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WANTED GIRL ~惑星をなおす少女~  作者: 野乃々
4章 再生プロジェクト①
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惑星をなおす少女

 基地内のオフィスに集まった。

 海中資源が主だったイース国では、チョコの原料であるカカオはなく、ミュートさんは寂しそうにトライズへ取りに戻った。

 何なのだ、あのチョコマニア! ほんとに星のことなんてどうでもいいのか。

 もしかしたらバレンタインを世界一喜んでいる男かもしれない(そしてあのビジュアルが憎い!!)。


 無言でキレる私に、ケインさんは苦笑する。

 もういいや。二人だけで考えよう。

 切り替えるように嘆息すると、

「威勢よくいったのはいいですけど、具体的にどうすればピアートを戻せますかね?」

「まずは水質でしょう。私たちは種の保存のため、人類以外の海生類も眠っています。水と酸素が戻れば、彼らを元に戻すことができます。次いで太陽光になりますね」

「先に大気圏を作るんじゃないんですか?」

「海の生命が活動できることを証明したほうが、不安はなくなると考えます」

 うむ、と腕を組んで頷く。

「これは別件ですが、もし星が再生できたら改めて法律を作る必要があります。私はこの星が再び争いが起きるのを見たくない」

「同感です。何のために復活させたかわかりませんしね」

 話を聞きながら、船からもってきた小型端末に打ち込んでいく。


 目標

1.海の再生

2.太陽および大気圏の生成

3.惑星国家の法律


 顔をあげるとケインさんが不安そうに私を見つめていた。

「これは推測ですが、星を元通りにするには数千年は有します。私たちはコールドスリープで眠り続けていますが、ツクモさんは難しいのでは」

「大丈夫です!」

 私は両手を叩くとフェアリーの説明を始めた。


「トネリコでは1年で宇宙の400年分過ごすことになります。だからこのミッションは私たちにうってつけです。ピアートが回復している間、宇宙政府は技術革新が生まれるかもしれません。正直いいことしかないです」

 生まれて初めてフェアリーでよかったとおもう。まさか星の再生に私たちの存在が役立つとはおもわなかった。

 感慨に耽るのはこれくらいにして、具体的に考えなきゃ――。


 最初の課題である海の再生だ。

 現在、ピアートの水は強酸性で、鉄をも溶かす濃度だ。星の自浄作用では歯が立たない。

「イース国には海を循環する装置はないんですか?」

「残念ながら。全長10キロ程度の湖ならなんとかなりますが、この星のほとんどが海です。人間の力ではどうにもなりません」

 ケインさんは悲痛な表情を浮かべる。

 私は腕を組んで考え込む。

 巨大戦艦やコロニーの浄化装置はあるものの、

 星にある海そのものをすべて循環した過去はほかにない。人類の科学じゃどうしようもなさそうだぞ。

仮に宇宙政府がろ過装置を用意することができても、莫大な時間が必要だし、稼働エネルギーも馬鹿にならない。彼らだって、ただの惑星人のためにそこまでしない。


 大気を循環できる植物がいればいいけど、太陽光がないから育たないし(もっといえば植物を調べて、育つ環境を整える必要もある)、地中の岩石成分を調べても、水質を中性に戻す石の量が足りないだろう。

 そもそも、ほとんどの有人惑星の原初は、酸性の海である。そこから幾億年かけて、地中の土や岩石の成分を溶かして弱アルカリ性になった。

 悠久の時を経て生命が宿る星になったのに、また戻すなんて不可能では。

 いや、諦めるな。べつに重力をつくるわけじゃないんだ。水族館の水槽だって人の手で管理できる。水の成分を変えること自体は簡単なはずだ。問題はその量が多いだけ――。


「あ……」

 アイディアが浮かんだ瞬間、咄嗟に頭を抱えて、髪をくしゃくしゃにした。

「ど、どうしたんです? 」

 まだ答えるわけにもいかず、私はデスクに腕を置いて顔をうずめる。


 うぅ……。どうしよう、本当にやるのか。具体的かつ現実的かわからない。でも、前例はあるし、いや、その前例が危険すぎるから私の身も危うくなる……。

「ツクモさん、大丈夫ですか??」

 声を荒げるケインさんに、私はゆっくりと顔を上げて苦笑した。

 いまさら安定をとって何になる。私はこの命をかける覚悟があるんだ。


「唯一方法があります」

 粗ぶった髪が事の重大さを物語る。

 私がそれを口にした瞬間、ケインさんは瞬きを二回した。

「は? よくわかりませんでした。もう一度お願いします」

 私は髪を手櫛で整えた後、天井に人差し指を指した。


「星を落とすんです。アルカリ性の強い星を」

 我ながらぶっ飛んでるな。

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