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【勇者が】残念なPT【最弱】  作者: かんちゃん
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第8話「混沌のオーケストラ」


最強のはずの勇者は封印の腕輪でレベル−100、泣き虫で剣も持てない。

国家随一の魔法使いはサディストで、仲間を実験材料扱い。

忍者はなぜか高確率でハト。

そしてそこに、何も知らない冒険初心者の少女――『初心者ちゃん』が加わった。


雑すぎる王国と、じわじわ崩壊していく世界の中で、

彼らは今日も笑って、泣いて、叫んで旅をする。


ゆるいけど危険、危険だけど笑える。

そんなドタバタ勇者パーティーの冒険譚が、今はじまります。

炎がゴォッと燃え上がる。 魔法使いさんの指先から迸った火柱は、まるで怒れる竜の咆哮のように路地裏を照らし出した。

赤い光が壁に反射し、地面のゴミや破れた袋が揺らめく影を落とす。 チンピラたちは目を見開き、顔を青ざめさせて後ずさった。

その足元には、焦げた木箱がパチパチと音を立てていた。


「ま、待て! オレたちただの町のチンピラで――」


声が震え、棍棒を持つ手が汗で滑る。

だが魔法使いさんは、炎の揺らめきに照らされながら、口元に笑みを浮かべる。


「そう、“ただの”ね。つまり燃やされても誰も困らないってことだ」


その言葉は、まるで判決のように冷たく響いた。

チンピラたちは一斉に息を呑み、誰かが小さく「ひぃ」と漏らす。


魔法使いさんが楽しそうに言い切った瞬間、勇者さんが涙目で叫んだ。


「だだだだめですぅぅ!! そんなことしたら、街ごと燃えちゃいますってぇぇ!!!」


その声は裏返り、まるで壊れた笛のようだった。

勇者さんは慌てて剣を持ち上げようとして――


「ギャーーッ!! いわした腰が再びぃぃいいい!!!」


腰に激痛が走ったのか、彼はその場で膝から崩れ落ちた。

剣は手から滑り落ち、地面にカランと乾いた音を立てる。


「な、何やってるんですか!?止めに入るどころか、むしろ転がって火に近づいてますよ!」


私は慌てて勇者さんの腕を掴み、火の手から遠ざけるように引きずった。

彼のマントは焦げかけ、髪の先がチリチリと焼けていた。


その隙を狙い、チンピラの一人が棍棒を振り下ろした。

目は血走り、口元には歪んだ笑み。


「甘ぇんだよ小娘!」


ガキィン! だが棍棒は、まだ地面に突き刺さってジタバタしていた忍者さんの背中にヒットした。

その衝撃で、忍者さんの体がびくんと跳ねる。


「クルッポーー!!!」


次の瞬間、白い羽根がぶわっと舞い上がり、忍者さんはハトになった。

羽ばたきとともに、彼女の姿は小さく、丸く、そして非常に怒った鳥へと変貌した。

そして当然のように勇者さんの頭を容赦なくつつき始める。


「いっだぁぁぁ!! 味方でしょ!?なんで僕だけ狙うんですかぁぁぁ!!!」


勇者さんは頭を抱え、地面を転げ回る。

ハト忍者は執拗に頭頂部を狙い、まるで宿敵にでも出会ったかのような勢いだった。


「……ふふ、いいね」


魔法使いさんはその光景を芸術鑑賞でもしているかのように微笑んだ。

炎の光が彼の瞳に映り、まるで舞台のスポットライトのように彼を照らす。


「勇者が泣き叫び、忍者は鳥になり、チンピラは混乱する……これは混沌のオーケストラだ」


「詩的にまとめないでくださいよ!!!」


私は叫びながら、勇者さんの頭を守るように手を伸ばす。

その間にもチンピラたちはどんどん迫ってくる。 一人が棍棒を振り回しながら叫んだ。


「まとめて叩きのめせ!」


「わ、わぁぁっ!」


私は慌てて木刀を突き出した。

手は震え、狙いなどまったく定まっていない。


ゴンッ! 偶然にも棍棒の持ち手を直撃し、チンピラは「うげっ!」と呻いて武器を落とす。 彼の手は痺れ、棍棒は地面に転がった。


「……あ、また当たった」


魔法使いさんがくすりと笑う。


「やっぱり君は最高だね。狙ってないのに当てる。勇者より役に立ってるじゃないか」


「だから褒めてるのか貶してるのかどっちなんですか!!!」


勇者さんは腰を押さえながら涙を流し、ハト忍者に頭をつつかれ、魔法使いさんは炎を指先で弄びながら「さて、どの順番で焼こうか」と独り言を呟き、チンピラたちは怖気づきながらも数で押そうとする――。


混乱に次ぐ混乱。 火の粉が舞い、羽根が散り、叫びが響く。

それでも路地裏のチンピラ戦は、まだ始まったばかりだった。

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