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WANTED GIRL ~惑星をなおす少女~  作者: 野乃々
2部 3章 再生プロジェクト②
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海の生き物

 頭部に憎たらしいドリルをつけた水中型トライズが、ゴウンゴウンとモーター音をたてて海の底を目指す。モニターには光に照らされた水中が映って、ブラックホール圏を彷彿とする漆黒がひたすらに続いた。静かな空間と相まって不気味さを増すばかりだ。

 それでも、前回きたときより大きく進歩している。鉄をも溶かす強酸性の水が、強い塩分の海水に変っているんだ。


 会議が終わった後、ろ過する前の海水をコップでもらったけど、ひとなめしてすぐに塩分が口の中を満たした。おいしくないけど、すごく濃くて不思議だった。この塩水のなかで多数の生物が暮らしていくことになるんだ。

 早く豊かな海にしたいな……。


 まぁ、願っていても数時間で解決するような問題じゃない。

 むしろやることは山積みだ。

 巨大な建造物の数々に、宇宙政府との連絡。レグダから技術者も呼ぶ必要がある。低く見積もっても、最低3年はかかる計算だ。

 手伝いたいものの私もミュートさんも技術屋ではない。こっちにいても貴重な食料を食いつぶすだけのような気がした。

 だからといってトネリコに戻るつもりはない。ブラックホール圏は、数時間でいるだけで何年も過ぎてしまう。やはりこの目で太陽が昇る様を見たい。

 もし、時間がかかりそうなら深海基地にあるコールドスリープ装置を借りようか。

 ぼんやり考えていると、モニターとレーダーを注視していたミュートさんが速度を緩めた。

「そろそろだ」

「了解です!」

 私は端末からライトを動かして深海生物を探す。

「あ、これ!」


 現れたのは、いくつも並んだ赤い点だ。モニターを拡大すると、上半身に赤い器官が備わり、その上から透明な胴体に覆われている。左右のひれをふわふわと動かし群れで海中を漂っていた。

 その生命に画面をキャプチャーすると「クリオネ」と表示される。すごい! テラでみたものと同じやつ。

 ミュートさんはスクリューを止めてその生物が泳ぐ様をじっと見ている。いつもはムービーを流し見するくらいなのに、画面を凝視して微動だにせず見ている。

 声をかけるのも憚るので、同じように眺めたり、ほかに生物がいないか探る。


「……………………」


 15分くらい経過したけど、この男が一向に動く気配がない!


「ミュートさん、もう少しほかの生物を探しましょう」

「……わかった」

 不服そうにモーターを回し始めた。


 あたりを照らしながら探すけど、深海生物はそもそも数が少ない。栄養が限られているし、光が届かないこともあって獲物を探すのが難しいのだ。ましてピアートは地熱だけで水の温度を保っている。

 魚類を見つけられないまま地底に向かうと岩礁地帯に到達した。ケインさんがマークしてくれた箇所には熱水噴出孔があり、その付近に近づくと、突起に群がった無数の貝類と甲殻類にでくわした。

「すごい!」

 ほんの少し前までは強酸性の死の海だったのに、いまでは生物がいる。種類は少ないけど、日光のないこの場所でタフに生きていた。

 感動する私の横で、ミュートさんは無言だった。

 考え込むように、じっと岩肌に張り付いた小エビの仲間を眺めている。


 時間も忘れて眺めていると、ウミヘビのような細長い魚類が通った。さらに見ているとダンゴムシのような多脚生物も。グンゾウグソクムシみたいだけど、サイズが全然小さい。

 いまは地底にしかいないけど、日の光が生まれたらもっと増えるのだろうか。

 魚が生まれて、その死骸を餌にする生命もあらわれて、海の世界が広がっていく。

 ――もっと見てみたかった。あの、3D映像の世界を現実に体験できるかもしれないんだ。

 人工太陽の設置を絶対成功させなきゃ!

 海が、星が、私を求めているのを感じた。

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