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眷属

 ダンジョンは予想以上の広大さで探索はそれなりに時間がかかっていた。だが、その間、眷属とは出会わず戦闘はなかった。


「しっかし、嫌になるほど広いな」

「そうですね、奥に行くほど広さも増しているようですし、中々厄介な場所です」

「いや、もうすぐ終わりだろう。いくらなんでも」


 三人は会話をしながらも、警戒は怠らずに進んでいっていた。そして数分後、装飾が施された大きな扉の前に到着していた。


「ここが終点のようですね」


 カレンがそう言うと同時に、扉がわずかに開いた。そこからは光りが漏れてきている。アデーレは一歩踏み出した。


「これは誘ってるな。面白いじゃねえか」


 アデーレはそのまま扉に近づくと、カレンもそれに並んで、二人でゆっくりと扉を押し開ける。その先には多くの灯りと椅子が並んでいて、まるで礼拝所とでも言うべき雰囲気の場所だった。


「ようこそ、諸君」


 その一番奥、一段高くなっているところに一人の男が立っていた。アデーレはそれを見て盛大にため息をついた。


「なんだ、あんたかよ」


 それはデズルだった。しかし、アデーレに撃たれた傷はなくなっている。


「どんな手品を使ったのか知らないが、傷がなくなったくらいでお前に何ができる?」

「それはどうかな?」


 デズルは満面の笑みを浮かべて軽く片手を上げた。すると、右側面の壁が崩れ、全身が鱗に覆われた五体の眷属が姿を現した。イシルドはデズルにライフルの銃口を向けている。


「これはお前の力ではないだろう。この力を与えた者はどこにいる」

「ほう、この私の素晴らしい力がわかるのかね?」

「素晴らしいだと? 吸血鬼の力は人間が持つべきものじゃない」

「そうかね、それは並の人間ならだろう」

「お前は並以下らしいな」

「くっ、かかれ!」


 デズルが手を振ると五体の眷属が一斉に動き出した。だが、カレンとアデーレがその前にすぐに移動する。


「イシルド、あっちの馬鹿はあんたに任せた」

「こちらは心配の必要はありませんから」


 イシルドはうなずくと、ライフルを構えたままデズルに近づいていく。


「ほう、そんなライフルで私がどうこうできるとでもおう!」


 銃声が響き、しゃべっている途中のデズルは頭を仰け反らせた。


「き、貴様!」


 デズルの額は無傷だったが、感情は傷つけられたようだった。その様子を見てイシルドはライフルを捨て、右手でサーベルを抜いた。


「そろそろ本職の俺がしっかりやらないとな」

「貴様ああああああああああああ!」


 デズルが叫ぶと、上半身が一気に膨張して服が破れ、異常なまでに筋骨隆々とした男になっていた。下半身もズボンがぎりぎりまで膨張している。


「死ねええええいいいいいいいいい!」


 デズルが勢い良く飛びかかってきたが、イシルドは恐れることなく踏み込み、すれ違いざまに足をサーベルで切りつけた。


「ぎょああ!」


 デズルはうめき声をあげ、切られた膝のあたりを押さえる。


「なぜ、なぜ切られる!」

「本職だと言っただろ」

「な、なんのことだ!」

「俺は吸血鬼ハンター、お前達相手の専門家だ」

「言うねえ」


 その対決を横目で見ながら、アデーレは二体の眷属を相手にしていた。ライフルを撃ち、さらに銃床で殴って一体を倒す。さらに倒れたそれにライフルを叩きつけると、別の一体に向けて自分の銃の弾を撃ち込んだ。


「カレン、そっちは大丈夫か!」


 すでにカレンは一体を倒し、別の眷属に蹴りを入れているところだった。


「問題ありません」

「じゃあ、さっさと片付けるか」


 アデーレは残りの銃弾を全て撃ち込んでから、ベルトの後ろの銃を抜いた。


「眠れ」


 そして二体の眷属に二発づつ撃ち込んだ。その銃弾を受けた眷属はその場に倒れ、元の人間の姿に戻った。同時に、カレンはショートソードに雷をまとわせ、二体の眷属を同時に倒していた。


「さっすが、あとはあいつだけだな」


 アデーレはカレンに近寄り、イシルドとデズルの方を見た。だが、カレンはそれを手で制す。


「いえ、ここはイシルドさんに任せましょう」

「そうだな、それがいいか。頑張れよイシルド!」


 アデーレが声をかけると、イシルドは軽くうなずいたが、デズルから視線は外さない。デズルは眷属が全て倒されたのを見ると、ますますいきりたった。


「おのれおのれおのれ! 貴様ら全員生かしては返さん!」


 そこでイシルドはサーベルを左手に持ち替え、右手で銃を抜いた。


「まずは俺を倒すことだな。来い!」

「ぐぅああああああああああ!」


 デズルが雄叫びを上げ、イシルドに襲いかかった。


 まずデズルの右腕が振り下ろされるが、イシルドはそれをかわして銃弾を一発撃ち込んだ。デズルはダメージを受けたが、イシルドの方に足を踏み出して左手を横殴りに振るう。イシルドはそれをサーベルで受けるが、力を完全に受け流すことはできずに体勢を崩される。


 そして、デズルは裂けていると思われるほどの大口を開けてイシルドの首筋を狙った。だが、イシルドはそこに銃を突きつける。


「こんなもので私が倒せるかあ!」


 デズルはそれにかまわずにイシルドに噛みつこうとした。その瞬間、イシルドの銃が光り、そこから一発の銃弾がその口内に放たれる。


「ゲゲゥボ!」


 デズルは喉を貫かれ、後ずさった。その隙にイシルドは銃をホルスターに収め、その右手の指でサーベルの刀身を根元からなぞった。指に追随するようにサーベルの刀身が光を発し、刀身全体が光に包まれる。


「これで終わりだ」


 サーベルが振るわれた瞬間、そこに二発の銃弾が飛来してそれが弾かれた。


「そいつの始末はまだ早いぜ」


 その声と同時にデズルの胸を長剣が貫いていた。イシルドは体勢を立て直すと、その長剣の主の正体にすぐに気がつく。


「何をしに来た! アニエルド!」


 デズルをその右手の長剣で貫いているアニエルドはにやりと笑った。


「ちょっとしたものの回収にな」


 そして長剣をデズルの身体を抉るようにして引き抜いた。その剣の先には赤く、血に塗れた小さな宝玉のようなものがあった。アニエルドはそれを手に取ると、口に入れて飲み込んだ。


「こんな雑魚に力を与えるとは、吸血鬼にも物好きがいるもんだ」


 そう言うと、アニエルドは残りの銃弾全てをデズルの身体に撃ちこみ、その場から走り去っていった。イシルドはそれを追わずに倒れたデズルの様子を見る。


「そいつ生きてるのか?」


 アデーレは聞くが、イシルドは首を横に振った。


「駄目だな。もっと話を聞きだしたかったが。眷属にされてた奴はどうだ?」

「大丈夫なようです、全員元の人間の姿に戻っています」

「そうか、とにかくそいつらをここから連れ出して、後のことはそれからだな」

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