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014 ◇ 楽田楽再び

 楽田楽の『刑の執行対象である豊玉姫命ではないのであれば、刑自体がなくなる』という話を聞いて、私とトヨタマは攻撃の手を完全に止めた。少し言ってることがよくわからないが……。オーエス? ユーザー?

 ……まだ、気を抜いてはいけない。

 私は、思い切って嘘をつくことにした。


「確かに私は、以前のトヨタマではない。元人間の佐内美衣子という者だ。黄泉国から葦原国へ逃げてきたトヨタマを私が殺し、簒奪さんだつしたのだ」

「……なるほど。では、以前のユーザーは消えて、新しく美衣子がユーザーになったということだな?」

「そ、そのとおりだ」

「であれば、そもそもの罪を問えないことになる。言い換えると、刑の執行を美衣子が我々の代わりに行った……そういうことになる」

「そうだな(ワタクシ、いますけどね……)」

「……美衣子よ。よくやった、と言っておこう。人間ながら非常に優れた判断力を備えているようだ。我々はこれからこの件について、新しい主人であるスサノオに申し伝える」

「わかった(……我が主は黄泉国の主人であったが……やはり消えてしまった……)」

「では引き返す! 黄泉軍! 全員、自陣へ引き返せ!」


 黄泉軍の残党、最初にいた三分の一、五百人くらいは踵を返し、自陣へと向かっていった。私が殲滅した件については罪にならないのかな? なんだかよくわからないけど、ならないみたいだね……。


「(あの男、只者ではありません)」

「……黄泉軍にしては、綺麗な成りをしていましたね」

「(黄泉軍には三人の隊長と総隊長がいますが、あれは隊長の一人です。人間が隊長を務めるということは、今まで見たことも聞いたこともありません)」

「黄泉軍って、一体どんな人……いや、「人」だかなんだかよく分からないけど、誰がなるの?」

「(基本的には、黄泉国に送られた死者がなります)」

「ああ……黄泉軍に入れば地獄の刑を免れるってこと?」

「(そう。黄泉軍に入ればそうなりますが、戦で敵に消されてしまったら……知ってのとおり、黄泉国にも留まれなくなり、消えます)」

「なるほど……あっ、黄泉軍の総隊長って誰だったの?」

「(真っ先に美衣子が燃やし尽くしました)」

「ああ……そうなんだ……」

「(あの男が気になります)」

「そう? そんなに生きてる人間が黄泉国に入って、黄泉軍の隊長を務めてるってことっておかしなことなの?」

「(異常事態です。ですからワタクシが感じたのは不自然極まりなく気持ちが悪い、という感じです……まあ、それは一旦、忘れましょう)」

「うん! ……よかったね! トヨタマ! 死刑なしになったね!」

「(本当にありがとうございます。美衣子のおかげで丸く収まりました。助かりました)」

「そんな、いいよいいよ。私もやらないと消えていたんだし。それに、色々と普通じゃ経験できないことができて、なんだかね、優越感があるよ。人ではない神々の気持ちも知ることができたし……あっ、すぐに葦原国に帰れる? ……黄泉国にいるの、ちょっとしんどい……」

「(そうですね。では、葦原国へのゲートを開きます)」


 黄泉国に来た時と同じように、ゲートが開いた。これ、楽しいんだよな……。

 それっ! と飛び込み、私の部屋へ戻ることができた。楽しぃ……。

 時刻は――お昼の時間帯で、大学の授業に間に合いそうだった。

 だが、結構疲れている。炎を全力で出したせいだろうか。眠くて仕方がない。ベッドの上に転がると、すぐに眠りが訪れた。今日は大学の授業は無理だ。サボるしかない……。

 私はそのまま昼寝をした。トヨタマが小声で話しかけてきた。


「(美衣子、本当にありがとうございます。これで黄泉軍から追われることがなくなりました。葦原国から高天原へと自由に行くことができます。あと、一応黄泉国も……おやすみなさい)」

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