表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WANTED GIRL ~惑星をなおす少女~  作者: 野乃々
4章 再生プロジェクト①
24/72

アルマゲドンみたいに

 水質の学習は10歳に満たない子どもも行っている。

 変色する紙を水につけて、酸性かアルカリ性か判断する。pHの数値が7を基準に、1に近い数値を酸性、7以降はアルカリ性としている。たったこれだけ。

 ピアートは酸性に極振りしている。ならそれと同質・同量のアルカリ性の物質をぶつけて溶かせばいいのだ。

 では、そのアルカリ性をどこで調達するか。

 トネリコのデータには、広大な宇宙のなかに強アルカリ性の星が登録されている。惑星でなくても、隕石や小惑星コロニーなど、地中の成分を調べれば似たようなものがでてくる。

 それを落とすのだ。映画の、アルマゲドンみたいに。


 問題は山積みだけど、一番面倒なのが宇宙国家の法律だ。

 私たちの馬鹿な宇宙史には、勢力を二分し争った宇宙戦争がある。そのなかにはシリンダー型のコロニーや、小惑星基地を惑星にぶつける作戦もあった。

 そうした黒歴史のおかげで、コロニー落としなど大質量の落下は法律で禁止になったわけだが、私の提案はその禁忌を犯す。首謀者となれば宇宙のお尋ね者になりかねない。

 私のアイデアに、ケインさんは目を開けたまましばらく動かなかった。

 やっぱり呆れてるよね。


 不意に後ろの自動ドアが開いて、小箱を手にしたミュートさんがやってきた。

 ケインさんは一瞬きょとんとしたが、すぐに正気に戻った。


「アルカリ性の星をピアートに落とす、ですか。確かに物理的には可能かもしれませんね」

 横でバラバラバラと硬いものが落ちる音がする。小箱を傾かせて固まったミュートさんが私を見るなり固まっていた。

「お前は死刑囚になりたいのか?」

「うぅ、極端です。隕石落としは大量虐殺を目的にするから問題なだけで、無人惑星なら実験程度だと判断されるはずです」

「実際は海底に人がいるがな」

 ……それを言われれば実も蓋もないんですが。

 返事に困っていると、ケインさんが助け船をだした。


「イース国は地底の一部なので、座標さえ変えれば問題ないです。それよりネックなのは氷の壁ですよ。星の質量が小さいと海まで到達できないですし、大きすぎれば地殻変動が起き、最悪、星そのものが割れる可能性があります」

「いや、それは物理的にないだろ」ミュートさんがいう。「それより、たかが人間の力でそんなでかい質量を運べないはずだ。大体、水の成分だって細かな調整する必要がある。リンやカリウムや二酸化炭素だって海の生命に影響を与える。簡単な話じゃない」

 ミュートさんが話しながら小箱にチョコを戻した。

「というより、持っていこうとする時点でばれるだろ。戦争以降、監視は厳しくなっている。巨大隕石が動けば、すぐさま政府のやつらが駆け付けるぞ」

「うぅ、やっぱり問題が山積だよねぇ。このプランは破棄すべきかなあ?」

 ケインさんは静かに首を振った。

「元から不可能を捻じ曲げようとしているんです。多少の無理難題はつきものですよ」

 ミュートさんが黒い粒を口の中に放り込む。端正な顔立ちにおもわず見とれていると、包装紙を一つ渡した。

「お前も食べたいのか?」

 あ、そういうわけじゃ……。

 断ろうとしたけど、せっかくなので貰うことにする。ミュートさんの指先が触れて少し熱い。ほんのりぬくもりのあるチョコを口の中にいれる。

「うぅ……」

 90%のやつじゃん。苦すぎるんだけど。

 こんなの好んで食べるなんて変態じゃんか。


 ケインさんにもらった紙コップの水で苦味を薄めると、私はいった。

「私の意見ですけど、べつに妄想で提案したわけじゃないです。AI戦争で使わなかった決戦兵器シード264、あれなら条件に合っているはずです」

 ケインさんは瞼を大きくしながら、

「詳しく聞かせてくれませんか?」

「はい――いまの宇宙政府の歴史をなぞるので少し時間がかかりますが」

 ケインさんは了解するように深く頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ