017 ◆ 黄泉軍との争いの結末
天井に穴が空いて、それに伴って散らかった部屋を掃除していて、その作業がひと段落した。そこで、美衣子の黄泉軍との争いについてどうなったのか早く知りたくて電話をかけた。しかし、そこまでは心配していない。必ず勝つだろうと思っているから。
……電話、なかなか出ない。
しばらくして、ようやく。
『んん……もしもし……?』
『あっ、寝てたの?』
『うん、疲れちゃって……』
『黄泉軍との戦いはどうなった?』
『……そうね。千五百人のうち、千人を燃やし尽くしたらね――』
『せ、千人!? それはすごいね……』
『うん。残りの五百人を消そうと思ったら……えっと、楽田楽っていう人が出てきて、話をしだして』
『……今、がくだがく、って言ったよね?』
『そうだよ。楽田楽、楽しいに田んぼの田、楽しい。楽しいだろう? みたいなこと言ってきて、全然楽しくなかったんだけど』
『うわ、完全にそいつ知ってるわ……今朝、そいつが俺に話しかけてきたんだよ』
『ええー……どういうことだろう?』
『美衣子も会ったのであれば、楽田楽は黄泉国と葦原国を行き来できる奴だってことだね……なんなんだあいつは……あとさ、重要な話があるんだけど……』
『……あー……ごめん、あとでいいかな? 限界でさ……眠っていい?』
『あ、うん、もちろん! 黄泉軍との戦いには勝ったということで間違いないね?』
『まあ、大勝利だったんだよ。それじゃね……おやすみなさぃ……』
『よかった、おやすみ』
しかし楽田楽。あいつ、何なんだ? 未来から転生したとか、よく分からんことを言っていたな……。葦原国に戻ってきて、また待ち伏せされるかもしれない。気をつけないと……。なんだか存在そのものがウザい、っていう感じがする。そういう性格なのだろう。
今日は学校が休みだってことは分かっている。ここ、家で過ごそう。でも穴の空いた自室じゃ落ち着かないので、リビングで本でも読もうか。あ、そうだ、勉強しよう。いつもは大抵、美衣子の部屋に行って勉強を教えてもらうのだが、今日は自習だ。
教科書とノートを……ああ、ノートは濡れて、ふにゃふにゃになってる……。
まあ、教科書が濡れていなくて本当によかった。俺はノートより、教科書に直接書き込むことが多い。
それでも一応、新しいノートと教科書を持ってリビングへ向かった。
母はどうやらまた眠っているようだ。
椅子に座り、教科書とノートを広げる。
……すごい。なんか今、めちゃくちゃ日常的だ。でも俺、神なんだよね。ツクヨミなんだよ……。
日常と非日常を、これからも繰り返していくのだろう。不安もあるけど、楽しみでもある。誰もが求める非日常が自分の中にあるからだろう。そう考えると、日常さえも非日常みたいに思えてくる。ああでも、そのうち慣れてしまうものかもしれない。
それはいいとして、集中することを心がけ、教科書を読み始めた。しかし考えることが山ほどあって集中できない……とにかくまず、美衣子の無事を確認できて、安心できたな……。
よし、いまいちど、集中して。
――ああっ! ……こ、これはダメだ。教科書を読み込むと、答えが「ツクヨミ脳」からリターンされてしまう……。俺は勉強ができないのだがツクヨミはできる。ツクヨミが回答してしまう。
これを回避する脳のプログラムが必要だ……じゃないと俺、アホのままになってしまう。……それは、どうしたら実現できるのだろうか。




