第7話「路地裏チンピラサーカス団」
最強のはずの勇者は封印の腕輪でレベル−100、泣き虫で剣も持てない。
国家随一の魔法使いはサディストで、仲間を実験材料扱い。
忍者はなぜか高確率でハト。
そしてそこに、何も知らない冒険初心者の少女――『初心者ちゃん』が加わった。
雑すぎる王国と、じわじわ崩壊していく世界の中で、
彼らは今日も笑って、泣いて、叫んで旅をする。
ゆるいけど危険、危険だけど笑える。
そんなドタバタ勇者パーティーの冒険譚が、今はじまります。
路地裏は、昼間だというのに妙に薄暗く、湿った空気が肌にまとわりつく。
勇者さんは剣を抜こうとして腰をいわして泣きじゃくり、忍者さんは地面にめり込み、魔法使いさんは楽しげに腕を組んで観察。
……どうしてこうなるの。
チンピラたちはゲラゲラ笑いながら、さらにこちらを取り囲んでくる。
「おいおい、こいつらサーカス団か?」
「勇者は泣く、忍者は落ちる、魔法使いは笑う……次はお前だな、初心者マークをつけたお嬢ちゃん!」
「いやいや、私だけは普通でいさせてくださいよ!?巻き込まないでください!!」
バッと一人が私に飛びかかってきた。
「よっしゃ、まずはその木の棒、奪っちまえ!」
「いやこれ木刀ですからね!?れっきとした私の武器なんですってばーー!!」
慌てて振りかぶると――バシィッ!
木の棒はチンピラの額にクリーンヒット。
「ぐえっ!」と情けない声を上げ、チンピラはその場に崩れ落ちた。
「……え? あれ? 当たった?」
自分でもびっくりしていると、魔法使いさんが顎に手を当ててくすりと笑う。
「ふふ……君は最高だね。戦闘力ゼロなのに、偶然だけで仕留めるんだから」
「褒めてるのか馬鹿にしてるのかはっきりしてください!!」
すると残りのチンピラが怒鳴った。
「このガキ、調子に乗りやがって!」
「囲め囲め! 一気にやっちまえ!」
ずらりと棍棒や錆びた剣が並ぶ。
勇者さんは青ざめて後ずさり、腰を押さえてヒーヒー言っている。
忍者さんはまだ地面に突き刺さったままジタバタ。
「や、やめてください! 僕ら観光に来ただけで!」
「勇者くん、言い訳は無意味だよ。むしろもっと煽ったほうが楽しい」
「煽るなぁぁぁ!!!」
チンピラの一人が魔法使いさんに剣を向ける。
「てめぇもその薄ら笑いやめろや!」
だが魔法使いさんは一歩も動かず、炎を指先に灯した。
「ふふ……僕に剣を向けるだなんて……君たち、燃えてみたいかい?」
ゴォッ!
赤い火花が一瞬で路地を照らし、チンピラたちはビクリと震える。
「な、なんだこの魔力……!」
「やべぇ、本物の魔法使いだ……!」
その威圧感に、勇者さんが小声で私に囁いた。
「ねぇ……魔法使いさん、もしかして本気で焼くつもりじゃ……」
「そう見えますね……というか笑顔が完全に処刑人ですけど!?
というか沸点低すぎません!?」
私は青ざめた。
――次の瞬間、この路地が火葬場になるのか。
それとも奇跡的に勇者さんが勇気を出すのか。
チンピラ戦は、いよいよ開幕を迎えようとしていた。




