4話 再会/再会
私とゆーちゃんの乗った車は、夜の東京へと入り
都会らしさ全開のビル街を通り抜けた。
途中、欧風な見た目をしたレンガ造りの建物が見えた。
『……あれってホテルかな?』
『んふふっ!ゆーちゃん!あれ駅だよ!アハハ〜!』
……いーや絶対ホテルだね、あんなの駅なわけないもん
なんてやり取りをしながら、私たちの車は目的地に近づいてきた。
ビルが立ち並ぶ景色から少し離れて
近くに家々がほとんど見えない僻地へと入り、生い茂る木々の間を抜けると
水平線の暗がりまで続く、大きく長い塀が現れた。
車はその長い長い塀の横を十数分走っていき、
やがて、とても大きく豪華に見える和風の門の前に着いた。
あれだ、神社とかお寺にあるでっかい木造の門っぽい感じ。
夜で真っ暗だから、けっこう不気味だなー。
車が停まってすぐ、ゆーちゃんはルンルンと車を降りていった。
ゆーちゃんが門に気圧されることなく、悠々と入っていくので私もそれに着いていく。
門の先には森が広がっており、少し進むと開けた場所に出た。
中央にはバカでかい噴水が、ザァザァと音をたてて
大量の水を噴き出している。
その噴水からは複数の道がのびており、
周囲を見れば数え切れないほどの大きな建物の影が
折り重なって見え、道はそれらに繋がっているようだった。
ただその中でも、一際巨大な屋敷が
正面で私たちを待ち構えていた。
流れでここまで来てしまった。
私の記憶に繋がる何かが、ここにあるといいのだけれど。
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『帰ったよーー!!ゆーちゃんだよーー!!!』
屋敷に入るなりゆーちゃんは叫んでいる。騒がしい。
ここに到頭の人たちがいるんだろうか、いるにしても夜だから皆寝てるんじゃないかな……
屋敷の中はたくさんの階段で埋めつくされており、外から見た荘厳さからは想像できないほど、機能面にすべて投げうったデザインをしていた。
どこぞの魔法学校みたいだなー…
『あんれぇ!ゆーちゃんじゃん!』
なんともマヌケな声がした。声がした方向を見ると
身長がだいたい170後半くらい、全体的に痩せ型で
カメラ…それも監視カメラみたいな顔をした男がいた。声質的にたぶん20代半ば?かな
『るーちゃん!この人は"石井 獏"!ここで事務員してる人だよ!!』
パッと見は警備員にしか見えないんだけどね、顔だけ見たら。
でもまあスーツがピチッとしていてかっこいいなぁ
ゆーちゃんも同じの着てるし、私も着れるのかな
ふふふ
『この子が類ちゃんか!よろしくねぇ』
石井さんが手を突きだしてきた、あぁ握手ね
私も手をだして、
『はい、よろしく石井さ』
と言い終わる前に、ガッと手を掴まれた。
『ほんとよろしくねぇ!新人さん来るの珍しいからさぁー!僕は能力とか持ってないけど、何でも頼ってよねえ!』
と言われながら、握られた手をぶんぶん振られる。
痛い痛い…ゆーちゃんと同じタイプか?この人…
『んじゃ!預かるねえ!!』
…ん?預かるって何?
そう聞こうとしたときには
私は石井さんに無理矢理引っ張られて、近くの階段を上がっていた。
『またね〜!頑張って〜!!』
『頑張るってなに…わわっ!』
階段下から声が聞こえたときにはもう
ゆーちゃんの姿は見えなくなっていた。
そのまま手を引っ張られて、石井さんにどこかへ連れられてく。
着いてくから!もう手は引っ張らんでいいから!!
てか説明せんかい!!!
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何階かもわからない廊下を
石井さんは迷いなく進んでいく。
さっき手を強めに引っ張られたせいで
ちょっと警戒しつつ、私はその石井さんの後ろについていく。
『いんやあごめんねえ、"色々説明しないで通せ"って言われてんのよー』
石井さんはそう呟くと、ある扉の前で止まった。
『さぁ、ここで王がお待ちだよー』
『……王?王って、何の?』
『世界の』
そう言い、石井さんは通ってきた廊下を戻っていった。
勢いの強い人だったな……到頭はあんなのばっかなんだろうか。
『いいよ、入って』
扉の向こう側から女性の声がした。
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王ってことは、この到頭のリーダー?なんだろうか
上司?いや社長みたいな人ってことかな
えーー、どういう感じで接すればいいんだろ……
そう廊下で唸っていると
『聞こえなかったか?入っていいんだよ』
とさっきよりも少し強めの声で言われた。
わーやばいやばい
『失礼しまーーす………』
とにかく姿勢を低く見せつつ、扉をゆっくり開けた。
部屋の奥にある大きな窓から、月光が強く射し込んでいて
部屋の中がどうなっているかはよくわからない。
だけど160cmくらい…だいたい私くらいの背丈がある少女が
大きな影を私に伸ばして立っていたのが見えた。
『やぁ』と少女は手を振りながらこちらに挨拶する。
スーツを着こなしたその少女の顔は、私にどこか似ていた。
『こんにちは、ぼくは王。この世界を仕切っている。そのまま王と呼んでいいよ』
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えと、とりあえず挨拶しなきゃ。
『初めまして!麻黄 類です!到頭に新しく…入るでいいんですよね?』
お辞儀しつつ挨拶、というか質問までしてしまった。
正解がわからない…敬語とかわかんないし…
顔を上げて王をチラリと見る。
王はなんだか寂しいような、悲しいような顔をしていた。
しまった、なにか間違えてしまったか。
『……結城、あの口紅の娘はちゃんと説明しなかったのか?……まぁしないよな、あの娘はなぁ』
『?能力持ってる人は到頭に入るみたいなことは聞きました』
『まぁ間違いではないよ。ただもっと詳しく説明してほしかったんだ。活動に加えて、施設の案内とかもろもろね。』
『石井さん?ってカメラ頭の人は"説明しないで"って言われてたとかなんとか』
王はちょっと苦い顔をした。
『それはぼくとの面談とかの説明だよ、ったく。石井も結城も優秀だが、人に合わせることが出来ないからな……』
王は愚痴りつつ、少し考える素振りをして
『よし!ぼくが直々に案内しよう!着いておいで!』
王はそう言いつつ、私の横を通り扉を出た。
廊下から小声で
『…そろそろサボりたかったし』
と呟くのも聞こえた。
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私と王はひらすら下へと、階段を下っていく。
途中何度か王が
『ここだよな…たぶん合ってる…たぶん…』
と呟いたのが聞こえた、大丈夫なんだろうか。
王ってなんかどこかで聞いたことあるんだよなー
テレビのニュースで出てた気がする。
目鼻口があるのに加えて、私にちょっと似てるから
印象に残りやすいはずなんだけど
なんでかハッキリ覚えてないんだよなー。
『あのぉー、王さんって普段どんな仕事してます?なんかテレビで見たことある気がするというか。でも顔を初めて見たというかー……』
『む?あぁ、基本的には世界を回って国と国のいざこざを説教して止めたり……あとは色んなお偉方の仲介役だな。それに活動中は顔を隠している。だからニュースで見ても顔は分からなかったんだろうね』
ふぅん……顔を隠してる……?
『ぼくの能力は簡潔に言うと"不老"なんだ。それを活かして世界を良くしようと努力してるんだが、流石に不老とバレるわけにはいかないからね。あくまで世界を纏める王の一族として振る舞っているわけさ』
『へぇ…不老…いま何歳ですか?』
『………』
あっ、無神経な聞き方をしてしまった。
謝ろうとしたところ、ある扉の前で王が立ち止まった。
『あーここだったな…』
王が扉を開くと、そこは建物のデザインとは乖離していた、近未来的な見た目をした廊下だった。
廊下は50mほどの長さで、
廊下の壁には4,5mおきに扉がついている。
全ての扉にはドアノブなどがなく、
すぐ隣に小さな液晶画面があった。
『類くん、結城から聞いているが。君はあの不思議な空間…"常世"へと入り、不思議な道具を手に入れてたよね?』
『あっはい"髪を梳くと髪型が変わる櫛"を貰えましたー!はい、これですねー』
ぽっけに入れてた櫛を王に手渡した。
受け取った王は廊下を少し進み、ある扉の前に立つ。
扉のすぐ隣にある液晶画面に、王が手を乗せると
液晶画面が光り、扉が開いた。
『念のため指紋認証式なんだ。類くんの指紋ももう登録してあるよ。それじゃあ、おいで』
そう言うと王は、その扉の中に入る。
部屋の中は、整理されてない倉庫って感じだった。
雑多に色々な物が置かれており、
黒板、バイクのヘルメット、よくわからない機械…
王はその機械のうえに櫛をぽんと置いた。
『常世で手に入れたものはココに置いておくんだ。そうすれば、常世に関する仕事は終わりだよ』
『…なんか、扱いが雑じゃありませんか?能力のある、物とか道具でしょう?もっと厳重に管理したほうがいいんじゃ…』
『………これで、いいんだよ』
なーんか意味深な返しをされちゃった。
記憶に繋がるものどころか、気になることが増えちゃったなー……
『まぁ、ここにあるものは許可なく使っていいからね。もっと貴重なものや危ないものは、別の部屋にあるからさ』
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階段を上がったり、下ったり、上がったり、下ったり…
あちこち建物を移動しながら王の案内は続く。
『ここが事務室だね。君のような能力者ではなく、ヘッドハンティングされた非能力者が働いている。書類関係とか細かいのは彼らに任せなよ。』
事務室の窓から、カメラ頭こと石井さんが手を振ってくれた。
『…でここは医務室』
『ここは宿泊スペース』
『この角を曲がるとトイレ』
『場所を覚えるのには時間が掛かるだろうけれど、一通りの施設は揃ってるから、遠慮なく人に聞くといい』
『へー、ありがとうございます』
『ふむ、あっここは食堂だね』
他より大きめの、両開きの扉の向こうでは
様々な職員たちのざわめきが聞こえる。
切符のような券を持って、厨房前で料理を待っている人もいれば
並べられた長机のうえで談笑しつつ、食事をとるグループも見える。
こう眺めると色んな頭の人がいるなー…
ペットボトルみたいな頭…畳まれた布みたいな頭…
あっハンガーみたいな頭の人もいた。
そう眺めていると、私と同じように髪があり、
目鼻口の揃った顔をもつ2人組を見つけた。
王は『おっ、ちょうどいいな』と言い、
そのまま私を連れて、その2人組に近づいていく。
2人組のうち片方は、力強い顔をしていて黒の短髪、
筋肉質でだいたい185cmくらいかな、でかい。
もつ片方は、童顔でいて赤茶のウルフカット、
背丈は私と同じで165cmくらい
一見すると性別が分からなかったけど、たぶん男だな。
近づくと向こうの2人も気づいたみたいで、姿勢をこちらに直してる。
王が口を開こうとしたとき、僅差で黒髪が叫んだ。
『る、類!!!』
聞いたことのある声だった。
ここ数ヶ月はお世話になって、
私を電車の上で助けようとしてくれた人の声。
『麻黄さん…?』




