005 ◆ 昇らない太陽
スサノオが消え、美衣子と通話したあと、バイトの終わりの時間がやってきた。俺はオーナーに挨拶をして帰ることにした。
オーナーから珍しく『お疲れ』以外の言葉を聞いた。
「気をつけて帰るんだよ。何があるか分からないから」
「はい、では失礼いたします」
家に帰ると明かりはついていない。いつものことで、この時間帯、母は眠っている。父は……二年前に行方不明になった。
そうだ、テレビをつけよう。
『二時前後に世界中で起きたこの現象について政府は――』
『こちらニューヨーク支所前です。ご覧の通り人々で――』
『――なお、テロリストによる犯行声明は出されていません』
どのチャンネルもこの現象について報じていた。成り行きを見ていたかったが、徹夜してしまっては明日の学校の勉強に差し支えるだろう。美衣子と同じ大学に行くためには、今のうちからしっかり勉強しておかなければならない。まだ高校二年生だけれど、準備をしておかなければ合格できる大学じゃない。
シャワーを浴びて、ベッドに横になる。
俺は今日起こった出来事を反芻した。気味の悪い一日だった。この世の終わりだと思った。けれども、あの現象は神が簒奪された時に一回起こるだけの、スサノオがいうところの「世界臨時ニュース」だった。
……という真相の一部分を知っているのは俺だけのようだ。ではどうして俺にだけスサノオが見えた?
……考えているうち、眠りに落ちた。
◇◆◇
朝。目覚まし時計を止めた。ほとんど眠っていないが目を覚ますと……夜、だった。
自室からリビングへと向かうと、母がテレビのニュースに釘付けだった。
「母さん、外……」
「そうね、真っ暗ね」
「そうだよね、日食が起きてるとか、そういう感じじゃないよね」
「もちろん……ただ、世界中どこの場所でも太陽が目視で観測できない状態なんだって」
「それは……一体何が……」
「『水無月現象』だって」
「何が?」
「昨日のスマートフォンとかがハイジャックされた事件のことらしいわ」
「……それよりも、この暗いのは――」
と言った瞬間、パッと明るくなった。太陽が見えた。
世界が一斉に明るくなった(場所によっては時差で夜のまま)ようで、ニュースでの騒ぎは更にエスカレートした。重ったるい、暗く濁った気分が少し軽くなった気がした。そんな中、世界の主要機関宛てにメッセージが届いたらしい。臨時ニュースとテロップ。
『臨時ニュース:太陽が昇らなかった件について、報道機関宛てにメッセージ有り。』
「……んん? メッセージ?」
「……まだ出ないわね」
『臨時ニュース:「ちょっと忙しすぎて本来の仕事に影響が出てしまいました。ごめんなさい」と報告有り。現在、何者からのメッセージかについて調査中』
「マジで訳わかんねぇ……」




