてください」

「危険ですよ!」


 まもるはカレンに反論したが、要一は頭に手を当てて口を開いた。


「いいや、カレンさんだけでも進んでくれれば、それだけ情報が得られるみたいですよ。うまくいけば相手の裏をかくようなことができるかもしれないって言ってます。連絡はそっちのサモンっていう奴を通して取れるみたいです」

「決まりですね。私は時間を稼ぐように行動するので、情報収集をよろしくお願いします」

「それなら、わかりました」


 まもるは多少納得いかない様子だったが、うなずいた。

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