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WANTED GIRL ~惑星をなおす少女~  作者: 野乃々
2部 序章 ブラックホール基地
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来訪者

 翌日からなんてことない日常を過ごした。

 調査班が送られてきたデータを、トネリコのマザーコンピュータに繋いで、数値を入力して解析する単調な仕事だった。


 本来のタスクをそこそこに、余暇時間はピアートの問題に直面した。

 人や動物が地上で生きていくには大気が必要になる。ピアートは重力があるおかげで、シード264が溶けるうちに多量のガスが生まれ、地表や海上に留まるだろう。それにもともと人類が生きていたから酸素は十分にある。光と熱を放出すれば大気圏も十分に整うはずだ。

 大事ななのは――太陽をつくること。


 どれだけ馬鹿げたことか!


 そもそも、ライザンが太陽の役割を終えているため、熱光線がピアートまで届かない。ではライザンを復活させるという案も浮かんだが、底の尽きた燃料でエンジンを吹かすなどできるはずもない。星のエネルギーは中心の核融合から生まれるので、外部から燃料を注入することなどありえないのだ。

 最もな話。 

 人が生きていくだけなら、コロニーなり大型戦艦などを作ってそこで食物を生成したほうが楽だ。人が住めないような惑星に、自給自足の施設を設営するほうが馬鹿げている。

 それに、現在の政府では人工的に太陽を作る技術はない。新しく太陽を作るのは不可能だった。シード264が溶けている間に、技術革新が生まれればいいのだけど。


 せめて相談できたらいいのにな……。

 そう思うたびに深くため息をついてしまう。


 あれからミュートさんともほとんど会っていない。

 部署が異なるるせいか時間が合わず、不用意に接触すれば勘付かれる恐れがあった。向こうから連絡を期待したが、まったくない。自称海底人は、私を含めて誰かと関わるのが嫌なのだ。


 なのに同じ班のリツキさんはミュートさんを気にかけている。

 あれの何がいいんだろう。

 彼女の瞳は恋していた。美人だしスタイルがいいし年齢も近いし、二人並んだら美男美女だ。

 私のようなチンチクリンが割って入る関係じゃない。

 だからもう、私の楽しみはピアートしかないのだ。

 海が見たい。それだけで十分なのに。

 きょうもメールが来ていない……ケインさん、もしかして失敗したのかな。


 数日後、トネリコ最大の事件が起きた。

 外宇宙からの来訪者だ! この実験基地に外部の人間が来るのは初めてで、仲間たちはあちこち頭がおかしいとか信じられないとか、そんな噂を口にした。

 いまだに信じられない私たちは、先生の誘導で船の格納庫に集合するとそのときを待った。

 約束の時刻は、宇宙政府の設定で11:00。残り5分でも音沙汰がない。

 先生いわく、特別な任務らしい(心当たりがめっちゃある)が、本当に来るか疑わしかった。


『トネリコのセンサー範囲に熱反応あり。搭乗口をあけます』

 無機質な先生の声が格納庫に響いた。私たちは列を整えて直立する。

 基地の格納庫のドアがゆっくり開き、それが姿を現した。

 両翼のついた青い中型戦艦が、下部に炎をだしながら着陸する。エンジンが切れた船は、スロープを開き、中から人影がでてきた。

 スクエアフレームの眼鏡をかけた、褐色の女性だった。白いブラウスから憧れるような胸がつきでていた。タイトスカートからくっきり映るくびれに、タイツを履いている魅惑的な太腿。ウェーブのかかる黒い髪をかきわけ、ハイヒールをこつんと鳴らした。

 女性は手首につけた金の時計をちらりと見る。

 私も合わせて小型端末を出して確かめる。

 11:00ピッタリ。

 監査がやってくると連絡が入ったのは数日前。

 だけど、外宇宙のほうが時間の流れが速いから、連絡を送った時は数年前にのぼる。そこから宇宙の旅を続けて、時間の流れが不規則であろうブラックホール圏に入り、時間ちょうどについた。正確すぎる。

 ――この女性は何者なんだ。

「見送りありがとう。あとは解散してけっこうです」

 あーよかった。びっくりしたー。仕事めんどうくせー。がやがやと仲間たちが騒いで帰る中、私とミュートさんは動けなかった。

 ユーリちゃんが少し心配そうに去り、リツキさんがミュートさんの手を軽く触れ、微笑んで消えた。

 うぅ、もやもやする……。

 せっかく二人になれたとおもったけど、リツキさんとの関係が頭から離れられない。


 いや、問題はそっちじゃない!

 誰もいなくなった格納庫で、私とミュートさんが褐色の女性と対峙する。

「素直に聞いてくれてありがとう。初めまして、私は宇宙政府所属の戦争犯罪査察官、ミレイヤ・カシス・バージニア。二人はテロリストの疑いがあるから、確かめにやってきたわ。しばらくの間、衛星ピアートで起こした事件の聴取を行うけど、へこたれないようにね」

 うぅ、やっぱりそうなるか。

 事前に聞いていたけど、いざ直面すると重たい。

「二人には個別で時間を設けるわ」

 私はおずおずと手をあげた。

「あの一つだけ質問いいですか?」

「なんでしょう」

「ここは時間の進み方が違いますけど、ミレイヤさんは大丈夫ですか?」

 査察員のグラマラスな彼女は、先生みたいに魅力たっぷりに笑った。

「安心して。私は過去を捨てあなたたちを調べにきたの」

 私とミュートさんは互いに顔を見合わせた。

「本気でいってるんですか、 いままで関わってきた人と歳が離れるんですよ」

「私はね、宇宙の平和のために働くと誓っているの。べつに驚くほどのものじゃないでしょ、前例だってあるんだし」

 同意を求めるように私とミュートさんを見つめている。

 いや、そんな人はいるのか。ミュートさんも眉根を寄せて黙ったままだ。


「挨拶はこれまで。せっかくだから食堂まで案内してくれる? かれこれ12時間分、食事をしなかったから」

 それであのスタイルなの!?

 人生は不公平だ。私は私の身体を構成する遺伝子を恨んだ。

 ミレイヤさん。なんか好きになれなさそう。


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