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災厄の姿

「それでは行くぞ! お前らは我が援護だけに集中しろ!」


 ベンハルトは力強く宣言してから背中の大剣を抜く。


「真紅の翼の我が従僕よ、その力でこの世の全てを爆砕せよ! 爆ぜろ! レッドバーストドラゴン!」


 爆発と同時にレッドバーストドラゴンがベンハルトの背後に出現した。


「威勢のいい王子様だ」


 タマキはそうつぶやくと、オーゲンの顔を見た。オーゲンはそれに軽くうなずいてみせる。


「これくらいのほうがいいだろう。あいつの全力を見られるいい機会だ」

「そんなに楽しみなもんか?」

「俺は楽しみだ」

「じゃあ、俺も楽しみにしておくか。それと、地上のほうは任せるからな」

「ああ。タマキ、お前も油断するなよ」

「わかってるさ」


 それからタマキはベンハルトのところに行く。ベンハルトはそれを一瞥すると、空を見上げる。


「準備はよいか」

「ああ、俺が合図してからあんたがあの雲の核を撃ち抜くってことでいいんだよな」

「そうだ、スカーレットバーストを収束させて一撃で貫く。位置は正確に頼むぞ」

「わかった。じゃあ行ってくるから、あとはよろしくな」


 そして偵察の時と同じようにタマキはドゥームデーモンにつかまって上空に飛び上がっていった。ベンハルトはそれを腕を組んで見送る。


 タマキとドゥームデーモンが雲に突入して数十秒後、その雲が一つ鳴動し、そこから黒いものがベンハルトとオーゲンに向かって降り注いできた。


「弾き返せ! レッドバーストドラゴン!」


 レッドバーストドラゴンは翼を大きく動かして風を起こし、その黒いものを吹き飛ばした。


「小賢しい。あれはこの程度の存在なのか?」


 だが、その黒いものはいくつか地表に到達し、すぐにオーゲンとシルバーファングタイガーがそこに向かっていった。ベンハルトはそれを見送ると、再び上空を見上げた。


「さあ、早くしろ。一撃で蹴りをつける」


 そして数分後、雲のなかで一際強い光があった。ベンハルトはすぐにそれに反応する。


「今だ! 穿孔のスカーレットバーストオオオオオオオオオオオオ!」


 レッドバーストドラゴンの口から、収束され、まるでレーザーのような一撃が放たれ、光の場所に真っ直ぐに伸びていった。その一撃は確実に光の発生した場所を撃ち抜き、上空に大きく派手な爆発を巻き起こした。


「やったか!?」


 しかし数十秒後、ベンハルトの近くに何かが勢い良く落ちてきた。


「ああ、全く。ひどい目にあったな」


 その何か、タマキは頭を振りながら立ち上がった。その下敷きになったドゥームデーモンもゆっくりと立ち上がる。


「これは、どういうことだ」


 オーゲンはつぶやき、空を見上げる。すると、そこには四散させられた雲が再び集まり、何かを形成するかのように蠢いていた。


「来るぞ!」


 タマキが叫ぶとほぼ同時に、集まっていた雲が竜の形をとった。


「あれは、我がレッドバーストドラゴンと同じ姿だと?」

「どうやら、姿を複製したらしいな。あの攻撃を吸収したんだ」

「吸収だと? まさか、信じられん」

「目の前を見ろよ。アレはまだまだピンピンしてる。さっきの一撃が効かなかった証拠だ。しかし、あの白いドラゴンはなんか変だな」

「当たり前だ! あのような腑抜けた色で我がレッドバーストドラゴンの姿をまねるとはな! すぐに粉砕してくれる!」

「待て」

「行け! スカーレットバースト!」


 もう一撃、豪華が上空に伸びていくが、それは白い炎で相殺されてしまった。


「くっ、あれは一体なんだというのだ」

「さあな、でもこのままじゃどうしようもないのは間違いない」


 そう会話をしている間にも、白い竜は地表に黒いものを落とし、そこから次々と怪物が生まれていく。


「こいつはまずいな。少しならやるしかないか?」


 タマキは空を見上げるが、ドゥームデーモンがその前に出た。


「それよりも我にもっと力を寄越せ」

「限界までやると五秒くらいしかもたないぞ」

「かまわん、どのみちこのままでは打つ手はあるまい」

「それもそうだな、いくぞ」


 タマキはドゥームデーモンの肩に手をかけた。そして軽く力を入れると、ドゥームデーモンの鎧が弾け、兜の一部が仮面のように残った。次の瞬間、ドゥームデーモンは弾かれたように飛び出していく。


 そして、それは一直線に白い竜に突っ込み、その周囲を激しく回転して雨あられと攻撃を降らせてから、姿を消した。


 しかし、爆煙が晴れると白い竜は依然としてその場に浮いていた。


「駄目か、こうなったらアレしかないな。王子様、あいつの足止めは頼むぞ!」


 タマキはそれだけ言うと、後ろに向かって走り出した。


「どこに行くかは知らんが、足止めで終わらせる気はないぞ!」


 それからタマキはリシカとヒスク、そしてフローニカの元に戻ってきていた。ヒスクはその姿を見て驚いた表情を浮かべる。


「どうしたんですか? あの白い竜は一体」

「話は後だ。リシカ、お前に相談がある。あとの二人も、とりあえず聞いてくれ」


 タマキの言葉にその場の三人はうなずき、話を聞く態勢になった。


「あの白い竜なんだけど、かなり強くてな。はっきりいってこのままだとまずい事になる。そこでだ、リシカ、お前の力が必要だ」

「あたし?」

「ああ」


 それからタマキはフローニカの目を見る。


「リシカの災厄の力っていうやつを使うしかない。あの痣も変わったことだし、ここはぶっつけ本番でやってみるしかないだろ」


 フローニカは驚きと、何か納得したような表情を浮かべた。


「そういうことでしたか。しかし、その様子ですと、力の制御はできていないんですね」

「やっぱり驚かないか。まあ、そういうことだよ。どうだリシカ」


 リシカは戸惑いながらもうなずいた。


「そういうことなら、やってみる」


 そうしてリシカは両手を前に出した。すると、その間に黒い炎のようなものが出現する。そしてその黒い炎は一気に大きくなった。


「リシカ!」


 ヒスクが駆け寄ろうとしたが、タマキがそれを止めて、様子を見る。その間にもリシカの出した炎は大きくなっていき、次には背中からも黒い炎が噴出した。だが、リシカは何かにとりつかれたかのように、目の前だけに集中して、黒い炎を大きくしていく。


 数秒後、リシカの体から黒い炎が勢い良く立ち上り、そこから漆黒の竜が実体化した。その姿はレッドバーストドラゴンよりも一回り大きく、その巨体からは禍々しい雰囲気が滲み出している。


「こいつは、ちょっとまずいかもな」


 タマキの言葉と同時に漆黒の竜は咆哮を上げ、空に舞い上がっていく。リシカは焦点の定まらない目をして、そこに立ち尽くしているだけだった。


「力に飲まれたか」


 タマキはそれだけつぶやいて漆黒の竜が飛んでいった、白い竜がいる方向を見上げた。

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