表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛恋火  作者: うなぎ358
12/15

12、竜志


 プールへのドアは何故だかかかっておらず、容易く入ることができた。しかもスイッチを押したら電気まで点いてしまった。


「不用心だな。まぁ、今は助かるけどな」


 更衣室はなんだか狭く感じる。ロッカーもそんなに多くなく三十くらいしかない。土足で歩いたおかげで気づけば床は泥だらけになっていた。ただやっぱり懐かしさは、まったくといっていいほど感じない。


「まぁ、いっか」


 掃除は苦手だ。たぶん誰かが綺麗にするだろう。更衣室を抜け、外に続くドアを開けた。


 予感めいたものはあった。


 鉄男とはじめが亡くなり、そして洋二に異変が起きて、今オレがプールにきた。


 何か起こしてるとすれば……。


「守子どうして?」


 守子はプールから視線を外し、雨に濡れた髪を素肌に張りつかせ、ゆらりとオレを振り返る。口紅が剥がれ、まるで血をすする悪魔のように赤く染まり、唇はニタリと笑みをきざむ。


「あいつらが竜志を殺したからよ」


 ギラギラと瞳に昏い光が宿る。


「オレは生きてる。殺されてなんかない」

「あんたも同罪よ。竜志に成り変わった偽物なんだから!」

「オレが偽物? どういうことだ」

「あんたはね。竜志の双子の妹、叶無カナなのよ!」

「カ……ナ……?」


 叶無、カナ、かな、その言葉を聞いた瞬間、脳内が弾けるようにスパークするようにイタミが走った。


「ふふふ! 思い出させてあげるわ!」


 いうなり床に落ちていたモップを手にすると、守子は素早くオレの後ろに回り、そして。


 バキン! バシン! バキン! バシン!


 思いっきりオレをモップで殴りはじめた。使い古されたモップには毛がなくなってしまって、木槌のように硬い凶器と化している。


 殴られるイタミから逃げようと、前へ、前へ、前へ、よろめきながら進み。


 バジャーン!!


 まるで奈落の底のように黒々とした水、プールの中へ落ちた。もがけばもがくほど足に手に藻が絡まり動けなくなっていく……。


 沈む。しずむ。シズム……。



〉〉〉12ノ裏、守子


 露木くんの家で見つけた真実。


 コートのポケットから取り出してみる。少し色褪せた二枚の写真。


 一枚は微笑ましい三人の笑顔が眩しい家族写真。これはアタシの宝物にするつもり。


 問題は、写真立てに隠すようにして貼りつけられていた、もう一枚の写真。


 そこには四人写っていた。


 母に抱かれた女の子、父におんぶされた男の子。写真の裏にはボールペンでコメントが書かれている。

『ついに我が家に新しい家族が仲間入り。なんと双子です。名前は男の子が竜志、女の子が叶無』


「じゃあ、やっぱり竜志くんは死んでるのね……」


 アタシは、あの三人はじめと鉄男と洋二が、竜志に何をしたか知っていた。花火大会だとかいって竜志を誘ってプールで殺したのを、女子更衣室のドアの隙間からアタシは全て見ていたのだから……。


 じゃあ、なんで朝香やえ子に相談したかって? 


 そんなの死んだはずの竜志が現れたからに決まってるじゃない。本当に死んでるのか、それとも生きてるのか知りたかったのよね。


 生きてるとしたら、アタックするつもりでいたのよ。アタシは竜志のわがままでオレ様な感じが好きだったのよ。はじめたちは鈍感だし竜志を嫌っていたから三人には言うつもりはなかったの。でも隠したことがいけなかったって今は思うわ。


 だから。


「写真を見てたら無性に腹が立ってきたのよね」


 竜志はただ五人で、ずっと一緒にいたかっただけなのに、なんで殺されなきゃいけなかったのよ! ってね。


 そして極めつけが叶無よ! なんで竜志のフリなんてしてんの? おかしいでしょ!


 まぁ、写真なんて無くても復讐はするつもりだったから、どうだっていいのよ。


 竜志がいない。


 許せない。


 ただそれだけよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ