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011 ◆ 神への誘い

 自室に戻ると、即座にスサノオが現れた。めっちゃくちゃビビった。

 俺はこういう「いきなりバァッ!」て言うのが苦手だ。めちゃくちゃびっくりする……神っていうのは、どこにでもいてどこにでも出現するんだな。さすが八百万やおよろずの神、というだけある。


「(りっちゃん〜、また会えたね)」

「(……いきなりそんな呼び方する?)」

「(記念すべきスサノオ簒奪の時をりっちゃんが見ていたんだから、特別なお友だちだよ)」

「(お友だちかぁ……まあ、いいけど)」

「(りっちゃんは月読命ツクヨミになるように、わしが推薦するから)」

「(推薦? ツクヨミを俺が簒奪しないといけないの?)」

「(いやいや、ツクヨミはからなんじゃよ。だからスムーズに入れる)」

「(空なんですか? 中身がないということですよね?)」

「(そうじゃの。わしもこうやってスサノオになってから探ってみて知ったことなのじゃが……ツクヨミは超軽量なオーエスで超小規模なエーアイを動作させていたのじゃ)」

「(それ、わかるんですけど……逆に難しい話になっていますね)」

「(そうかの? ……まあ、本題はここからでの。これから重要なことを言うよん?)」

「(はぁ……)」

「(神々のオーエスは特定分野に特化していたりするので、使いこなせる者を選ぶ)」

「(……まだそのオーエスの話をするんですね)」

「(たとえ話じゃなくての、本当に『オーエス』と呼ぶんじゃよ。そして現在、葦原国ではお主のみがツクヨミのオーエスを扱えるんじゃ)」


 ……へぇー、そっかぁ、俺だけがツクヨミのオーエスを扱える……。


「(――そんな訳あるかぁ!!!)」

「(いやいや、偶然にもほどがあると思うんじゃけどの、それがりっちゃんだったという塩梅なのじゃ)」

「(なんだかまるで、ご都合主義で行き当たりばったりかのような……えっと、ツクヨミになったとしたら、俺はどうなるんですかね?)」

「(めちゃくちゃ強くなるじゃろう。わしでも負けるかもしれない。三貴神さんきしんと呼ばれる神のひとりじゃからの。わし、スサノオもそのうちのひとりじゃ)」

「(ツクヨミ、スサノオと……あとひとりはなんという神なのですか?)」

「(それはもう、誰も知らぬ人間はいないじゃろう。太陽を司る最も有名な最高神。アマテラスじゃ)」

「(アマテラス……そして、俺がその三貴神に……マジでか?)」


 とんでもないことになってしまいそうな気がした。

 けれども、もしツクヨミになれたとしたら、美衣子の助けになれるかもしれない。

 美衣子はすでに神になったんだ。俺は……スサノオによる推薦にすがったほうがいいのかもしれない、そんな風にも思えた。

 美衣子を守る、そんな力が欲しい……。


「(推薦したの〜ん。あとはアマテラスからの承認が得られれば、りっちゃんはツクヨミとなる)」

「(あっ、そうなんですね。もう推薦しちゃったんですね……)」


 俺の意思は全く関係なく推薦された……。

 ……そういえば美衣子、実家が神社だったな。トヨタマになったことにも何かゆかりがあるのかもしれないな。

 この推薦って何か……あれみたいじゃないか? 昔、たくさんあった、なんとか事務所に入った理由。『うちのお姉ちゃん(友だち, 他)が勝手に書類を送って――』みたいな。


「(間もなく推薦は通るじゃろう。三貴神であるわしからの推薦じゃからの)」

「(んん……あっ! ちゃんと学校通えるのかな?)」

「(それは大丈夫じゃ。葦原国あしはらのくにで、普通に人間として活動できる。それに、ツクヨミの仕事は基本的に夜じゃ)」

「(ああ、そうなんだ。じゃあ、どうにかこなせるかもしれない。バイトはやめないといけなさそうだけど……)」


 ……なんだか『学校』っていうワード……日常が、今はものすごく遠くの世界に感じる。


「(お、推薦、通ったようなのじゃ)」

「(はやっ!)」


 『よくわからん老人が勝手に高天原事務所に書類を送ってて――』

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