012 ◇ 黄泉軍殲滅作戦
「よし、トヨタマ。心の準備、いいよ。できたよ。黄泉国へ行こう!」
「(わかりました。黄泉軍を殲滅しましょう!)」
「やるしかないね、トヨタマ」
「(美衣子、あなたの力があれば余裕で勝てます)」
黄泉国のゲートが開いた。私はゲートの中へ向かって走った。さっさと終わらせて、人間界に戻りたかった。ゲートを通ると、身体が浮いてワープしているような感じになる。結構、これは面白い、楽しいと思ってしまった。浮いて、そして下降しているような感覚になった。黄泉国に落ちているのだろう。
そして気がつくと、黄泉国で立っていた。
聞いていた通り、周囲はものすごく汚れていて、異臭が漂っている。息をするのもつらいくらいだ。広さだけは壁のようなものがないほどに広がっている。一体どのくらいの広さなのだろう。日本?
しかし、なんだか窮屈でふさぎ込んだような気分になった。ここで黄泉軍を殲滅するのか……まあ、仕方ない。トヨタマのため。私のためだ。
「黄泉軍って、どのくらいの人数なの?」
「(ちょうど千五百人ですね)」
「ちょ、ちょっとそれって多くない? ヤバくない?」
「(ですから、ワタクシひとりでは逃げるしかなかったのです)」
「そそそれでも……か、勝てるの? 本当に?」
「(勝てます。美衣子が全力で炎を撃てば消滅させることができます。もちろん私も助力します。雷を落としてもいいと思いますが、炎を出しますか。一気に倒してください)」
「……雷も出せるんだ……やるだけやってみる。やらないと、私もトヨタマも消えるんだもんね?」
「(その通りです)」
数分が経った。ここにいるだけでつらくて、吐きそうになってくる。そんな最中、黄泉軍の先鋒が見えた。馬に乗っている。
「見えたよ! 炎、だよね!?」
「(ええ、もっと引きつけてから撃ちます)」
黄泉軍がどんどん増え、目の前がもう千五百もの大軍で埋め尽くされ、数えきれないほどになった。気色悪い……人間のような形をしたものや、動物の内臓で身体ができているような軍人がたくさん混ざっていて、さっさと消し去りたい気分になる。
「トヨタマ、早く殲滅したいんだけど……」
「(あと十秒待ってください。合図を出します)」
「わかった……」
心の中で十秒を数える。黄泉軍はどんどん近づき、あと数秒でこちらは討たれるだろう。
十秒数えたところで、黄泉軍との距離は十メートルもないほどにまで詰められていた。馬に乗って斧を構えた内臓丸見えの軍人が、今まさに振り下ろそうとしている。
「(今です!)」
手のひらを向け、炎を全力で放った。雷を使用してみたいという気持ちもあったが、一度試しに手元で炎を出しているので、こちらを選択した。私の予想を遥かに上回る威力で、黄泉軍の先頭から一番後ろまで、一直線に消し去った。
「(美衣子! 素晴らしいです! そのまま右に手を向けて、燃やし尽くしてください!)」
言われたとおり右側に手のひらを向ける。炎の方向が変わり、右側にいた黄泉軍を一気に消し去った。骨すら残らないので、殺しているといった感覚は薄い。もともと死者だからかもしれない。
あとは左側を消せば終わりだ。
左側の黄泉軍は、炎を恐れたようで、歩みを止めた。
「豊玉姫命! 黄泉国から脱走した罪により、死刑に処する! 大人しくせよ! 炎を止めよ! ……豊玉姫命が先ほど炎で燃やし尽くした黄泉……ん!? ……ん? ん? えっ! お前……豊玉姫命ではない?」
「(美衣子、手を止めないで! そのまま左側に向けよ!)」
「いや、ちょっと何か話してるよ! 一旦止める。あっちも止まってるし」
「(ダメだ! 殲滅せよ! 美衣子! 美衣子!! ……)」
トヨタマのいうことを聞かず、炎を止めた。どうしても、その方がいいような予感がした。
そして、美衣子らしくないな、と思いつつ、大きな声を張り上げた。
「黄泉軍よ! どういうことか説明しなさい!」
「お前……豊玉姫命ではないな?」
「……いや? 豊玉姫命なんだけど? 説明すると長くなるけど……」
黄泉軍の先鋒にいた者は馬から降り、武器も捨て、こちらに近づいてきた。緑がかった髪の毛で、二十代前半くらいだろうか。人間のように見える。
「俺の名前は楽田楽だ。楽しい田んぼに、また楽しいと書く。どうだい、楽しいだろう?」
「全然楽しくないです」
「そうか……しかし、やはりあなたは豊玉姫命ではないように感じる。オーエスを操作するユーザーの話だ。ユーザーが刑の執行対象である豊玉姫命ではないのであれば……刑自体がなくなるということになる」
「え!?(えっ!?)」




