018 ◇ 高天原へ
018 ◇ 高天原へ
時刻は十八時を過ぎた頃だった。
トヨタマと会話をしているうちに、私の中で「いつかスサノオを討つ」という覚悟が芽生えた。なぜ自分がやらなきゃいけないのか――なぜ自分がやらなきゃいけないのか――それは、トヨタマの真面目さがとても好印象で自分と似ていると感じたことや、ふつふつとした強い怒りが伝わってきたことなどが私に伝わってきたからだ。誰だって、トヨタマを助けたいと思うだろう。
「高天原にいるアマテラスに、面会するところからかな」
「(高天原は、太陽が沈んで暗くなった時間から行ったほうがいいです)」
「え? そうなの? なんで?」
「(アマテラスがお仕事をしているので、忙しくて会いに行くことが躊躇われます)」
「ああ、そういうことか……」
「(ですから、あともう少ししたら行けます)」
外はまだ少し明るかった。アマテラスは頑張って仕事しているんだろうな。――あっ! それで『太陽滅殺現象』のあとに、あのメッセージだったのか。
『臨時ニュース:「ちょっと忙しすぎて本来の仕事に影響が出てしまいました。ごめんなさい」と報告有り。現在、何者からのメッセージかについて調査中』
なるほどなぁ。そういうことだったのか。本当に忙しかったんだろうな……。
アマテラスは、突然人間によってスサノオが簒奪されたり、そのスサノオがイザナミを殺したり、暴走したり――様々な対処に追われていたのだろう。
そういえば、りっちゃんはスサノオに会ったって言っていた。一体、どんなことを話したんだろう。もしりっちゃんがいつでもスサノオと話せる状態なら、スサノオ討伐の役に立つかもしれない。
「(では、暗くなりましたので高天原へ行きましょう)」
「うん。トヨタマは、何年ぶりに高天原に戻るの?」
「(そうですね。およそ二〇〇〇年ぶりになります)」
「……トヨタマにとっては、久しぶりって感じなのかな?」
「(……久しぶりというか、別世界に行くかのような、そんな感じです)」
「それなら楽しみだね! じゃあ、行こう!」
「(ちょっと待ってください)」
「ん? どうしたの?」
「(アマテラスとツクヨミ、そしてスサノオ。三貴神は兄弟です)」
「え! そうなの?」
「(はい。ですので今回、アマテラスに会いに行った際に、スサノオと鉢合わせする可能性があります)」
「なるほど……その時は、ってことだね」
「(その時は、絶対に戦わないでください)」
「え……どうして?」
「(勝ち目がないからです。ツクヨミはおそらくスサノオを上回る力量がありますし、万が一アーちゃんを敵に回したとすると瞬時に我々は消されます)」
「そうなんだ……絶対、戦っちゃダメなんだね」
「(はい。気をつけてください)」
「うん。じゃあ、高天原へ!」
高天原へのゲートが開いた。黄泉国へのゲートとは違って、明るいゲート――いかにも高天原へ向かいそうな色をしている。明るいというか、虹みたいだ。
私はゲートに飛び込んだ。この浮遊感がまた楽しくて……。
「……ぁ」
高天原に到着した瞬間。私は固まった。あまりにも美しい光景が、目の前に広がっていたからだ。
綺麗……綺麗すぎる。黄泉国とはまったく違う。空の上で――浮いているようだった。理屈抜きに美しくて、思わずじっと眺めてしまった。
「(美衣子……)」
「ぁ……う、うん、ちょっとびっくりした」
「(そうですね。ここが高天原です)」




